切欠












「見つかんないっすね〜」

書類の山を漁りながら、青島がぼやく。

書類やらファイルやらが散乱していて、テーブル自体の姿は既に見えなくなっている。

青島の横で書類の束をげんなりしながら見つめていた室井は、生真面目そうに呟いた。

「すまない。君も忙しいのに」

「いや、いいっすけどね。これも俺の仕事ですから」

慌てて青島は首を振る。

袴田の命令で室井の手伝いをするように言われているのだ。

そして、小一時間資料室に篭っている。

「あ、あった」

突然、室井が呟いた。

「え?本当に?」

青島も室井の手元を覗き込んで、嬉しそうに笑う。

どうやら目的の資料を発見できたらしい。

「良かった!」

そう言って、散らかった資料を片付け始める青島に、室井も手伝う。

こういう辺りがキャリアっぽくなく、青島は好きだった。

「っつ」

「室井さん?」

書類の束を整理していた室井が小さく声を上げたから、青島は振り返った。

「いや、大したことじゃない」

何でもないと振った手の指先に血が滲んでいた。

どうやら、紙で切ったらしい。

紙で切ると案外痛いものだ。

それも少しだけ深く切れたようで、みるみる血が滲んでいく。

「わ、大丈夫ですか?」

何を思ったか、青島は慌ててその手を掴み口に含んだ。

「!!!」

絶句する室井とそれに気付かない青島。

室井はすごい勢いで、青島が握っている手を引き抜いた。

「・・・っ!失礼する!」

眉間に深い皺を寄せた室井はそう言うと、くるりと踵を返し、今にも走り出しそうな勢いで資料

室を出て行く。

「む、室井さん?」

その後ろ姿を眺めながら、呆然とする青島。

「・・・・・・ああ、まずかったか」

野郎に指を舐められて気持ちが悪かったのだろう。

青島はそう思ったようで、軽はずみな行動を取ってしまったと後悔した。





室井に悪いことをしたとさえ思った青島は勘違いをしている。

室井が逃げ出したのは、気持ちが悪かったからではない。

むしろその逆で。





それが原因で、室井が自分の気持ちに気付いたことなど、その時の青島は知る由もなかった。



























END
(2005.9.24)


いくら青島君でもいきなり人の指咥えないと思いますがー・・・(汗)
天然ということで、カンベンしてやってくださいませ;

これも発掘品です。
拍手のお礼用に書いた小話でした。
なんか、プロローグチックですが、どこにも続きません。
そんなん多いな、私・・・(笑)
くっ付く前の二人とかも、好きなのです(^^)