■ 背中合わせ


「青島」
「んー……何ですかぁ?」
微妙に間延びした返事が返ってきて、室井は眉間に皺を寄せた。
「重い、んだが」
青島は室井の背中に寄りかかって、雑誌を読んでいた。
背中に青島の温もりを感じるのは心地よいのだが、全力で寄りかかられると正直結構重たい。
30分くらいは我慢していたのだが、一向にどける気配の無い青島に、室井が仕方なく声をかけたのだ。
「すいません」
と、青島は謝ってくれたが、動く気はないらしい。
背中には相変わらず青島の温もり。
室井はちらりと肩越しに背後を見た。
「いや、謝ってくれなくてもいいんだが」
「そうですか」
「そろそろ、どかないか?」
そう言うと、青島もちらりと肩越しに室井を見つめた。
「いやです」
きっぱり言われて、室井はちょっと返事に詰まる。
「青島…?」
「丁度いいんです」
「何が?」
「寄りかかるのに、室井さんの背中が」
そう言って、また雑誌に視線を落とした。
気に入ってもらえて良かった。
そう思わなくもないが、さすがにこの体勢を続けるのはちょっとキツイ。
「寄りかかるなら、ソファーに座った方が座り心地もいいだろう」
「ここがいいんです」
「俺はキツイんだが」
「もうちょっと我慢してください」
頑なに動かない青島に、室井は溜息を吐いた。
「これ以上くっ付いてると…」
「くっ付いていると?」
「イタズラするぞ」
青島の身体が少し強張ったのが、背中越しに伝わる。
日も高いうちからそんなことをすることは滅多にないから、嫌がるだろうと室井は思ったのだ。
ところが、返事は。
「…いいですよ」
室井はぎょっとして、首だけで青島を振り返った。
今度は青島は振り返らない。
「あ、青島?」
「なんすか?」
「本当にするぞ?」
「……だから、いいって言ってるじゃないですか」
雑誌を閉じると、肩越しにちらりと室井を見て舌を出した。
誘っているわけではなさそうだ。
青島が誘ってくる時はもっとストレートに誘ってくる。
室井はちょっと考えてから、くるりと身体の向きを変えて、倒れてきた青島の身体を背後から抱きしめた。
「青島」
「はい?」
「甘えるなら、もうちょっと分かりやすくしてくれないか?」
背後の室井に向かって、首を精一杯後に逸らしていた青島が目を丸くした。
それから苦笑する。
「気がつきませんでした?」
「全く。全然。ちっとも」
「ちぇ」
顎を捉えて、首を伸ばして。
その唇にキスをする。
「30分も無駄にした」
そう言ってやると、青島もくるりと身体の向きを変えて、室井に抱きついた。





END

2004.8.21

あとがき

いちゃいちゃベタベタ(笑)
中身はないですが、こういう話を考えている時は幸せだったりします。

「イタズラするぞ?」発言は、室井さんならしないかもなぁ〜(^^;



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