■ 拍手ログ05
「室井さん、もうちょっとあっち行ってくださいよ」
久しぶりに、とても暇な休日の午後。
日当たりのいいリビングでだらしなく寝そべったまま、背後で同じ様に寝そべっている室井に言った。
言ってしまってから、そういえばと思う。
先にここで転寝していたのは室井の方だった。
その室井に青島が勝手に寄り添っていただけである。
暑さにぼんやりしながら転寝していたせいで、そんなこともすっかり忘れていた。
突っ込まれるかと思ったが、室井はそれには触れなかった。
室井も忘れてしまったのかもしれない。
「暑いなら、君が離れればいいだろ」
室井はそれしか言わなかった。
確かに暑い。
背中に室井の背中がくっついているのだから当然だ。
夏の終わりで我慢できる程度の暑さだったから、あえてクーラーは入れていなかった。
それにしたって、日当たりの良いリビングはただでさえ暑いというのに、わざわざ人肌でまで暖を取る必要はない。
室井とくっついている理由はどこにもなかった。
「暑いんですよ」
「俺だって暑い」
「そりゃ、そうだ…」
なら離れればいいのにと思ったが、室井に対して思ったのか自分に対して思ったのか。
青島は眩しそうに青空を見上げた。
「夕方から雨が降るらしいっすね」
「だから蒸し暑いのか」
「雨降る前に帰ろうかな…」
「車で送ってやる」
青島は肩越しに室井を振り返った。
背中を向けているから室井の顔は見えない。
一緒にいても寝てるだけなのになあと思いながら、青島は声もなく笑って再び室井に背を向けた。
ただいるだけで何もしていないというのに、それでも一緒にいたいと思ってもらえているなら嬉しいが、よく考えたら今更だった。
暑いのに背中をくっつけているくらいである。
一緒にいたくないわけがない。
青島は笑ったまま目を閉じた。
「室井さん、離れてくださいよ」
「君が離れろ」
「嫌です」
背中で室井が小さく笑った音がした。
END
2012.9.11
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