恋守護神 第6話
「報告、ご苦労」
「いえ・・・すみません、お役にたてなくて」
「・・・しかしなぜ・・・あの方が??」
「えっ??」
ウズメの呟きに真下がそちらを見る。
ここは王宮の皇太子の部屋。
真下がアオシマとの一件を報告していた。
「アオシマ殿を守護されているのがあの方、レクイム様なのが気になって・・・」
「それはどういうことだ?」
「あの方は本来、彼の守護ではないはずなのです」
室井の質問に、ウズメは戸惑いながら答える。
「ありえないことなのか?」
「はい、本来なら考えられないことです。それを曲げてまで彼のそばにいるのです・・・
なにか目的があるとしか・・・。もしそうならあの一件も納得がいきますし」
「とすると・・・その神を何とかしなければ彼がここに呼ぶことは・・・」
「ほぼ不可能かと・・・」
「どうする・・・やっぱり拉致するか?」
「お前はそれしか言えないのか・・・」
室井の横で壁に背を預けた一倉が、その様子を横目に、にやっと笑いながら言う。
その様子に室井は、頭痛を抑えるように組んだ手の上に額を置く。
「しかしな・・・それしか方法はないだろう」
「・・・私自身が出向けばいい話だ」
「どこの世界に皇太子自ら、求婚しに行くやつがいる・・・ロミジュリか」
「・・・話が飛躍しすぎていないか?」
「ひとめぼれなんだろ?そいつに」
「・・・」
「まあ、がんばってそいつを落とせよ。愛ってのは障害があるほど燃えるもんだ」
はっはは・・・と豪快に笑いながら部屋を出て行く一倉。
「なにがしたかったんだ?あいつは・・・」
「励ましのつもりなのでは?」
「・・・楽しんでいるように見えて仕方ないのだが?」
「・・・」
室井と真下は一倉の後ろ姿を見送りながら、話し合う。
「・・・なにをお考えなのです、レクイム様?」
窓の外の空を見上げながら、ウズメが呟く。
「あいつ、俺の仕事中断しといてなんの謝罪もなく帰っていったし・・・」
「・・・まだ怒ってるの?」
夕食を食べながら、真下のことを話題にするアオシマ。
「だって、あの後なんの連絡もないんだよ」
「・・・それが?」
ぱくっと夕食のシシャモを口に運び首をかしげる光闇。
「また仕事、邪魔されるのはごめんだし・・・」
「・・・大丈夫だよ」
「なんで?」
「たぶん次は家を訪ねると思うから」
「・・・なんでわかるの」
「あいつの性格ならそうしそうだから」
「あいつ??それってあの真下ってやつ?」
「ううん、違う人!!ふふ・・・ごちそうさま!!」
意味深な笑いをして、食器を片付けだす光闇。
どうやら教える気は皆無らしい。
その後アオシマがそのことについて尋ねようとしても、
『お風呂に入るから』や『もう寝るね』などとかわされてしまい、結局何も聞けないまま朝を迎える。
「じゃあ、行ってくるけど・・・」
「大丈夫だよ、また来ても部屋には入れないから」
「・・・うん」
「早く行ったほうがいいんじゃない?今日はすみれさんとこでしょ?」
「そうだけど・・・」
「遅刻したら"お詫び"を要求されちゃうよ、きっと」
「・・・たしかにね」
顔を見合わせてくすくすっと笑う。
「いってきます」
「・・・早めに帰ってきたほうがいいかもよ?」
「なんで?」
「ほら、また来るかもしれないでしょ?ドアの前で待たれたら迷惑だし」
「・・・わかった、なるべく早く帰るよ」
待たせるのはかわいそうなど待つほうの心配ではなく、
あくまで自分(とその周囲)中心の光闇にため息がでそうになるアオシマ。
「ゼノン・・・」
神のオーラをまとった光闇はアオシマが出かけたのを確認すると、そう呟く。
「ここに」
