■ 間接キス


青島の飲みかけのコーヒーが、テーブルの上に置いてあった。
自分の分を入れる程飲みたくはないのだが一口だけ欲しかったので、青島に一言断ってから室井はコーヒーカップを手に取った。
手にとってからふと見ると、テレビを見ていたはずの青島がじっと室井を見ていた。
―もしかしたら、飲んだらまずいのだろうか。
そう思いながら、室井は首を傾げる。
「青島?」
「間接キス」
「はぁ?」
青島の突拍子のない一言に、室井は目を丸くして、声をあげた。
「いや、間接キスだなーと思っただけですよ」
ニコリと微笑まれて、室井は眉間に皺を寄せる。
「……何を今更」
間接キスどころか直接キスだってとっくの昔だ。
それ以上のことだってとっくの昔に済んでいるのに、今更そんなことを気にするような仲では無い。
室井には何故いきなり青島がそんなことを言い出したのか、皆目見当が着かなかった。
眉間に皺を寄せている室井に、青島は肩を竦める。
「だから、思っただけですってば」
「…それだけ?」
「そう。それだけ」
どうぞ飲んでくださいと言われて、室井の眉間はますます皺が深くなる。
じゃあ…と飲もうと思うが、そう言われると何となくカップに口付け辛い。
別にやましい思いがあるわけではないのだが。
挙句青島がじっと室井を見詰めたままなので、尚更飲み難い。
室井がカップを持ったまま複雑な表情でカップと青島を見比べていると、青島が吹き出した。
「何で飲まないんですか」
「君が変なこと言うからだろ」
「間接キスなんて今更でしょ」
「それを君がわざわざ言うからだっ」
改めて言われると照れくさくて仕方が無い。
室井が照れていることに気がついたらしい青島が、声を立てて笑った。
「もぉ、室井さん、可愛いなぁ」
「……青島、俺をからかってるだろう」
眉間の皺が頭部にめり込みそうになっている。
だが、軽く赤面して睨んだところで、青島に効くはずもなく。
「からかってませんよ」
そういいながら室井の手からカップを奪った。
そして、カップに口をつけると、ニヤリと笑う。
「…?あお…」
怪訝そうな表情の室井に、青島がいきなり口付けた。
と、同時に室井の口の中にコーヒーの味が広がる。
口移しされたのだと、気付くのに少しだけかかった。
「…直接なら、照れくさくない?」
至近距離で微笑まれて、室井は溜息を吐いた。
「やっぱりからかってないか?」
「ないですってば、しつこいな」
室井が青島の腰を抱くと、青島は苦笑した。
「何だ、やっぱり直接なら照れくさくないんだ」
何とでも言え。
室井はそう思いながら、青島の手からカップを奪ってコーヒーを飲み干した。
それから、爆笑する青島の唇を強引に塞いだ。





END

2004.10.10

あとがき

室井さんが受け臭い気がしなくもない・・・(滝汗)
で、でも、最後は男らしくガバッといってくれたと思います!

コーヒー一つでいちゃいちゃできるのは、
バカップルの特権ですねっ(そんな特権はいらない)



template : A Moveable Feast