■ 嫉妬の応酬(3)


Muroi Side


「・・・・・分かった」

『じゃあ』

ふて腐ったような声を最後に、携帯の通話がプツリと途切れた。



何が分かったわけではない。
何も納得していない。
事件の呼び出しを優先した青島は正しい。

そうだ。いつだって青島は正しかった。
そんなことは"分かっている"
それを一番に分かっているのは自分だったはずだ。

なのにだ。

この胸のモヤモヤはどうしようもない。
しつこいようだが青島のことは信じている。
青島のことは信じているんだ。



コンコン。

「・・・はい」


ドアのノックに短く返事を返すと、部下の一人が入ってきた。

「審議官。事件です。長官からの召集命令が出ています」
「分かった」

警察庁長官直々の召集命令とは穏やかではない。
私は無理やり青島のことを頭から追い出し、長官の待つ会議室へと向かった。




会議室で私を待っていたのは、羽田空港での人質たてこもり事件だった。

しかも人質になっているのは、数日前に羽田で出迎えを警護した人物。
今日の午後に羽田から帰国することになっていた。
昼前には私も羽田に出向き、警備の指揮を見守るはずだった。

予定には無かった羽田空港内のショッピングを許可したのは、外務省の一存だという。
まだ碌な情報も入ってこない部屋では、事件の進捗を知ることも出来ない。
外務省に責任を取らせようと合意しあう上官の声だけが響いている。
そんな中に駆け込んできた制服警官が、マスコミのカメラが現場を捉えていると告げた。

室内に据え置かれた大画面モニターに空港内部の様子が映し出される。
立ち入り禁止用に張られた非常線の外から物陰に隠れて撮影しているようで、画面中央の奥に小さく動く人間らしき影が見える。
徐々にズームアップする映像に、会議室内が静まり返る。



犯人と思しき人影。
首を後ろから抱え込まれ、凶器のようなものを押し当てられている外国人。


5メートルほど離れて二人と対峙するように立ちふさがっているのは、あの、青島だった。










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瀬尾結城



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