■ となり
青島は肌寒さに目を覚ました。
剥き出しになっていた肩を隠すように布団を被り、丸くなる。
「うー」
青島が寝ていた個所以外のシーツが冷えていて、呻きながら布団を頭まで被って更に縮こまる。
裸で寝るには、厳しい季節になった。
もっとも、青島だって一人で寝る時に裸になる趣味はない。
隣には室井がいるはずだった。
「うーん…」
呻きながら、布団からひょっこりと顔を出す。
ベッドにも寝室の中にも室井の姿はなかった。
寝返りを打ってドアを見れば、リビングから明りが漏れていた。
腕時計で時間を確認するが、まだ夜中だった。
そんな時間に室井が起き出しているということは、仕事でもしているのだろう。
「あー…」
青島はむくりと起き上がると、首筋を撫ぜた。
そういえば、まだ仕事をしている室井をベッドに誘ったのは青島の方だった。
久しぶりだということもあってか、パソコンに向かい仕事をしている室井の横顔に酷く欲情したのだ。
少し強引に誘いをかけたら、室井もろくに拒まずにのってはくれたものの、悪いことをしたかなとも思った。
おかげで、こんな時間に一人で仕事をさせている。
本当だったらもっと早くに終えていて、今頃一緒に寝ているはずだった。
青島がちょっと我慢をすれば良かったのである。
今ならそう思えるが、数時間前には思えなかったのだ。
青島は頭を乱暴に掻いてベッドから降りると、脱ぎ捨てたはずのパジャマを探した。
床にはなく、ローチェストの上に畳んで置いてあった。
室井が拾って置いておいてくれたのだろう。
それを身につけると寝室を出た。
リビングの蛍光灯の眩しさに顔を顰める。
「青島?どうした?」
室井が青島を振り返って少し驚いた顔をしていた。
テーブルの上にパソコンを開いているから、やはり仕事の続きをしているらしい。
青島は曖昧に笑った。
「目が覚めちゃったから」
隣に室井さんがいないから、とは言えなかった。
自分のせいでこんな時間まで仕事をしている室井に言えるわけもない。
「寝ていていいんだぞ」
室井はパソコンに視線を戻した。
「俺ももう少ししたら寝るから」
「そうっすか」
そう言いながら、青島は室井の隣に腰を下ろした。
テーブルの端に置いてあった煙草を手に取り、一本咥えて火を点ける。
室井が傍にあった灰皿を取り、青島の足元に置いてくれる。
視線を向けると、室井はパソコンの画面を見たままだった。
真剣な眼差しと横顔。
さっきはこれに欲情したのだが、今は特にしない。
現金なものだと思うが、満たされた後などこんなものだ。
ただ、イイ男だなぁと思うだけ。
横顔を盗み見たまま煙草を深く吸って、ゆっくりと煙を吐き出す。
「すいません」
「何がだ?」
そう答えてから少しの間を置いて、室井が振り返った。
「ええと、そのー、仕事が」
「…?俺の仕事は君のせいじゃないだろう」
不思議そうな室井に、青島は半笑いになった。
「仕事ができなかったのは、俺のせいでしょ?」
室井が目を丸くした。
今度はちゃんと意味が通じたらしい。
結局は二人ですることだから青島ばかりのせいではないかもしれないが、さすがに誘ってするだけして自分だけ気持ち良く寝ていたのかと思うと気が引ける。
「すいません」
もう一度謝ると、室井の眉間に皺が寄った。
「それを謝られると、いたたまれない」
「え?」
「俺が迷惑そうに見えたか?」
「いや、それは全然」
即答すると、室井が苦笑した。
またパソコンに向き直る。
「そういうことだ」
迷惑ではなかったのに、謝られても困るということか。
青島もちょっと笑うと肩を竦めた。
「なるほど」
室井が何も気にしていないのだから、青島も気にする必要はないのかもしれない。
夜中に一人で仕事をさせていると思えば申し訳ないが、室井が嫌々付き合ってくれたわけではないことは青島も知っている。
青島が満足したように、室井もしてくれたのだろう。
欲しかったのはお互い様だ、そう言われた気がした。
青島は眼だけで笑って二本目の煙草に火を点けた。
「寝ていていいんだぞ」
ちらりと横目で見ると、室井はパソコンに向かったままだった。
相変わらず、真剣な横顔。
青島が隣にいて気が散るわけではないようだ。
隣で何をするわけでもなく煙草を吹かしている青島を気遣ってくれているだけだろう。
青島は天井に向かってふーっと煙を吐いた。
「俺が隣にいると、嬉しくない?」
一瞬遅れて、室井が振り返る。
じっと青島を見つめて、頷いた。
「嬉しいな」
青島は首を傾けて、室井の顔を覗きこんだ。
「そういうことっすよ」
室井の手が伸びてきて、青島の髪をくしゃりと掻き回す。
「なるほど」
頭を撫ぜられたまま青島が笑うと、室井も小さく笑みを溢した。
END
2009.1.1
あとがき
あけましておめでとうございます!
昨年末は更新が減ってしまいましたが、今年はもう少し頑張りたいです。
今年も楽しく嬉しく青島君を愛でていきたいと思いますので、
皆様にもお付き合い頂けたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします!
全然お正月と関係ない小話でした(^^;
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