どことなく南国調な部屋に案内されると、青島は早速ツインベッドの片方にダイブした。
「あーーー、やっとついたぁ」
ハワイ遠いよーとぼやく青島に苦笑しながら、室井はクローゼットに荷物をしまい始める。
この辺りは性格の違いだった。
「10時間も掛かったからな」
放り出してあった青島の荷物も室井が一緒に片付けてくれるから、青島も慌ててベッドから降りた。
だが、手伝おうと思ってみても手伝うほどやることもなく、結局礼を言って荷物を室井に任せてしまうと冷蔵庫に向かった。
ミネラルウォーターのペットボトルを取り出し備え付けのグラスに注ぐと室井に渡して、青島はペットボトルに直接口をつけた。
「常夏って言っても、思ったより過ごしやすいんですね」
青島はTシャツとジーンズ姿だったが、それほど暑くは感じられなかった。
「日が落ちてるから余計だろう」
「そうっすね」
もうすぐ18時になる。
ホテルのレストランで食事の予約をいれているので、それまではもう少し時間があった。
「その辺、ぶらぶらしてきます?」
「疲れたんだろ?少し休んだらどうだ?」
「折角来たのに、時間勿体無いでしょ」
ブツブツ零していたわりに元気な青島に、室井は苦笑した。
「なら、飯まで時間があるから、少しブラブラしてくるか」
二人は結局少しだけ部屋で休んで、夕飯までの間の小一時間をホテル周辺を散策して過ごした。
意地でもぎ取った休暇は、6日間。
4泊6日のハワイ旅行である。
この6日間だけは、事件のことも仕事のことも忘れて過ごそう。
来る前に二人でそう決めていた。
本当にこんな旅行ができるのは最後かもしれないと、二人とも大袈裟に思っていた。
「食いすぎたあ」
食事を済ませて部屋に戻った途端、青島はまたベッドにダイブした。
外人とは当然味覚が違うから食事には正直あまり期待していなかったが、意外と美味しくボリュームもあった。
「横になるのはいいが、寝てしまうなよ。消化に悪いから」
青島は首を捻って室井を見上げた。
「室井さんもこっち来ません?」
手招きすると、室井は苦笑しながら素直にやってきた。
青島の寝ているベッドに腰を下ろすと、手を伸ばして頭を撫ぜてくれる。
青島は目を細めた。
「なんか、不思議ですね」
「ん?」
「家にいたって二人きりなのに、全然違う」
旅先だからなのか、海外だからなのか。
現実の世界と少しだけ切り離されて、本当に二人きりになったような感覚があった。
そんなことにちょっとした喜びと後ろめたさを感じる。
現実の世界が嫌なわけではないのだ。
相変わらず捜査は好きだし、なんだかんだと言って湾岸署は居心地がいいし。
室井との関係はこれ以上ないくらい幸せだ。
それでも常とは少しだけ違う感覚が嬉しかった。
青島の考えていることが伝わったのか、室井は微笑した。
「今だけは事件のことも忘れような」
髪を撫ぜていた手が、頬に滑り落ちてくる。
優しく撫でられてうっとりしていると、室井が顔を寄せてきたので目を閉じた。
柔らかいキスを何度もくれる。
頬に触れる手の上に自分の手を重ねながら、青島は室井の唇を受け入れた。
唇が離れると、ゆっくりと目を開ける。
眼の前に広がる穏やかな室井の顔に、青島の表情も緩む。
室井の唇が額に落とされ、瞼に触れて、頬を掠めた。
「…青島」
「はい?」
「疲れてるか?」
室井の生真面目な確認に、思わず吹き出す。
笑いながら室井の首に腕を回して、その身体を引き寄せた。
「疲れたって言ったら、このまま寝ちゃうんですか?」
からかうような視線を向けると、室井は目を丸くして笑みを零した。
そのまままた室井が顔を寄せてくる。
今度は触れるだけではすまない。
唇を重ねながら、青島は室井のシャツのボタンを外した。
全部外し終わると、室井は一旦身体を起こした。
「青島…」
「ん」
促されて青島も半身を起こす。
室井が青島のTシャツの裾に手をかけたから、青島は素直に万歳をした。
スルスルとTシャツを脱がされる。
上半身を裸にしてしまうと、室井はそのまま青島を後ろに押し倒した。
