恋守護神 第5話





「・・・というわけだ」

「そうかそうか・・・いや〜よかった」

王宮の一室。

室井と一倉がなにやら話し込んでいた。

「宮殿を脱走した日以来、変だったからな」

「脱走じゃない・・・そんなに変だったか」

「ああ、お前にしちゃ珍しく仕事も上の空だったからな」

「そうか・・・」

「で、どうするんだ?」

「・・・王宮につれてくる」

「拉致か」

「違う!!理由を話して・・・」

「拉致する・・・か」

「・・・拉致から離れろ」

話が進んでいるのかいないのか、いまいち分からない話し合いは続く。





朝、アオシマが部屋のドアを開け、出かけようとする。

「じゃあ、留守番よろしくね」

「わかった!!」

「誰が来てもあけちゃだめだよ」

「7匹の子ヤギみたい・・・」

「・・・わかった?」

「でもこの場合、やってくるほうは赤ずきんちゃんか」

「光闇?」

「あっあれか、日本昔話の山姥?」

「・・・」

「ん〜・・・」

「あの・・・・さ」

「わかってるよ、空けなきゃいいんでしょ」

「・・・追い返すときは丁重に、ね」

「催眠状態にして暗示かけて追い返す、

 ただし自殺など命の危機にさらすのは不可・・・でしょ」

「・・・」

また、漫才のような会話が聞こえてくる。

「大丈夫!部屋に誰も入れないから」

「それならいいけど・・・」

今日の仕事に光闇はついていかないようだ。

「はやくいかないと、迷惑かかるよ」

「うん、じゃあいってくるね」

「ばいば〜い」

「・・・いってらっしゃいって言えないの?」

「そんな夫婦みたいなことやれるわけないでしょ?」

「・・・」

はぁ〜っとため息を吐きつつ、出かけるアオシマ。



「さてと・・・」

アオシマの姿が見えなくなったことを確認した光闇は、

ふっと表情を変える。

以前ゼピュロスに会ったときの神のオーラをまとって・・・。

「そこ、用があるならば出てくるがよい」

「・・・」

物陰に隠れている気配に向かい、光闇は威圧的な言葉を発する。

「出てこぬならそれでもよい、だが・・・」

その気配に向かい、手をかざす。

「分かりました!!」

「・・・分かればいいんだよ」

光闇はいつもの無邪気な子どものような態度に戻る。

「申し訳ありません」

「いいよ〜・・・で何の用?・・・え〜っと」

「王宮外交役、真下正義の守護神アメノウズメと申します」

光闇の前に現れた古代の日本風の衣をまとった女性は、

ひれ伏し頭を地面へとつける。

「・・・なんのよう?」

「王宮に来ていただきたいのです」

「なんで?」

「皇太子殿下がお会いしたいとのことで・・・」

「あなたが私のとこに来たってことは、あなたの主人は?」

「あなた様が守護されている・・・」

「アオちゃんのとこ!!」

「・・・はい」

「一緒に来てもらいます」

再び神のオーラをまとうと、部屋の戸締りをして服装を外出用のものに変え、

ウズメを伴い空へと舞い上がる。





一方、アオシマは頼まれていた仕事を中断して真下と会っていた。

「で・・・皇太子さまから頼まれたって?」

「はい・・・・ぜひとも王宮に来るようにと」

「理由は?」

「それがその〜・・・話してくれなくて・・・」

「・・・拒否権ある?」

「え〜っと・・・」

皇太子の使いである以上、断るわけにもいかないが

仕事を中断されたアオシマの機嫌は悪かった。

そのためか口調も身分が上のものに対するそれではなかった。

ちなみに真下は蛇に睨まれた蛙、

ライオンに狙われたシマウマのような思いをしていた。

「アオちゃん!!」

「光闇」

光闇がアオシマと真下のいる部屋に乗り込んでくる。

さながら、夫の浮気現場に乗り込む妻と例えるべきだろうか、そんな雰囲気がする。

「あなたが皇太子からの使者?」

「そうですけど・・・」

「皇太子に伝えなさい、頼みごとがあるなら御自身が来るべきではないかと」

光闇はびしっと真下の鼻先に人差し指を向け、真下の目を見据えて言い放つ。

「・・・はぁ」

「それと・・・」

言葉を区切った光闇は真下の服を掴むと自分のほうに引き寄せる。

「もし、私を得るためにアオちゃんを利用するのならこの国を滅ぼす、と伝えておけ」


地を這うような恐ろしい声で光闇は真下の耳元で囁く。

「はっはい!」

びくっと背筋を伸ばす真下に、光闇の声が聞こえていなかったアオシマが

不思議そうな顔をする。

「光闇?」

「ん?」

「なんでここに?」

「この人の守護神がね、教えてくれたの」

「へぇ〜」

「うん!」

「あっ・・・でさっきの話だけど」

光闇が乱入したことにより真下との話が中断したため、

アオシマはその話に戻そうとする。

「なんかね、やらないといけないことがあるみたいだよ」

真下が答える前に光闇が笑顔で、

しかしけして逆らうことを許さないという声で真下のほうに視線を送りながら言う。

「えっ・・・あっそうなんです。返事はまた今度で」

「・・・あっうん」

「それでは」

光闇に睨まれながらそそくさと部屋を出て行く真下。





「ねぇ・・・大丈夫なの?」

「?・・・なにが?」

帰り道、アオシマは自分の横に浮いている光闇に話しかける。

「だからさ・・・さっきの」

「ん?」

「皇太子に伝えろって言ったよね?」

「ああ・・・大丈夫」

アオシマの心配をよそに、光闇はけろっとして答える。

「なんで?」

「"神さま"だから」

「・・・あっそう」

いまいち納得をしていないアオシマをよそになにやら楽しそうな光闇。









ある女神の描いたシナリオは、順調に進んでいく。

アオシマの運命と共に・・・。

そう・・・これはある女神がアオシマの運命を、

そして自身の運命を変えるために描いたシナリオなのだ。

そこに登場する人物もまた、少なからず運命を変えられていく・・・。









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<あとがき>

5話なんとか書けました。

今回は交渉?ということで真下くん登場。

ただ光闇ちゃんのせいで実力発揮できず・・・(合掌)

ちなみに真下くんの守護神のウズメは日本の神様で、

アマテラスを天岩戸から出すために踊りを踊った人です。

彼女は交渉の神でもある(らしい)です。

次回、「室井さん起(た)つ」お楽しみに(どこぞのアニメとかの予告みたい・・・)