雑誌YUYUの「好きな芸能人」20年連続トップを独占する
青島俊作の魅力に迫る!
今年でデビュー20周年となる青島俊作(39)の最大の魅力は
老若男女を魅了するあの笑顔であろう。
「天使の微笑」とも称される彼の笑顔に心奪われる者は
今も後を絶たない。
渋谷のスクランブル交差点正面の巨大スクリーンに映し出された
最愛の恋人の姿に室井は足を止めた。
10年前から室井を魅了してやまない青島の笑顔がアップになる。
どうやら来週放送される特別番組の番宣が流れているようだ。
足を止めて見入っているのは室井だけではない。
「俺、来週は絶対!残業しねぇ!」
「とーぜんだろ。永久保存版だね♪」
「いつ見ても可愛いよなぁ〜」
帰宅途中らしいサラリーマン達の声。
「40なんて詐欺よねぇ」
「お肌スベスベ、ハイビジョンでも問題なしなんて…」
「羨ましい。てか、青島くんと同年代の男なんて中年一直線なのに
あの若さは化け物並みよぉ〜」
「言えてる〜」
ビシッとメイクした女性達の本音。
確かに、と室井も心の中で頷いていた。
知り合った当時も若く見えると思っていたがその頃と変わっていない。
いや、可愛さに拍車がかかっている。
これが恋人の欲目だけじゃないのが恐ろしい。
日本中の誰もが認める事実なのだ。
T大学法学部教授、室井慎次。
- トップアイドル青島俊作の秘密の恋人 −
室井が青島俊作を知ったのは10年前…
芸能界は室井にとってもっとも興味のない世界だった。
が、社会生活を送っている以上、マスメディアと無関係ではいられない。
だから青島の名前を聞いた事はあった。
学生たちの話題によく上っていたから。
姿もTV等で見た事はあった。
あったが、人物と名前が一致していなかったのだ。
そんな室井が青島と知り合うきっかけとなったのは学生時代からの悪友
一倉正和からの深夜の電話だった。
規律が服を着ていると噂された室井と、その規律を破ることを趣味としていた一倉。
正反対のふたりだったが何故か気があった。
卒業後、一倉はこれからはITの時代だと起業し、今ではIT業界の若き帝王と言われている。
その一倉からの電話で趣味だと豪語している芸能事務所に足を運ぶこととなった。
その芸能事務所は10年前に『天使をみつけた』と、一倉の言葉とも思えない台詞で
室井を凍らせた後に開いたものだ。
昔の借りとも言えない『借り』をたてにされ不承不承出かけた場所で室井は
運命の相手と出会った。
「忙しいのに悪いなぁ」
かけらも思っていない口調で一倉がドアを開けた。
「本気で思っているのならこんな所に呼び出すな」
「失礼なやつだな、日本を代表するアイドルの事務所をこんな扱いか?」
「芸能事務所などに興味はない!」
「寂しい人生だな、世の中には楽しいことが溢れているんだぞ」
「馬鹿騒ぎが楽しいこととは、その方が虚しい人生だな」
「見解の相違だな。おっと、中に入ってくれ」
ふたりのやり取りを呆然と見ていた事務所のスタッフに気づいて
室井を応接室に案内する。
この程度のやり取りはふたりにとっては日常茶飯事。
でも、初めての人にとっては喧嘩しているとよく間違われるのだ。
「もう、来てるか?」
「はい♪いらしています」
一倉の問に声を弾ませて答える男性スタッフ。
いや、そのスタッフに限らず事務所内のすべてのスタッフが
そわそわ、ドキドキして、応接室をチラチラと見ている。
ここにきてようやく室井は興味を覚えた。
そんな室井に気づいたのだろう一倉がニヤリと笑う。
「今から俺の天使に会わせてやる」
ぴくりと室井の眉間に皺がよる。
感情を表に出さない室井の唯一の感情表現とも言える眉間の皺。
一倉の戯言を本気に取ると馬鹿を見ると今までの経験から判断する。
「戯言はいい。さっさと案内しろ」
「本気にしてないな。まぁ、いいさ。すぐ分かる」
応接室のドアをノックと同時に開ける一倉に呆れる。
「ノックの意味がないな…」
「細かいことに拘るな。おう!久しぶりだな」
「礼儀作法って言葉を知ってるかお前」
知っていても実践しないだろう男に、それでも一言注意してしまう。
「ほ〜んと、礼儀作法から一番遠い男よね」
ギョッとして声の主を見ると小柄な女性がソファーに腰掛けていた。
日本人形を思わせる女性だが、瞳の輝きが見た目どおりの女性ではないと思わせる。
一倉相手に遠慮なくモノが言える相手は限られている。
対等と認めた相手でなければ決して許しはしない。
それが一倉正和という男だ。
「はじめまして、恩田すみれです。その礼儀知らずにこき使われています」
「黙ってこき使われている様なお前か?」
「あら、正当なことを言ってるつもりですけど」
にっこり笑って切り返す恩田に室井は感心する。
「これだよ、どっちが上司だか分からんな」
肩をすくめてぼやいているが一倉が恩田すみれを気に入っているのは確かだ。
「室井慎次です。この男には昔から手を焼かされています」
「そうでしょうね。分かります」
同志的連帯感を感じ室井にしては珍しく口数が多い。
「お前らなぁ…青島、お前だけだ俺の味方は」
その言葉にもう一人の人物の存在に気がつく。
窓際に立っている青年を目にした途端、すべての音が消えた。
初夏の日差しより鮮やかな笑顔…
それが、室井にとっての「フェルトナ(運命の人)」との出逢いだった。
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