■ 企画小説2
時刻は3時をいくらか過ぎていた。
こんな時間に約束もない人様の家に押しかえるのは、非常識だ。
いくら相手が恋人でも。
室井は合鍵でドアをそっと開けた。
会えたら会おうとは約束していたのは、数日前。
室井の方が仕事で都合がつかなくなり、ギリギリでキャンセルしたのだ。
仕事柄そんなことはしょっちゅうだから、青島は苦笑して「じゃあ、また」と言ってくれた。
だけど、その声がいつもより少しだけ寂しそうだったように聞こえた。
気のせいだったかもしれない。
室井が勝手にそう思っただけかもしれない。
それでも構わなかった。
室井が、青島に会いたかったのだ。
だから必死に捜査して事件解決して、約束からは一週間以上も遅れてしまったが、時間を作って会いに来たのだ。
渡したかったモノもある。
鞄の中に、大事にしまってあった。
静かに靴を脱いで、玄関に入る。
真っ暗な部屋だが、何度も来ている部屋なのでぶつかることなく進む。
ソファーの上に鞄とコートを置くと、そのまま寝室を目指した。
寝室のドアをそっと開くが、さすがに眠っているらしく静かだった。
ベッドの上の布団が盛り上がっている。
やはり足音を立てないように気をつけながら近付いて、そっと覗きこむ。
丁度こちらを向いている青島の寝顔が、暗闇の中で薄っすらと見えた。
近付いて愛しい人の穏やかな寝顔に目を細めると、室井は思い出したように寝室を出る。
別に明日の朝渡せばいいのだがと思いつつ、鞄から小さな箱を取り出した。
暗くて見えないが、きれいにラッピングされたそれは、クリスマスプレゼントだった。
クリスマスはとっくに終わってしまったが、プレゼントだけは用意してあったのだ。
渡したかったものは、これである。
それこそ、無理して今日渡す必要があったわけではない。
結局は、やっぱり室井が青島に会いたかっただけなのだ。
それを手に、寝室に戻る。
寝ている青島を起こすつもりはない。
室井は自分の行動に苦笑しながら、青島の枕元にソレを置いた。
意味はない。
サンタクロースになったつもりでもない。
ただ、何となく。
起きた時に、室井の存在とプレゼントに驚いてくれたら嬉しいと思っただけだった。
スーツを脱いで、アンダーシャツと下着姿で、青島の隣に潜り込んだ。
一応気をつけて静かに入ってみたのだが、青島は一度寝てしまえば少しのことでは起きない。
隣に寝ても起きないと思ったのだが、驚いたことに青島が身動ぎした。
掠れた声を聞いて、起こしてしまっただろうかと眉を顰めると、青島がゆっくりと瞼を持ち上げたのが見えた。
部屋は暗いが、至近距離だからそれがなんとなく見えた。
「…え?室井さん…?」
「すまない、起こしたな」
手を伸ばして、青島の前髪を梳いた。
開ききれない瞳をまた閉じて、青島は口元に笑みを浮かべた。
「…夢かな?」
寝ぼけているらしい青島の口調に、室井は吹き出しそうになった。
夢だと言ったらこのまままた寝てしまうかもしれないと思いながら、それもちょっと勿体無い気もして室井が返事をできずにいると、のろのろと動いた青島の手が、室井の頬に触れた。
そして、軽く口付けられる。
「ん…何かリアル…・」
室井は微笑んで、青島の唇を受け入れた。
が、何度も繰り返し啄ばまれて、ちょっとまずいと思う。
素直な身体が、少し熱くなった。
さすがに夜中に突然やってきて、恋人に何かしようと思うほど、自分勝手な男ではない。
「青島…」
頬に触れていた手をそっと握って離させると、額に唇を押し付けた。
「おやすみ」
寝かせようと思いそう告げると、暗闇の中で青島はやんわりと笑った。
「もうちょっと、いいでしょ?折角傍にいるのに…」
そう言うと、握った手を逆に握り返されて、顎を突き出した青島に唇を奪われる。
ハムっと吸い付かれて、室井は目を丸くした。
もしかしてちゃんと目が覚めたのだろうか?と思いながら、抵抗することもできずに戸惑ったまま青島の好きにさせる。
何度か唇を吸って満足したのか、ちょっと離れた。
が、すぐに青島の唇が室井の顎のラインを辿って、首筋を舐めた。
「ッ」
さすがに、まずい。
室井の理性は、対青島にだけは効果が弱いのだ。
キスするように軽く吸い付かれて、室井は慌てて青島の肩を掴んだ。
「あ、あおし…」
視線がぶつかると、青島は嬉しそうに笑った。
「会いたかったです」
