■ クーラー


「なんか怠いなぁ」
ソファーの上に寝そべり全力でだらけきってる青島を見て、室井は呆れた顔をした。
「言わなくても、一目見れば分かる」
「えへへ…」
愛想笑いをする青島に溜息を吐く。
室井のお説教を恐れてか、青島は慌てて付け足した。
「いや、だって、こう暑いとどうしても」
「今からそんなことを言ってて、真夏はどうする気だ?」
「あーーー………ねぇ?どうしましょうねぇ?」
逆に聞き返されて、室井は顔をしかめた。
確かに毎日暑いが、室内はクーラーが効いている。
むしろ青島の部屋は涼しいと言えた。
「ちょっとクーラーが強すぎるんじゃないのか?」
クーラーにあたり過ぎると、身体に良くない。
外との気温の差が大きいとそれだけ身体に負担がかかるのだ。
青島の怠さもそこからきているのかもしれないと思い、クーラーの設定温度を確かめると、22度になっていた。
低すぎる。
室井は眉間に皺を寄せて、リモコンを手に取った。
「温度、上げるぞ」
「ええっ!?」
「22度じゃ、低すぎるだろう。28度が人に丁度良い温度だと聞いた」
「28度!?止めてくださいよっ、死にます!」
勢い良く起き上がった青島に、室井は呆れた視線を投げる。
「死ぬわけないだろう」
「無理、絶対無理っ」
「クーラーの使い過ぎは身体にも環境にも良くないんだ。少しくらい我慢しろ」
青島はむうっと膨れた。
室井の言っていることは正論だから、文句も言えないのだろう。
何かを考え込む表情をしているが、反論は出てこない。
「上げるぞ」
リモコンをクーラーに向ける。
「室井さん」
「…何だ」
「28度にしたら、今日はエッチしませんからね」
ピタリと室井の動きが止まる。
青島はソファーにふんぞり反って、してやったりと言う表情を浮かべていた。
―そうきたか。
室井は渋面になったが、反論してみる。
「それとこれとは、関係ないだろ」
「ありますよ。暑い中でしたら余計に暑くなるし、怠くなるでしょ」
「……君だってしたいくせに」
ボソッと言ったら、青島はニッコリ笑った。
「ええ、したいですよ」
あっさりと認めると、青島はわざとらしく溜息を吐いた。
「でも暑いとその分体力使うから、明日もキツイですしね〜」
残念だけど仕方ないですよねなどと言って、ちらりと室井を見てくる。
室井はグッと眉間に皺を寄せた。
分が悪い。
青島だってしたいくせに、室井が室温をあげたらセックスしないと言う。
そして、青島のことだから、間違いなく実行に移す。
意地でも、移す。
それが分かっているから、室井も動けない。
「…卑怯だぞ」
「何でですか。ヤれなくて辛いのは室井さんだけじゃなくて、俺も一緒です」
フェアだと主張してくる青島に、室井は溜息を吐いた。
ここまで青島があからさまに「したい」と言っているのに、ヤらないでなんていられるわけもない。
勝負はとっくについていた。
「26度」
室井が呟くと、青島は目を輝かせた。
「24度」
「……25度でいいか?」
「仕方ないっすね」
そう言いながら、言葉とは裏腹に楽しそうに笑った。
室井も堪らず苦笑する。
負けたが腹立たしくはない。
―リベンジするチャンスなら、いくらでも。
室井は思いながら、腰を屈めた。
青島も笑みを浮かべたまま、素直に目を閉じる。
軽く触れ合わせると、至近距離で囁いた。
「夜は覚悟してろ」
閉じていた青島の瞳が慌てて開かれた。
室井を煽るようなことを言ったのは青島自身だ。
せいぜい後悔してもらおうじゃないか。
青島はしばらくの間、目を丸くして室井を見上げていたが、やがて苦笑した。
「もう1度上げてもいいから、手加減してもらえません?」


室温は25度。
今度は室井が意地になる番だった。





END

2005.6.21

あとがき

青島君と室井さんの地味〜〜〜な攻防戦(笑)

会社のクーラーが効き過ぎてて寒かったので、こんな話になりました。
……関係の無いデキですが(^^;



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