Crisis(4.5) 


青島の自宅の前でタクシーを降りる。
肩を貸しながら部屋に向かうと、預かっていた鍵でドアを開けた。
「大丈夫か?あお…」
玄関に入って様子を伺おうと顔を覗き込もうとした途端、青島に抱きつかれた。
ドアに身体を押し付けられる。
呆気に取られているうちに、青島にキスをされた。
唇が酷く熱い。
舌が唇を割って侵入してくる。
性急に求めてくる青島に驚きながらも、室井は当然の如く応じた。
仕掛けてきたのは青島だが、直ぐに主導権が変わる。
室井は青島が望むままに舌を絡めて吸い上げた。
キスだけですっかり息の上がった青島が、熱っぽい瞳で室井を見つめてくる。
「室井さん…室井さん…っ」
両腕を室井の首に回すと、しがみ付いてくる。
薬のせいだろうが、酷く切羽詰っている。
首筋に青島の熱い息を感じて、室井は背筋が震えた。
「…っ、青島、分かったからベッドに行こう」
このままではこの場で押し倒してしまうと思って口にしたのだが、驚いたことに青島は動こうとしなかった。
下半身を押し付けられて、息を飲む。
青島のそれがすっかり形を変えていた。
「あ、青島…」
思わず焦って声を掛けると、青島は更にぎゅっとしがみ付いてきた。
「ごめ…我慢できない…っ」
「―っ」
室井は青島の両手を外させると、廊下に押し倒した。
青島にこんなことを言われてしまっては、室井の方が我慢が出来ない。
唯でさえ我慢しっぱなしで、色んなことが溜まりに溜まっているのだ。
ずっと触れたかった恋人が目の前にいて、自分を求めてくれている。
薬の影響というのが少し後ろ暗かったが、青島が室井を求めているのは事実だ。
他の誰でもなく、室井だけを。
コートとスーツの上着を乱暴に脱ぎ捨てると、押し倒した青島に圧し掛かる。
すぐに青島の両腕が室井の首に掛かり、そのまま噛み付くようにキスをした。
青島の吐息ごと奪うように口付ける。
唇を重ねたまま、青島のネクタイを引き抜き、シャツを開いた。
手のひらで胸を撫ぜると、既に立ち上がった乳首が触れる。
「んっ」
青島が苦しそうに鼻にかかった声を漏らした。
唇を離して、頬や耳元に軽くキスをする。
「青島…」
首筋を吸い上げながら、青島のベルトを外し、スラックスと一緒に下着も下ろしてしまった。
それは既にしっかりと立ち上がり、先走りを零していた。
「凄いな…」
思わず呟くと、青島が頬を染めながら潤んだ瞳で睨みつけてくる。
「薬の…せいです…」
その通りなのだが、この期に及んで釘を刺してくる辺り、青島らしい。
室井は微笑した。
「分かってる…だけど、俺だからだと思いたい」
「…そんなのっ、当たり前でしょっ」
顔を背けると、室井には赤く染まった首筋が晒される。
そんな仕草に一々たまらない思いにさせられる。
室井がそこを握りこむと、青島が息を詰めた。
焦らすつもりはないし、そんな余裕は室井にも無かった。
手を上下させながら、乳首を口に含む。
「ん…っ」
青島が軽く仰け反って、声をあげた。
反応の速さがいつもと全然違う。
握りこんだそれは直ぐに硬さを増し、濡れた音を立てた。
強く擦り、焦らさずに弱い所を責めてやる。
「くっ…あ、あっ…むろいさ―っ」
室井の名前を呼んだと思ったら、びくびくと身体を痙攣させながらあっけなく果てた。
室井は少し驚いたが、そのまま扱いて腹の上に全部吐き出させた。
「ぁ…は…っ」
喘ぎながら呼吸をする青島に、身を乗り出して軽くキスをした。
「大丈夫か?」
キツク目を閉じて快感に浸っていた青島が、そっと瞳を開けた。
