少しだけ












人の話し声がすぐ近くでする。

二人は思わず動きを止めた。

大きな笑い声がして、通り過ぎて行く。

静まりかえると、青島は笑った。

秘密を共有する相手に対して、悪戯っぽい笑みを浮かべる。

微苦笑した室井がまた近づいてくるから、青島は黙って瞳を閉じた。

薄暗い資料室の中。

ひっそりと唇を重ねる。

決して激しくは無い行為だが、頭の中が麻痺してたようにぼうっとしてくる。

青島は頬を撫でられて、そっと目を開けた。

「もう・・・行かないと」

室井が酷く名残惜しそうに言うから、青島は室井の背中を抱きしめた。

「後、5分」

「ん?」

「後5分だけ、付き合ってください」

後5分だけ抱き合っていたところで、離れがたい気持ちが無くなるわけではない。

それでも貴重な5分間だ。

青島は室井の唇に軽く触れて微笑んだ。

「後5分だけ、俺のことだけ考えてください」

仕事に戻ったら、室井は青島のことなどすっかり忘れるだろう。

いや、きれいさっぱりではないかもしれない。

だが、思考の片隅にでも置いて貰えれば御の字だ。

それは青島にだって言えることだった。

目の前にいるときだけ、互いに互いを独占できる。

だからもう5分だけでいいから、室井の時間が欲しかった。

室井は両手で青島の頬を包むと、優しいキスをくれた。

重ねるだけなのに深く感じられたのは、多分室井の気持ちのせい。

「5分付き合うから・・・」

唇を少しだけ離して、室井が言った。

「・・・はい?」

「その後の5分、俺に付き合ってくれ」

青島は声を立てずに笑いながら、室井の唇を奪った。


























END
(2005.5.1)


あっはっはっはっは(何)

笑っておいてください!



この小話は「キスのお題」ラストのボツネタです。
異常なまでの糖度の高さですが、蕩けてない(?)ので、ボツにしました。
勿体無いのでアップしましたが、何だかとっても恥ずかしいです。
今更ですか?(笑)

笑っておいてください!(しつこい)