コタツ












「室井さん、後ろにあるごみ箱取ってください」

「室井さん、ついでに俺の分のコーヒーもお願いします」

「室井さん、みかん食べたくないですか?食べたいですよね?」

「室井さん、俺の分も・・・・・・って、これはさすがに無理か」




トイレから戻ってきた青島は、脇目をふらずに炬燵に入る。

室井は呆れた顔をした。

「少し炬燵から出たらどうだ」

さっきからずっと炬燵の中にいるのだ。

何か欲しくなると、室井が動くのをじっと待って、「ついでに」と頼むのである。

青島に甘い室井でも、些か呆れる。

「今、出たじゃないですか」

「トイレに行っただけだろう」

「いいじゃないですか、どうせ今日は部屋でダラダラしようって決めたんだから」

折角の揃いの非番だったのだが、外は今年一番の寒さらしい。

青島が室井の部屋まで来てくれたので、今日は一日中部屋の中で過ごすことにしたのだ。

ちなみに青島がこのくそ寒い中室井の部屋まで来てくれたのは、愛ではない。

室井の部屋には炬燵があるからだ。

これまで炬燵を使う習慣がなかったらしく、青島はそれがいたく気にいったらしい。

それは構わないが、ちょっと露骨である。

さっきからこの調子で炬燵から全然出ないのだ。

室井は眉を寄せた。

「動かずに食ってばかりいると、太るぞ」

「日頃身体使いまくってますから、大丈夫ですよ〜だ」

べーっと舌を出した青島が可愛らしく、憎たらしい。

「次、何か頼まれたって、聞いてやらないからな」

「う・・・・・・いいですよ〜我慢するから〜」

室井は眉間に指をあてて短く唸ると、溜息まじりに呟いた。

「そんなに炬燵が好きなのか?」

少し考えて、青島はにやりと笑った。

「もー室井さんてば」

からかいを含んだ笑い声に、首を傾げる。

「・・・?なんだ?」

「炬燵にまで妬かないでくださいよ」

室井は目を剥いた。

それはデッカイ誤解である。

確かに、ことが青島に絡むと、途端に狭量になることは自覚している。

青島と付き合うようになってから、自分が案外ヤキモチ妬きだということに気付いたくらいだ。

だが、今回に限って言えばそんな気持ちは全くない。

単に呆れているだけだ。

仏頂面で抗議しようとした室井に、青島は手招きをする。

眉間に皺を寄せた室井に対し、青島は満面の笑みである。

「・・・なんだ」

「いいから、こっち」

用があるならお前が来いと言えないわけではないが、何となく逆らえない室井はやっぱり青島に

甘かった。

深い溜息を吐いて、重い腰をあげる。

「一体、なんだ・・・」

室井が青島の隣に行くと、青島は身体をずらして隣にスペースを作る。

首を傾げている室井に、ポンポンと空いたスペースを叩いて見せた。

「どうぞ〜」

どうぞ〜と言うからには、座れという意味なのだろう。

室井はそう判断すると、その、二人で座るにはどう考えても狭いスペースに腰を下ろした。

青島と身体を密着させて、炬燵に入る。

「・・・青島?」

意図が良く分からず青島を見ると、青島も室井を見ていた。

目が悪戯っぽく笑っている。

「これなら、いいでしょ」




よくない。

室井は断じて炬燵に妬いていたわけじゃないのだ。

青島が炬燵に入りっぱなしであることが気になっただけである。

これじゃあ、結局青島は炬燵から出ない。

何の解決にもなっていないではないか。

ちっともよくない。




「ね?」

室井の顔を覗きこみながら、青島はどこか照れ臭そうに笑った。

どうやら青島は本当に室井が炬燵に妬いていると思っているらしかった。

否定すれば良いだけかもしれないが、照れ笑いを浮かべる青島にそれは言い辛い。

しかも。

―可愛いなぁ・・・。

と、しみじみ思う始末。

室井にできることは、精々溜息を吐くくらいだ。

「・・・・・・仕方ないな」

「えへへへ・・・もう少し、こうしてましょうよ」

そう言って青島が笑うから、難しい表情もそう続かない。

つられたように、室井も笑みを零した。

「もう少しな」





数時間後。

二人揃って眠ってしまうのだが、風邪を引かなかったのは、抱き合うように寄り添っていたから

かもしれない。






















END
(2005.12.4)


本当は一番書きたかったのは、炬燵で寄り添って眠る二人だったんですけど;
滑り込みセーフみたいな書き方になってしまった・・・(笑)
いつかリベンジしたいです!

知人に炬燵に入ったことがないという方がいらっしゃいまして、
北海道じゃ珍しいなぁと思いました。
他の地方ではどうなんでしょ?
沖縄とかじゃいらないでしょうけどね!(笑)

我が家の炬燵は今大活躍中です(^^)