Kiss me?











青島は「あっ」と呟いて立ち止まった。

前方から向かってきた室井も、目を剥いて立ち止まっている。

テレポート駅の構内だった。

青島は外出から湾岸署に帰るところだったから、室井と待ち合わせしていたわけではない。

全くの偶然である。

いきなり現れたから驚いたが、もちろん嬉しい偶然だ。

青島は笑みを浮かべると、大股で近付いた。

「変なとこで会いますね」

ちょっと呆けていた室井も小さく笑う。

「本当だな…仕事中か?」

「ええ、これから署に帰るとこっす。室井さんも仕事中?」

「ああ、本庁に戻るところだ」

「そうっすか〜…」

昼中にスーツ姿で出会えば、仕事中に決まっている。

嬉しい偶然だったが、仕事中の室井が暇なわけもない。

ちょっとでも会えたことを感謝し、潔く別れるべきだった。

それは分かっているのだが、どうしたって別れ難い。

それじゃあという言葉が出てこないのだ。

それは室井も同だったようで、ただ黙って青島を見ている。

妙な沈黙に、二人の往生際の悪さが見えて、なんだか笑えてくる。

それも自分一人ではないのなら、ちょっとくらいのワガママは通るかもしれないと、青島は思った。

「そこの喫茶店で、ちょっとだけお茶しません?」

青島の提案に、室井は一瞬だけ葛藤した。

仕事中だということが心に引っ掛かったのだろう。

だが、それほど悩まずに頷いた。

「そうしよう」































駅構内の、適当な喫茶店に入る。

スーツ姿の男性が向かいあって座っていれば、打ち合わせでもしているように見えるかもしれない。

青島は水を飲みながらちょっと笑った。

「これもデートっすかね」

ふざけて馬鹿なことを言ったら、室井は眉を寄せた。

「…ほんじなす」

やはりバカモノと言われる。

強張った頬に照れを感じて、青島はひっそりと笑った。

「でも、ちょっと新鮮じゃないです?」

「なにがだ」

「二人で喫茶店に入ることなんか、滅多にないでしょ」

飲みに行ったりご飯を食べに行くことはあるが、あまり外でデートをすることがない二人だから、

喫茶店に来ることもほとんど無かった。

「そういえばそうか」

「たまには気分変わっていいっすね」

「…デートっぽくてか?」

聞き返されて、青島は思わず笑った。

丁度店員がコーヒーを運んで来てくれるから、会話が途切れる。

青島が足を組んで煙草を咥えると、室井は灰皿を差し出しコーヒーに口をつけた。

沈黙が生じるが、気まずくはない。

別に話したいことがあって引き止めたわけではなかった。

もう少し一緒にいたかっただけ。

煙を吐き出しながら、窓の外を見る。

「いい天気っすね〜」

「そうだな」

「こんな日は仕事したくないなぁ」

「そ……れは、ダメだろう」

室井を振り返って笑う。

「今、同意しそうになったでしょ」

無言でコーヒーを飲む室井が可笑しい。

それ以上は突っ込まないでおいてあげることにした。









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