室井の唇が頬を掠めて首筋に落ちてくる。
身を任せていた青島は慌てて、少しだけ顔を起こした。
「あの、痕残さないでくださいね」
暑いからどうしたって襟首の開いた服を着る機会が多い。
海にだって行くかもしれない。
いくら知人に会うことがないとはいえ、照れ臭いことには変わりなかった。
釘を刺したら、室井は少し複雑な表情を浮かべた。
「…南国というのも考えものだな」
青島は苦笑した。
「んな、永遠にするなって言ってるわけじゃあるまいし…それに」
室井の耳元に唇を寄せた。
「俺もできないんだから、おあいこでしょ?」
青島だって所有印は残せない。
残念なのはお互い様だ。
室井も苦笑すると、青島の瞼に唇を落とした。
「そうだったな…変わりに」
「ん?」
「他のことをいっぱいしよう」
青島は小さな声を漏らした。
時折唇を噛んで耐えるのは、無意識だった。
室井は青島のソコから顔を上げて、微笑む。
「声、我慢しないでいいんだぞ」
言いながら、手での愛撫は止めない。
青島も遠慮しているわけではなくて、ただ単に照れ臭いだけだ。
「俺しか聞いてない…」
言いながら、手で扱き、先端を舐められる。
思わず腰を浮かせると、室井が焦らさずに口内に招き入れてくれる。
「んっ」
熱い感触に、顎を反らす。
室井は浅く咥えたまま、動きを止めた。
もどかしさに青島は眉をひそめる。
「…?」
少しだけ顔を持ち上げると、青島を見つめていた室井と目が合う。
その途端に、深く飲み込まれて、青島の口から小さな悲鳴が漏れた。
唇で扱かれキツク吸われて、青島のソレは強度を増す。
「うあ…ちょ、待っ…強すぎ…っ」
早々に根をあげると、室井は一度ソレを口から出した。
根本から丁寧に舐め上げながら、青島を見つめて小さく笑う。
「どうした…?少し早くないか?」
少しだけからかうような声音に、青島は軽く赤面しながら膨れた。
「悪かったですねっ」
「全然悪くないが」
平然と答えて、室井は唇をどんどんと下げていく。
軽くキスをする要領でソコを愛撫されて、青島は堪らず腰を揺らした。
その腰を室井に抱え込まれる。
唇をソコに押し付けたまま臀部を割り開かれて、青島はちょっと慌てた。
「ま、待って、それはヤメ…っ」
半身を起こそうとしたが、腰を抱え込まれているせいで上手くいかない。
「君はこうされるのを、嫌がるな…」
室井は宥めるように青島の太腿をなぜながら、最奥に唇を寄せた。
あらぬところに、舌の熱い湿った感触。
青島は息を詰めて、背を反らす。
青島がいつも嫌がるから、ソコを唇で愛撫されたことは数えるほどしかなかった。
青島にしてみれば、室井にそんなところを舐めさせるなど言語道断である。
性器はまだいい。
互いに気持ち良くなる場所である。
だが、ソコは違う。
本来なら愛し合う場所ではないのだ。
青島と室井の場合は物理的にはそこで愛し合うしかないから、使用しているだけのことである。
青島は今更そんなことに不満や後ろめたさがあるわけではない。
どんな形であるにせよ、室井と愛し合えて一緒に気持ち良くなれるなら、青島はそれだけで良かった。
だけどそんな箇所を、室井に唇で愛撫してもらうことには激しい抵抗があった。
「ヤ、ちょ、室井さんっ、そんなことしなくていいからっ」
「気持ち良くないか?」
「そんなことしてもらわなくたって、充分気持ち良いですよっ」
青島が泣きそうになりながら訴えると、室井が柔らかい眼差しをくれる。
臀部に唇を押し付けて、優しく微笑んだ。
「俺を受け入れてくれるところだぞ」
「…っ」
「ちゃんと愛したい」
いつもなら引いてくれる室井が、今日は引いてくれない。
自宅にいたって室井とセックスはするが、やはり旅先だと気持ちが少し違うのかもしれなかった。
青島は居た堪れなくて身を捩ったが、本気で逃げているわけじゃないから室井が逃してくれない。
屹立したソコを握られて、後穴に舌を差し込まれては、青島ももう抵抗できなかった。
何より室井が青島を愛したいと言ってくれているのに、拒むのは難しかった。
