■ 拍手ログ02


テーブルの上で携帯が震えた。
室井がパソコンの画面から携帯に視線を移すと、振動が止る。
メールを受信したらしい。
室井は携帯を手にして、首を傾げた。
送信者が青島だったからだ。
首を捻って寝室に視線を向ける。
寝室には青島がいる。
室井がリビングで仕事を始めた頃に「先に寝ます」と言って寝室に入って行ったのだ。
夜勤明けだったらしく、室井の部屋に来た時から既に眠そうだったため、室井も引き止めず青島の好きにさせていた。
明日は休暇だから、時間に余裕もあった。
既に眠っているはずの青島からのメール。
室井は首を傾げたまま、メールを開いた。
『変な夢見ました、ちょうこわいやつ。』
短いメールに、思わず苦笑する。
怖い夢を見て目を覚ましたらしい。
それをわざわざ室井にメールで知らせてくるのがおかしかった。
本気で怖がっているわけではないだろう。
本気で怖かっていたら、メールなんかしていないで寝室から出て来るはずだ。
ただの戯れ、そう判断したが、室井は律儀に返信した。
『疲れてるんだろ、ゆっくり休め。』
すぐに返信があった。
『はーい。』
室井は柔らかい眼差しでメールを眺め、携帯をテーブルに置き仕事に戻った。
が、5分後に再びメールを受信した。
送信者はもちろん青島。
『眠れないー。』
『なら、起きてるか?』
『でも眠いー。』
『目をつぶって横になってろ、そのうち眠れる。』
『頑張ります。』
何をだと突っ込みたくなる返信に小さく笑っているうちに、もう一通メールを受信した。
今度はなんだと思いながら開けて、目を丸くした。
『仕事の邪魔してすみません、おやすみなさい。』
最後に、取ってつけたような一言が添えてあった。
『会いたかったです』
久しぶりに会ったというのに、仕事をしている自分が愚か者のような気がする一言。
そういう青島だって室井そっちのけで眠ろうとしているわけだから、室井が気にする必要もない。
だけど、会いたかったのは青島ばかりではないことくらいは、伝えておきたい気になった。
室井は返信しようとしたが、思い立って腰を上げた。
会いたかった人は、すぐそこにいる。










END

2012.9.4




template : A Moveable Feast