すると誰もいないはずの部屋に1人の男が跪いていた。
「それで・・・どうなったの?」
神官のような服装に身を包んだゼノンと呼ばれた男のほうを振り向かず、光闇は話しかける。
「はい・・・どうやら本人自ら、こちらに赴くようです」
「そう・・・」
「いかがいたすおつもりです?」
「・・・なにかいたすおつもり・・・かな」
ふっと笑みをこぼす光闇は、遠くを見るような目を天井に向ける。
「何かあれば早急に知らせなさい」
「はっ!!」
ゼノンは深々と頭を下げると、そこから消える。
「ふ〜ん・・・本人が・・・ねぇ・・・」
光闇は楽しそうな声を上げる。
アオシマの部屋のドアに人の影が映る。
その影はノックをしようか迷っている様子。
「・・・コンコンコン」
「!!」
突然、背後から声が聞こえ、ノックをしようとした手が引っ込む。
「何の御用です?室井殿下〜」
振り返った影、もとい室井の前に口元に笑みを浮かべた小悪魔、
もとい光闇が空中に腰掛けるように浮かんでいた。
「君が・・・レクイムか」
「あのさ」
「ん?」
「光闇って呼んでくれない?」
「・・・」
「アオちゃんが付けてくれた名前だから」
自慢げな様子で光闇は室井に話す。
「なら・・・光闇」
「なに?」
「彼を・・・アオシマを・・・私のそばに置きたい」
「・・・理由は?」
「・・・彼を愛したからだ」
「・・・なら・・・いいんじゃないの?」
「なに・・・」
あまりにもあっさりと言う光闇を、室井は訝しげに見つめる。
「私を得るためにアオちゃんを利用するなら、徹底的に邪魔してやろうと思ったけど」
室井の視線も気にせず、光闇はおかしそうに笑う。
「アオシマを連れて行ってもいいのか?」
「それはアオちゃんが決めること・・・口説き落としてみたら?」
光闇は挑戦的な視線を室井に投げかける。
「・・・」
「邪魔はしないけど、協力もしないから・・・覚えといてね」
「・・・了解した」
「じゃあ・・・夕方にもう一度おいで。アオちゃん帰ってると思うから」
ふわっと室井の前に降り立つと、室井の目を見据える。
「次、会うときは"初対面"ってことでよろしく」
「・・・なに」
「だ・か・ら、"初対面"!!こっちで勝手に話がついてるなんてアオちゃんが知ったら怒るよ〜」
「・・・」
「聞いていい?」
黙り込む室井に、先ほどとは打って変わって真剣な声で光闇が問う。
「なにをだ」
「アオちゃんが・・・アオちゃんが"ヒト"じゃなくても愛する?」
「!!」
室井は驚いたように光闇を見る。
「・・・どうなの?」
「そうなのか・・・」
「なにが?」
「アオシマが"ヒト"ではないというのは」
「・・・さあね〜」
先ほどまでの真剣さはどこへやら、また軽い口調に戻る。
「・・・愛する」
「ん?」
「どんな姿でも、なんであったとしても彼は彼だ」
「・・・ふ〜ん」
室井の言葉に、意味深な笑みを浮かべながら、しかし満足げに頷く。
「・・・夕方にまた来る」
「は〜い」
光闇は室井の帰っていく後姿に『合格・・・かな』と呟く。
女神は布石を打つ。
一見、関係のない手であってもそれはいずれ重要なものになる。
彼女はすべてを知っている。
それゆえ、彼女の言動はすべて布石になる。
そう大きな変化の・・・。
NEXT
〈あとがき〉
遅くなりました。
本当に申し訳ありませんでした。
謎は深まる・・・って風呂敷広げすぎ?
伏線いろいろ・・・。
最後に全部、解明されるか心配です(書いてる本人なのに・・・)
室井さん、かっこよく書けてますか??
いえ、そこが心配で・・・。
次回はいよいよアオシマくんと室井さんの直接対面です。