室井の理性は、対青島だけ全く効果が無かったらしい。
一拍おいて、室井は青島の肩を掴んだ手に力を込めて、後に押した。
仰向けに寝た青島の上に、乗り上げる。
どこかぼんやりと室井を見上げる視線に、もしかしてまだ寝ぼけてるんだろうかと思いながらも、室井ももう止まれなかった。
「青島…」
ゆっくりと唇を重ねると、青島の腕が室井の背中に回る。
「俺も会いたかった」
キスの合間に囁く。
角度を変えては何度も重ねて、薄く開いた唇に舌を差し入れた。
反応は鈍かったが、ちゃんと返って来る。
青島の舌の感触に、更に身体が熱くなる。
室井は青島のパジャマのボタンを外しながら、首筋に吸い付いた。
強く吸い付くと、青島の身体が小さく跳ねる。
「ン……うん?」
「青島…」
気持ちのままに痕がつくくらい強く吸いながら、現れた素肌に唇を滑らせる。
「ん、ん?…え?あ?室井さん?」
青島の声のトーンがふいに変わって、室井も思わず動きを止めた。
顔を見ると、ぼんやりとしていたさっきまでとは違って、驚いた顔をしていた。
「え?ホンモノ?あれ?夢じゃなかった?」
どうやら、本当に寝ぼけていたらしい。
室井は苦笑すると、軽くキスをした。
「ホンモノだ」
「あ、そうっすか……事件は?」
「解決した。だから、勝手に来させてもらった」
「そうっすか。それは全然いいんですけどー……何してんですか?室井さん」
青島に乗り上げてパジャマを剥いでいるのだから、何をしているのかなど一目瞭然であるはずだ。
一目瞭然なだけに、「ちょっとセックスを」とは言い辛い。
室井はきまずさに眉を寄せる。
その顔を見て、青島は意地の悪い笑みを浮かべた。
「あ〜夜這いに来たんですか?もしかして」
「夜這…」
激しく心外だが、そう思われても仕方が無い状況にはあった。
ただ、室井にも反論はあった。
だって、室井は大人しく寝るつもりだったのだ。
それを無視したのは、むしろ青島だった。
寝ぼけた、青島だったが。
「……誘ったのは、君だぞ」
事実だが、男らしくない台詞な気がして、言葉にするのは少し躊躇われた。
ぼそぼそと呟いた室井に、青島は目を丸くしたが、すぐに苦笑する。
「あれ?そうっすかあ」
参ったなぁと、さほど参っているふうではないが、呟いて笑った。
どうやら室井の言葉を言い訳とは取らなかったらしい。
有り難いやら、嬉しいやら。
愛しいなと思いながら、とりあえず退けようとした。
するにしろしないにしろ青島からすると、会っていきなりというのでは不愉快だろうと思ったのだ。
が、室井が引く前に、青島が室井の頬を両手で包んで引き寄せた。
ちゅっと音を立ててキスをすると、至近距離で微笑む。
「んじゃ、ヤりますか」
それはそれは軽いお誘いだったが、室井には有り難いお誘いだった。
それでもちょっと躊躇う。
「青島…しかし…」
「あれ?ヤるつもりだったんじゃなかった?」
「いや、そのつもりだった」
「お、素直」
ははっと笑いながら、もう一度キスをくれる。
「目、覚めちゃったし。室井さんいるし」
無意識か、青島が唇を舐めた。
「勿体無いし」と囁かれては、室井が躊躇う理由などなかった。
舌を絡めながら、青島の下半身に手を伸ばした。
ソコを握りこむと、開いた唇からくぐもった声が漏れる。
青島の喘ぎ声はもちろん好きだが、実はちょっと抑えた声も好きだった。
快感に堪えているような声が、たまらない。
「青島…」
唇を軽く吸って、手を動かす。
「ン、ン…」
「すまない」
「…え?」
「あまり、ゆっくり愛撫してる時間がない」
のんびりゆっくり愛し合っていたら、朝になってしまう。
青島もそれは分かっているのか、やんわりと微笑んだ。
「そ、すね…あ、ん、でも、」
「ん…?」
「気持ち、イイから…大丈夫…」
そう言って笑うから、室井もつられて笑みを零す。
愛撫に素直に反応を返してくるソレを、強く扱いた。
青島の腰が少し揺れる。
熱い息を吐く唇に軽く触れてから、室井は一度身体を離す。
ベッドサイドにある引き出しを開けて、中からローションのボトルとコンドームを取り出した。
コンドームはベッドに放り出しておいて、ローションを手の平に取る。
ちらりと青島を見ると、視線を逸らしていた。
準備をするという状態は、照れ臭いらしい。
可愛いなと思いながら室井は青島の太腿に唇を押し付ける。