その目元にもキスを送る。
「大丈夫…ですけど…」
「うん?」
目元がまた赤く染まる。
「すいません、また…」
青島に言われて、室井は視線をずらした。
果てたばかりなのに、青島のそこは既に立ち上がり始めていた。
青島は不安そうにしながら、室井にしがみ付いてきた。
達したばかりだというのに熱くなる身体に、どうしたら良いのか分からなくなっているようだった。
何もしなくてもせり上がってくる快感など普通は経験しないから、薬のせいと分かっているとはいえ不安なのだろう。
「大丈夫だ」
室井は青島の髪を優しく梳きながら、優しく唇を吸った。
「何度でも、してやるから」
囁くと、それだけで青島は甘い吐息を漏らした。
室井は青島の腹に手を伸ばした。
吐き出したものを伸ばすように撫ぜるだけで、青島は感じるようだった。
小さく漏れる声を聞きながら、青島の足を開かせて、濡れた手を尻の間に滑らせる。
滑りを借りて、そのまま指を侵入させた。
想像以上に抵抗なく飲み込んだ指に、青島が大きく反応を示す。
「うあっ…あ…っ」
それだけで青島自身が硬く立ち上がる。
「気持ちいいか?」
言葉にならずに頷くだけの青島に、室井は微笑んだ。
「いい顔してる」
青島の頬に赤みが増し、顔を背けられてしまった。
その頬に唇を押し付けると、指を増やした。
「ああっ」
首を逸らせた瞬間に、頬に手を添えて自分の方に向かせると、唇を奪う。
直ぐに青島が舌を絡めて、求めてきた。
室井は舌を絡めたまま、指を激しく動かした。
青島が仰け反って、室井の唇から逃れる。
「っあ、ダ、ダメだ…むろ…っ」
青島の中が激しく収縮した。
互いの腹の間で、青島自身が触れてもいないのに限界を訴えている。
青島の媚態に室井は思わず唾を飲み込んだ。
―早く入りたい。
そう思わずにいられなかった。
それでも、この状態で青島がもつわけもない。
室井は身をかがめると、青島のそれを口に含んだ。
同時に中を擦り上げる。
「―――っ!」
引きつった声を漏らして、青島はまた果てた。
室井の柔らかくて熱い口内に、全て吐き出す。
青臭いそれを何の嫌悪感も無く飲み下すと、顔を上げた。
青島を見ると、ぼんやりとした視線を室井に向けていた。
忙しなく呼吸を繰り返す唇が、酷く色っぽい。
誘われるままに、唇を重ねた。
青島の手が室井の頬を撫ぜ、それから首筋を撫ぜた。
「俺ばっか…すいません…」
可愛いことを言う青島に、室井はまたキスをした。
「気にするな」
「でも」
「それより」
「はい?」
「もう、入ってもいいか?」
青島が気持ちよいのならそれでいいのだが、そんな姿を見せ付けられていつまでも我慢が出来るわけもない。
スラックス越しに自分の高ぶりを、青島の太腿に押し付けた。
「っ」
息を詰めた青島だったが、直ぐに瞳が揺れる。
室井のベルトに手を伸ばすと、青島は室井の顎を下から舐めた。
「俺も、欲しい」
「青島…」
ベルトを外すとファスナーを下ろし、下着の中からそれを取り出した。
既に硬くなっているそれを握りこんで、青島が愛撫してくれる。
直ぐにその手の平を濡らしてしまう。
青島に煽られていつもより反応の早い室井に、青島が少し笑った。
「室井さんも…薬飲んだみたいだ」
それなら、室井の媚薬は青島自身だ。
―これ以上効く薬なんて、ないな。
室井は愛撫する青島の手を取り上げると、腰を抱えて奥に自身を宛がった。
断るだけの余裕が、室井にももう無い。
一気に腰を進めると、青島が仰け反った。
「―あ、ああっ」
「くっ…青島っ」
キツイ締め付けに眉を寄せながら、欲望のまま動き始める。
