■ 可愛い理由
リビングで仕事をしていた室井は、寝室から聞こえてくる青島の叫び声に目を丸くした。
「いってぇぇぇぇぇ」
尾を引く叫びに、何事かと寝室を覗く。
「青島?どうし…」
たのかは、聞くまでもない。
右足の脛を押さえて床に蹲っている。
クローゼットの角にぶつけたらしい。
足の小指なら分かるが、脛などどうやってぶつけるのか。
室井は青島の落ち着きのなさを思って、少し呆れた。
それが表情から伝わったのか、漸く顔を上げた青島は足を抱えたまま照れ臭そうに笑った。
「すいませ〜ん。お騒がせしちゃって…」
室井の表情がちょっと緩む。
照れ臭そうな青島がとても可愛かったからだ。
―どうしてこいつはこんなに可愛いんだろうな。
頭の痛いことを、室井は真剣に考える。
「…室井さん?」
脛を摩りながら身体を起こした青島が、室井を不思議そうに見上げている。
「青島」
「はい?」
「今何歳だった?」
「は…?え、ええと、37ですけど…」
そうだよな、と室井は頷く。
―それなのにここまで可愛いのは異常じゃないか?
室井は相変わらず大まじめだ。
―それとも俺が青島に惚れ過ぎているせいで、そう見えているのか?
痛い室井の胸中など知る由もない青島は、室井の視線に居心地が悪そうに目を伏せた。
「どーせ、ガキくさいとか思ってるんでしょ」
少しいじけ気味な青島に、室井はくだらないことを考えるのを中断する。
「いや、そうじゃないんだが…」
そうじゃないのだが、まさか「君が可愛く見える原因について考えていた」とも言えない。
自分でも痛いと自覚しているのだ。
開き直ってはいるが、青島に知られたら更にいじけられるに決まっている。
もしくは怒られるかのどちらかだ。
室井は言い訳を考えながら、青島の傍に膝をついた。
「室井さん…?」
首を傾げた青島に、思わず手を伸ばす。
頬を撫ぜたら、軽く赤面した。
「な、なんですか、一体」
視線を泳がせる青島を見ながら、室井は頷いた。
「……考えるだけ、無駄だな」
青島が可愛い理由など、どうだっていいのだ。
―可愛いのだから、可愛く思って当然だろう。
再三繰り返すが、室井は真剣である。
一人納得する室井に、青島は訳が分からない。
「室井さん?」
訝しげに見つめてくる青島の髪をくしゃりと掻き回す。
「大丈夫か?」
「あ、大丈夫です」
「そうか、気をつけろよ」
「…はぁ」
何だか腑に落ちない表情の青島を引っ張り起こしてやる。
そして何事も無かったようにリビングに戻った。
―青島なんだから可愛いくて当然じゃないか。
自分の恋人にご満悦の室井だったが、決して口にはしなかったので青島にばれることは無かった。
END
2005.3.22
あとがき
ラスクリでNGを出したご本尊があんまりにも可愛らしかったので、
こんなものを書いてしまいました(滝汗)
どうも申し訳ありません;
室井さんが阿呆ですみません(笑)
半ば私の代弁です。
だって可愛いんだもん。
青島君(&ご本尊)だから、当然ですよね?ね?(誰に聞いて・・・)
template : A Moveable Feast