そうしながら足を開かせ、ローションに濡れた手を奥に滑らせた。
羞恥からくる緊張か、それとも単に冷たかったのか、青島の身体に力が入る。
強くない抵抗は自然のもので、あまり青島に負担を掛けないように、静かに指を侵入させた。
「っ」
「大丈夫か?」
「ん、へいき…っ」
ローションのおかげで、深くまで納めてしまえばそれほど抵抗は無い。
だが、慣れてくるまので間は、青島にはちょっと辛いだろう。
中を慣らすようにゆっくりと指を動かしながら、また内股に唇を寄せた。
足の付け根に近いところをキツク吸うと、痕を残す。
そこに舌を這わせると、青島の腰が震えた。
侵入した指が、青島の興奮をダイレクトに感じ取るから、室井も余計に興奮する。
「はっ…あ…っ」
寝起きなせいもあって、常より掠れた声が色っぽい。
指の動きがスムーズになるのを待って、指を増やした。
慣らすだけじゃなくて、良いところに当たるように中を愛撫する。
「ん、あ…っ」
時折堪えきれないように漏らす青島の声に誘われるまま、室井は指を動かした。
視線を向けると、目を閉じて快感の中にいる青島がそこにいる。
ふっと笑みを浮かべると、室井は先ほどの愛撫からすっかり形を変えているソコに唇を寄せた。
もっと気持ち良くさせてあげたくなったのだ。
先端に唇で触れると、青島が慌てたように身じろいだ。
「む、ろいさん」
肘をついて半身を起こした青島にならって、室井も動きを止めて顔をあげた。
「どうした?」
「それ、しないでいいです」
「…?どうして」
唇で触れるのは初めてじゃない。
今更拒む理由はないだろうと思ったのだが、青島は照れ臭そうに苦笑した。
「その……そんなにもたないから……」
「……別に、俺は構わないが」
青島が気持ち良いならそれに越したことはないし、室井の愛撫で青島が満足してくれるなら嬉しい限りだ。
だが、青島は首を振った。
「いいから、それより」
手招きする青島に誘われて、中に納めた指はそのままで身を寄せる。
後頭部に回された手に引き寄せられて唇を重ねると、青島はひっそりと微笑んだ。
「こっち、来て欲しい」
そういいながら、室井の下半身に手を伸ばしてくる。
「っ」
やんわりと握りこまれて、室井は少し息を詰めた。
「一緒の方が、いいです…」
しっかりと握りなおすと、手を動かし始める。
時間も無いし、青島自身あまりもたないと分かっているから、早く室井が欲しかったのかもしれない。
もちろん、室井に異存などあるわけもない。
むしろ、願ったり叶ったりだ。
青島の愛撫に素直に反応を返しながら、室井も手の動きを再開させた。
先程より、動きが激しくなる。
出し入れを繰り返しながら、ソコが柔らかくなるように、掻き混ぜるように愛撫する。
「あ、はっ…あ…っ」
顎を逸らしながらも、青島も室井を愛撫する手を止めない。
段々と硬く大きく育ち、青島の手の平を濡らす。
「はっ…青島…っ」
室井が呼吸を乱すと、青島は嬉しそうな笑みを零した。
その表情に、室井はまた素直な反応を返してしまう。
「室井さん」
「ん…?」
「ね、もう…」
青島が手探りで、ベッドの上に放り出してあったコンドームに手に取る。
袋から出したそれを、無言で室井に差し出してくる。
上気した顔で小さく微笑まれて、室井は喜んでその手を握った。
「あっ、は、ああ…っ」
青島の腰を抱えるようにして、腰を動かす。
その動きに合わせて、青島の唇から抑えきれない嬌声が漏れた。
無意識なのだろうが、いやいやとするように首を振る。
そのたびに、赤く染まった頬や汗でしっとりとした項、むき出しになった額と長い睫毛が視界に入る。
「色っぽいな…っ」
素直な感想が口を付いた。
が、青島は閉じていた目を開いて、尚且つ眉を顰めた。
「何、言っ…ああっ」
仰け反った顎に、唇を寄せる。
「どこも、かしこも…色っぽい」
そのまま、首筋に吸い付いた。
片手で胸を撫ぜて硬く尖った乳首を愛撫しながら、腰を動かす。
浅い呼吸を繰り返しながら、青島は視線を室井に寄こした。
「っ…それ、喜ぶ…とこ?」
眉を顰めたまま、ちょっと困った顔をしている。
室井は苦笑しながら、青島の唇を軽く奪う。
「喜べとは言わないが、俺は嬉しい…」
「な、ら、喜んどこ…っ」
はにかんだ青島にもう一度キスをして、室井は腰を抱えなおした。
青島が欲しくて、奥に奥にと身体を進める。