何度も突き上げると、青島は途切れ途切れに堪らない声をあげた。
青島の膝を掴んで激しく動くと、青島の手が空を掻いた。
無意識なのだろうが、室井に抱きつきたかったようだ。
「青島…」
青島の手を引くと、そのまま身体を起こさせる。
自分の首に腕を回させると、青島の背中を廊下の壁に押し付けた。
「むろ…さん…っ」
しがみ付いてくる青島の身体を抱きしめながら、激しく突く。
一瞬だけ、壁に当たっている青島の背中が痛いのではないかと、気になった。
それも本当に一瞬だけで、すぐに快感に飲み込まれた。
お詫びと愛しさをこめて唇にキスをした。
「青島…気持ちいいか…?」
乱れた呼吸で囁くと、青島の身体が小さく震えた。
「イイ、です…気持ち…あ、あっ」
上ずった声を聞きながら、室井は限界を感じた。
青島自身に手を伸ばし、愛撫する。
「ああ、ムリっ、もたな…っ」
室井の手に自分の手を重ねてくる。
愛撫を止めさせようとしている青島に、室井は微笑しながら囁いた。
「俺も、もうもたない…青島、一緒に」
「室井さん…っ」
ぎゅっと首にしがみ付いてきた青島を抱きしめながら、室井は一番奥を突いた。
喉の奥で声をあげると、青島の中で果てる。
その衝撃でか、すぐに青島も射精した。
声にならない悲鳴は室井の唇に飲み込まれた。

「はっ…はぁ…ぁ…」
目を閉じて荒い呼吸を繰り返す。
室井はその青島の眉間にキスをすると、抱きしめた身体はそのままで、そっと体内から出た。
「青島、大丈夫か?」
「…何とか」
そう言ってようやく目を開けると、苦笑して見せた。
切羽詰まった雰囲気は消えていたから、薬の効果が切れたのかもしれない。
「少し、落ち着いたか?」
「ええ、おかげさまで」
果てたばかりで気だるそうだが、瞳はいつものように明るかった。
不意に青島が微笑んだ。
「やっぱり、室井さんだ」
「…?何がだ?」
「キス、ドキドキする」
笑って、唇を重ねてくる。
軽く触れ合わせて離れると、青島は少し申し訳なさそうな顔をした。
「すみません」
「何が」
「あの男と、キスしちゃいました」
思わず室井の眉間に皺がよる。
あの男とは、青島に薬を飲ませた男のことだろう。
ホテルまで着いて行ったのだ。
それくらいは仕方が無いだろう。
捜査だ。
青島だって、嫌々なのだ。
室井に責められるわけもない。
「気にするな」
「って、顔じゃないですよ」
青島が苦笑している。
渋面で「気にするな」と言われても、何の説得力もないだろう。
青島が両手で室井の頬を掴むと、ゆっくりと唇を重ねてきた。
何度も角度を変えて重ねると、次第に深くなる。
また青島の呼吸が上がってくる頃になって、ようやく離れた。
「室井さんとのキスだけ、ドキドキする」
照れ臭そうに、はにかんだ。
「青島…」
その表情に、室井は思わず身体を熱くしてしまった。
しまったと思ったときには、既に下半身に熱が集まっていた。
悲しいことに、男同士だとそれがストレートに相手に伝わってしまう。
室井の変化に、青島は一瞬目を丸くした。
が、徐々に頬を染めて、熱い吐息を漏らし始めた。
興奮が移ったようだが、もしかしたらまだ薬が切れていないのかもしれない。
「…ベッド、行きません?」
室井が断るはずも無い。
一つ頷くと、青島の頭を撫ぜた。
「いっぱい、キスしような」
青島は嬉しそうに笑った。
「はいっ」










END






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