■ 拍手ログ03
雨が続いた週の週末。
室井のような喜怒哀楽に乏しい男でも、久し振りの快晴には気分が良くなる。
青空の広がる窓の外を眺めて、洗濯をしようと決めた。
折角の休日、することがないわけではないが、買い物に行きましょうと約束した誰かさんは未だベッドの中だった。
とりあえず、今の室井には家事をするくらいしかやることがない。
洗濯をすると決めたら、真っ先に気になったものがあった。
リビングから寝室を覗くと、布団を被った青島が丸くなって寝ている。
起こすのも忍びないが、一度気になったらどうしても気になる。
青島には一瞬だけ起きてもらうことにした。
「青島、ちょっと起きてくれ」
軽く揺さぶって起こすと、青島は抱えていた枕に顔を押し付けたまま片目を開けた。
「ん〜…?」
完璧に寝ぼけた顔である。
「少し起きてくれ、シーツ取り替えるから」
「えー…いいっすよ、大丈夫…」
あまり大丈夫ではない。
夕べのあれやこれやで汚れているはずである。
今更ではあるが、惰眠を貪るにしても、どうせならキレイなシーツの方が衛生的だし気持ちもいいだろう。
「シーツを取り替えたらまた寝ていいから……もう10時だけどな」
最後に一応付け足した突っ込みは、聞こえているのかいないのか。
青島は「うー」と唸りながら、仕方がなさそうに起き上がった。
なんのつもりか知らないが、被っていたタオルケットごと起き上がってくるから、大きな子供のようななりになる。
室井は苦笑しながらも、手早くシーツを取り替えた。
「もういいぞ」
キレイになったベッドに促してやるが、青島は動かない。
まだ半分寝ているようなぼんやりした顔で室井をみている。
「青島?」
首を傾げた室井の袖を、青島の手が掴んだ。
「室井さんも、一緒に寝ましょうよ…」
そう言って、軽く袖を引っ張ってくるから、室井は目を剥いた。
だからもう10時だぞとか、俺はもう眠くないとか、言いたいことがないわけではないが、どうしたことか口から出て来ない。
室井が唖然としていることに気付いていないのか、青島はベッドに戻って行った。
奥に詰めて横になり、無言で室井に視線を投げてくる。
「……」
俺はいいと言いかけた口をそのまま閉ざし、室井は青島の視線に誘われるようにベッドに入った。
それを見届けて満足したように青島が瞼を閉じる。
すぐに再び寝息を立て始めた青島を見つめながら、室井は自分に呆れていた。
今更、もう一度眠れる気はしない。
ベッドに入ったところで青島は寝ているし、眠れなければ他にすることは特にない。
それでも青島にベッドに誘われると断れないのだから、室井が自分に呆れるのも無理は無かった。
青島が眠ってしまったのだからベッドから出てもいいのだが、自分の隣でそれはそれは心地良さそうに眠っている青島を見ればそれもしがたい。
室井は結局ベッドから出ることを諦め、青島の肩に腕を回しその身体を引き寄せた。
本人は寝ているし、話をすることすらできないのだから、抱き締める楽しみくらいあってもいいだろう。
室井は一人勝手にそう決め付けたが、寝たままの青島が背中を抱き返してくるから、迷惑ではなさそうだった。
「全く…何してるんだか…」
室井は苦笑ぎみに呟いた。
青島が起きたら、昼飯でも作ってもらおうと思う。
その間に、室井は洗濯をするのだ。
青島が行きたがっていた買い物には行けるだろうか。
青島次第だ。
そんな休日も、たまには悪くない。
目が覚めた青島は「珍しく室井さんもねぼすけですね」と笑った。
室井を二度寝に誘ったことは、覚えていなかったようだ。
青島がなんとなく嬉しそうに笑うから、室井は君のせいだとは言わないでおいた。
END
2012.9.4
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