それでも、妙な意地が顔を出す。
「ん、んん、むろ…さんの、バカっ、アホ…っ」
途切れ途切れに何故か暴言を吐く青島に、室井は苦笑したが愛撫するのは止めなかった。
やがて青島が羞恥を上回る快感を感じ始めた頃、室井がソコから顔を上げた。
「青島…いいか?」
呼吸を乱したまま、青島は苦笑した。
「今更、何の許可がいるんですか…」
きてくれないと、青島だって困る。
素直に覆いかぶさってくる室井の首に、青島は両手を回した。
唇に軽いキスをくれると、後穴に熱いモノが押し当てられた。
それだけで、中が浅ましく動く。
青島が反射的に目を閉じると瞼に口付けられて、室井が侵入してきた。
「くっ…あぁ…っ」
一気に貫かれて、仰け反る。
前髪を梳いて額に唇を押し付けられた。
「青島、辛くないか…?」
「それは…平気、す…けど…っ」
「ん…?」
青島はそっと瞼を持ち上げて、悪戯っぽく微笑んだ。
「なんか…いつもより、大きい…かも?」
目を丸くした室井だったが、返事の変わりか身体を揺すった。
「んっ、あ、あ…っ」
揺すぶられれば、どうしたって声が漏れる。
室井は青島の身体の両脇に手をつくと、腰を使い始めた。
「青島…」
青島を見下ろしている室井の表情がヤケに色っぽくて、無意識に中にいる室井を締め付ける。
どんどん早く、強くなる室井の動きに合わせて声を漏らしながら、室井の腕を強く掴んだ。
「はっ…ん、あ…っ」
「くっ…青島、いいか?」
「あ、ん、いい…すよ、気持ち、イ…っ」
素直に言葉にしたら、また中が蠢く。
それに室井がすぐに反応を返してくる。
腰を掴まれて、激しく穿たれた。
「あっ、やっ…すご、いいよ、室井さん…っ」
「ハッ…っ…青島っ」
「室井さんは…?室井さんも、いい…?」
「ああ…凄く、気持ち良い…青島の中…っ」
切羽詰まった室井の顔を見れば答えなんか一目瞭然であるが、自分の名前を呼び、欲しがってくれる室井が堪らなく愛しかった。
愛しいと思ったら、室井を受け入れている箇所が激しく収縮した。
息を詰めた室井の動きが、一段と早くなる。
青島は自身に手を伸ばした。
「あ、ん、ん…・室井さ、も、イク…っ」
「ん、俺もだ…っ」
青島の手の上に室井の手が重なる。
自分の手毎強くすり上げられて、青島は一際高く鳴いた。
自分と室井の手を濡らしながら、腹の上に吐き出す。
一瞬後に、室井が体内から出ていった。
「くっ」
青島の吐き出したモノの上に、室井も射精する。
力尽きた室井が青島の上に落ちてくると、青島は室井の背を抱いた。
しばらくは二人とも言葉が出ない。
荒い呼吸を繰り返し、時折意味もなく互いの肌を撫ぜたりしていた。
落ち着いてくると、青島は室井の髪に手を差し込んで悪戯しながら、ぼそりと漏らした。
「…腹、気持ち悪くないです?」
室井が小さく笑った。
「そうだな」
二人分の精を浴びたのは青島の腹だが、重なり合ってしまえば同じことである。
「シャワー浴びるか」
身を起こした室井が手を差し延べてくれるから、それに頼って青島もだるい身体を起こした。
「一緒に入ります?」
「そうだな…」
「今日はもうお仕舞いですよ?」
言うと、室井は苦笑した。
「分かってる」
さすがに移動疲れで、これ以上は厳しかった。
室井も似たようなものだったのかもしれない。
「きちんと休んで、明日に備えないとな」
折角の旅行中だというのに、大半をベッドで過ごすなんて勿体ない。
明日以降の予定を考えてワクワクしながら、青島はちょっとだけ思った。
一日中室井さんとベッドの中っていうのも悪くないけどね。
実行されると困るから、青島は言葉にはしなかった。
変わりに室井の耳元に唇を寄せて囁いた。
「続きはまた明日の晩、ね」
目を見開いた室井は、眉間に皺を寄せて、ちょっと乱暴に青島の髪を掻き交ぜた。
「言われるまでもなくそのつもりだ……だから、煽るな」
青島は破顔して、頷いた。
二人の旅行は始まったばかり。
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