■ 君さえいれば
青島は、喫煙所ですみれと一緒に休憩していた。
くだらない会話の合間に、すみれが変な声をあげる。
「あ、」
「あ?」
「ああっ」
「な、何さ、いったい」
青島は目を丸くした。
「室井さん」
「え?」
言われて振り返ると、出入り口に室井が立っていた。
「あ、」
そして青島も、妙な声をあげる。
室井が小さな女の子の手を引いていたからだ。
硬直する青島とすみれに、室井は一つ咳払いをした。
「言っておくが、私の子供じゃない」
言われて、それもそうだと青島もすみれも乾いた笑みを浮かべた。
青島までが疑うとは失礼な話である。
すぐに愛想笑いを浮かべた二人に、室井は眉間に皺を寄せながら尋ねる。
「迷子らしい。どうしたらいい?」
「あ、はいはい。ありがと、室井さん。…じゃあ、お姉さんと一緒に行こうね〜」
すみれが慌てて女の子の手を取って、連れて行く。
それを青島と室井は見送った。
「迷子ですか…」
「署の近くでウロウロしていたから連れてきた。…いったい、何だと思ったんだ」
「隠し子?」
「君がそれを言うのか」
眉間に皺を寄せた室井に、青島は慌てる。
確かに恋人が言うセリフではない。
「冗談ですよ。室井さんが浮気すると思ってるわけじゃなくて……ええと、その」
「じゃなくて?」
「……あんまり違和感ないから。あのくらいの子供がいても、おかしくないんだなぁと思って。俺たち」
「!」
室井が驚いた表情で青島を見た。
青島は苦笑する。
「俺、さすがに子供は産めないし」
申し訳ない、というのとは少し違うかもしれない。
女性になりたいと思ったことはないし、これからも室井との関係でそう思うことはないだろう。
男の自分にだからこそ、室井と一緒に歩いていけると思っているからだ。
だけど、女性のように室井に何かを残してあげられるわけではないことが、青島には少しだけ残念だった。
室井は真剣な表情で青島を見つめた。
「俺たちの場合はどちらのせいというわけではないだろう」
「まぁ、そうっすけどね」
「俺だって産めない」
真面目に言われて、青島は吹き出した。
「そうっすね」
それでも真顔の室井に、青島は笑みを引っ込める。
「室井さん?」
「俺は、君さえいれば充分だ」
それだけ言うと、目を丸くしている青島に構わず「仕事に戻る」と言い残し、さっさと喫煙所を出て行ってしまった。
呆然とそれを見送った青島は、室井の姿が完全に見えなくなってから苦笑する。
「…自分で言って自分で照れるなら、言わなきゃいいのに」
そう言いつつも、青島自身表情が緩むのを抑えられなかった。
END
2004.8.15
あとがき
室井さんが「手間が掛かるし、心配は掛けさせられるし、子供がいるのと変わらない」と
青島君に愚痴ってるラストも考えたのですが、
結局いつも通りまったりラブラブになってしまいました(笑)
青島君は子供が好きそうですね〜。
悪ガキと同レベルでケンカしちゃう青島君が好きです(笑)
子供と室井さんという組み合わせも何か好き。
子供の手を引く室井さん……可愛くないですか?(^^)
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