■ ぷちぷち2


「イイモノが手に入ったから遊びに来ないか」と誘われ、青島はウキウキと室井の家を訪れた。
室井からそういうお声がかかる時は大抵酒だったから、今回もそうだと疑いもしなかった青島は、室井が差し出した物を見て驚いた。
プチプチシートである。
しかも、良くある指先サイズのプチプチシートじゃない。
500円硬貨サイズのプチプチシートだ。
青島はそのことにも驚いたのだ。
とりあえず言葉を無くしている青島に、室井は苦笑した。
「この間、知人からの贈り物が届いたんだが、その梱包に使われていたんだ」
「へぇ…こんなデカいのもあるんすねぇ」
プチプチシートを受け取って物珍しげに眺める。
「さすがにこんなもので呼びつけて悪かったか」
珍しい室井の悪戯心だったのかもしれない。
苦笑を深めた室井に、青島は首を振る。
悪いなんてことはない。
大体“イイモノ”だなんて、青島にとっても室井にとっても、デートの切欠に過ぎない。
さすがの青島もプチプチシートに狂喜乱舞したりはしないが、室井の気持ちはなんとなく嬉しかった。
「んー…コレ見て、俺のこと思い出してくれたんだ?」
「見たら、なんとなく、君に見せないといけない気がした」
ははっと軽く笑いながら室井の頬にキスをすると、青島はプチプチシートを両手で持って勝手にソファーに座った。
プチプチシートを手にしたら、不思議なもので、プチプチしたくなる。
青島はやけに押し応えのあるプチプチシートを指の腹で押した。
結構な音を立てて、空気が抜ける。
「お…」
その感触は普通のソレとちょっと違う。
「おお」
大袈裟だけど少し新鮮だ、そして面白い。
「…凄い音だな」
室井の言う通り、プチプチなんて可愛い音ではない。
だけど、物凄く押し応えのあるプチプチシートは、青島に妙な達成感を与える。
ちょっと力を入れて強く押すと、破裂音と共に必ず空気が抜ける。
その瞬間が楽しい。
「あはは…なんか、コレ、気持ちイイですよー」
青島はブチブチと空気を抜いていく。
どうもこれをやりだすと止まらない。
大きかろうと小さかろうと、そこは変わりがないらしい。
頭上で室井が笑った音がする。
結局夢中になっている青島が可笑しかったのかもしれない。
「室井さんもやりますー?」
顔を上げずに尋ねると、室井がまた笑ったようだった。
「俺はいい」
「楽しいですよ?」
「楽しそうな青島を見ているだけで楽しいから、俺はいい」
少し手を止めて顔をあげると、優しい眼差しとぶつかった。
そういうことを言われると、やり辛いことこの上ない。
青島は照れ隠しで笑った。
「室井さん、安上がりっすね」
「君こそ」
「あ、まあ、そうか」
プチプチシートにご満悦な青島も、その青島にご満悦の室井も、どっちも安上がりである。
何にせよ、簡単に幸せが手に入ることは良いことだ。
目を合わせたままクスクスと笑い合うと、室井が手を伸ばしてくる。
プチプチシートの端を掴んだ。
「折角だから」
そう言って一つ潰すと、室井は真顔で続けた。
「……確かにコレはちょっと楽しいな」
残りは結局二人で潰した。


握りつぶすこともなく、すっかり空気の抜けきったシートを眺める。
「今度、コレ買いに行こうかな」
呟いたら、さすがに室井に反対された。





END

2006.7.6

あとがき

小話にしたって酷いお話ですね;
だからアップしてなかったのか…(おいおい)
古いファイルを漁っていて見つけたので、更新してみました。
お粗末すぎてコメントもありません(汗)

これも、私の実体験からきております。
頂きモノの梱包に、500円玉くらいのプチプチシートが使われていたのです。
それを見て、自分で書いたにも関わらず、
「青島君にあげなくちゃ!」と思った次第です…。

お、お粗末様でした〜;



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