「はぁ…あ、ん、んん…っ」
「青島」
名前を呼びながら青島を抱く。
以前に青島はそうされるのが好きだと言っていた。
だから呼ぶわけではない。
青島を欲するせいで、自然と出るのだ。
「青島…っ」
掠れた声に、自分の欲望がはっきり見えている気がした。
自身の浅ましいさに、室井は心の中でちょっと笑った。
いっぱいキスして抱き合って、身体を繋げているのに。
それでも欲するのは、青島の全てだ。
これ以上欲しがったら、青島が無くなってしまうかもしれない。
今度は思わず顔に笑みが出た。
喘ぎとも吐息とも区別のつかない声を漏らしながら、青島は目顔で室井にどうしたのかと聞いてくる。
それに苦笑しながら首を振って、答えた。
「好きだなって…思っただけだ」
最中にそんなことを言うことは滅多にない。
そのせいか、青島は目を丸くした。
だけど、すぐに笑みを零す。
「そりゃ、良かった…っ」
そう言って、室井の背中に腕を回してくる。
室井の動きに合わせるように身体を動かしながら、耳元で囁いた。
「俺は、いつも、思ってますよ」
荒い吐息とともに耳に吹き込まれた言葉に限界を感じて、自然と動きが激しくなる。
打ち付けるように腰をいれると、青島の喉から小さな悲鳴があがった。
「ああっ」
「青島…っ」
「あ、も、イ、イキそ…っ」
「俺も、だ…っ」
背中をぎゅっと抱きしめられて、青島の中がキツク収縮する。
「あああ…っ」
尾を引くような青島の声に導かれて、室井もすぐに後を追った。
簡単に後始末をして、二人とも裸のまま布団を被る。
抱き合って眠れば、寒くは無いだろう。
もう、着替えるのも面倒くさかった。
額を付き合わせるような位置で、青島がくすくすと笑う。
幸せそうな笑みに、室井の顔も自然と緩んだ。
「どうしたんだ?」
静かに問うと、いや別にと呟きながら、室井を見つめて目を細めた。
「や、会いに来てくれて良かったなぁって」
へへーと笑いながら、
「ちょっと遅くなりましたけど、メリークリスマスです」
そう言った。
言われて思い出した。
会いに来た理由の一つ。
プレゼントの存在を。
室井は慌てて枕元に手を伸ばし、手探りでそれを探した。
「ど、どうしたんですか?室井さん?」
いきなりパタパタと手を動かす室井に、青島は目を丸くしている。
室井はプレゼントを探しながら、説明する言葉も一緒に探す。
「いや…」
「探し物?何か無くした?」
「いや……ああ、あった」
室井はホッとしたように呟いた。
手の中の箱はちゃんと原型を止めていた。
恐らく中身も無事だろう。
室井はその箱を青島の視線に持ち上げてみせた。
「……メリークリスマス」
「え?あ?プレゼント?」
驚いた顔をしながらも、手を出してその箱を受け取ってくれる。
しかし、ちょっと顔を顰めた。
「いらないって言ったのに。誕生日にあんなに貰ったらから、今年はクリスマスプレゼントはいらないって言ったのに」
「すまない」
「い、いや、謝ってもらうのもあれなんですけど…」
「君がいらなくても、俺があげたかったんだ」
真顔で言ったら、青島はまた目を丸くした。
だが、すぐに苦笑を浮かべる。
「もう…そういうとこ、ずるいですよね」
「ずるいか?俺は」
「室井さんが真面目な分、ずるいです」
青島の指摘したいことが室井には良く分からなかった。
室井が分かっていないことを、青島は分かっているようで、苦笑を深める。
「好きですけどね、そういうとこも」
嬉しい言葉を紡ぐ唇に、静かに自分のソレを重ねた。
「受け取って、もらえるか?」
「俺のために、用意してくれたんでしょ?」
それなら受け取らないわけないじゃないと笑う。
「すまない」
「だから、謝らない」
「貰ってくれて嬉しい」
怒られて訂正したら、青島はプレゼントの箱を持った手を背中に回して、室井の身体を引き寄せた。
「嬉しいっすよ?有難う御座います」
「ああ…」
「でも、やっぱり」
笑った青島の声。
「会いに来てくれたことが、一番嬉しかったです」
幸せそうなその声が、室井には一番のクリスマスプレゼントだった。
END
これもリカさんとの企画小説でした。
似たようなエロばかりで申し訳ないです(^^;
いやあ、お恥ずかしい…(本当にね)
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