恋守護神 第7話





夕方

「で、真下のことをすみれさんに話したら・・・」

「怒って王宮に乗り込もうとしたとか?」

「あたり・・・もう大変だった」

「すみれさんらしい」

「そのうち本当に乗り込むんじゃないかな」

「王宮?」

「・・・うん」

お茶を飲みながら、アオシマと光闇の会話は続く。



「で、今日誰か来た?」

「ううん、だ〜れも」

「そっか・・・」

「ん?」

「あっ・・・その光闇がさ、『皇太子が来い』みたいなこと言ったから」

「会いたかったの?」

光闇は首をかしげるといういかにも子どもっぽい仕草をしながら、

アオシマを見つめる瞳は真剣そのものだった。

「う〜ん・・・どんな人かなって・・・」

「気になる?」

「・・・ちょっとね」

アオシマがそう言ったとき、ドアをノックする音がした。

「は〜い」

アオシマ立ち上がりドアのほうに行くのを、光闇はじっと見つめていた。



「はい、どちら様です?」

ドアを開けたアオシマの目の前に立っていたのは、やはり室井だった。

「こんな時間にすまない」

「あっ、いえ。え〜っと・・・」

「室井だ」

「室井・・・さんですか」

「少し時間をもらえるか・・・」

「えっ・・・」

「迷惑だろうか」

「いえ・・・別に・・・・あの」

「ん?」

「どんな用件で?」

どうやら仕事と勘違いしている様子のアオシマ。

「・・・君と話がしたいと思ったのだが」

「えっ・・・あっ・・ちょっと待ってもらえますか?」

「かまわない」



アオシマは奥に引っ込むと光闇が笑顔を向けてきた。

「だれ?」

「・・・知らない人」

「ふ〜ん・・・どうしたの?」

「なにが?」

「顔、真っ赤だよ」

「へっ・・・」

鏡をのぞいたアオシマの顔はものの見事に赤く染まっていた。

「一目ぼれ??」

「・・・男の人だよ?」

「それでも・・・」

「・・・たぶん」

幼い頃より彼女に勝てないことが分かっているため、

ごまかしは通じないことは火を見るより明らかである。

そのためアオシマは素直に認めた。

「待たせてていいの?」
「あっ・・・光闇ここに居るなら変装して」

「・・・わかった」

室井のほうに戻ろうとしてアオシマは奥に引っ込んだ理由を思い出す。

光闇が人前に出る姿に変わったのを確認したあと、いそいそと玄関に向かう。

「・・・赤面に気付いて戻ってきたんじゃないんだ」

光闇はその背中にぼそっと囁く。



室井を部屋に上げ、お茶の用意をするため台所に向かうアオシマ。

「・・・まったく無用心なんだから」

「・・・」

「見るからに怪しい人を家に上げるなんて」

「・・・」

「・・・なにしにきたの?"不審人物"さん」

光闇は明らかに楽しんでいる声を出す

「・・・他の呼び名はないのか」

「ん〜・・・恋人候補者さん?」

「・・・」

「で?どう落とすわけ?室井で・ん・か」

「・・・」

「まさか考えもなしに来たわけ?」

「関与しないのではなかったのか」

「・・・"邪魔"も"協力"もしませんけど、"関与"はしますよ、

 アオちゃんは"私の"ですから」

「・・・」

室井の様子を楽しげに見ながら話す光闇に、室井はため息を漏らす

「光闇、なに楽しそうに話してるの?」

「だってこの辺じゃ見かけない人だから、誰かな〜って」

「あんまり迷惑かけちゃダメだよ」

「は〜い」

「・・・それでどんなことで?」

室井の前にお茶を置きながら、アオシマは室井に尋ねる。

「・・・実は・・・」

「はい」

「・・・いや、先に謝るべきだな」

「はい?」

「迷惑をかけてすまなかった」

「えっ?」

「君の仕事の邪魔をしたらしく・・・」

「えっ・・・え〜っと・・・?」

「あれは私が頼んだことなんだ・・・」

「まさか・・・」

「皇太子殿下」

アオシマは驚きの声を上げ、声を失う。

その続きの言葉を光闇が静かにつむぐ。

「なんで・・・こんなところに・・・」

「・・・君の守護神に言われたからだ」

パニックに陥るアオシマに、冷静に答える室井。

「あの・・・それって光闇の言った・・・」

「本人が来るべきだ・・・と」

「あっ・・・・」

アオシマは室井から視線をそらせてまま固まってしまう。





しばしの沈黙が続く・・・。

「あの・・・」

アオシマの緊張した声がその沈黙を破る。

室井はアオシマのほうを向く。

「光闇を連れて行くんですか?」

「・・・」

「守護神・・・いないんですよね」

「・・・それは」

「・・・だから」

アオシマの覚悟はしていたが認めたくないという気持ちがひしひしと伝わる。

「・・・そうじゃない」

「えっ?」

室井の言葉に勢いよく顔を上げる。

「君に王宮に来てほしくてここに来たんだ」

「おれに?」

「・・・」

「何のために」

「・・・君を愛してしまったからだ」

「!!!!!!!!」

「頼む、私のそばにいてくれないか」

「でも・・・」

アオシマはちらりと光闇を見る。

「アオちゃんが決めることだよ、それ」

「光闇?」

「でも・・・いきなり『愛している』って」

室井をからかうように、光闇はくすくすと笑う

「あっ・・・」

「・・・別にいいんだけど」

絶句する室井に、光闇は笑いが止まらないという様子で言う。

「アオちゃん、はっきり言わないとわかんないし」

光闇がそう言ってそちらに目を向けると・・・、

そこには混乱状態のアオシマが真っ赤な顔をしていた。





女神は運命のうねりを大きくする。

己の運命と彼の者の運命を・・・。

そしてその先には・・・。







〈あとがき〉

室井さんとアオシマくんの直接対面・・・

から告白編でした。



室井さん、いきなりですか!!

いや、あれくらいやってくれないと・・・ね。



ここから展開が速くなります。

なんかだらだら書けない場面なので・・・。

さて次回はアオシマくんの秘密が明らかになります。

あと、光闇のもね。