■ 嵐の夜


ガタガタガタ。
「すごい音ですね」
屋根飛ばないかな?などとばかなことを呟いて、青島はカーテンの隙間から外を覗いていた。
「台風がくるらしいな」
室井も青島につられて、一緒に窓を覗く。
「帰れるかなぁ」
「帰る気だったのか?」
青島の独白に近いセリフに、室井は驚いた。
驚かれて青島は苦笑する。
「昨日も泊まったし、明日は仕事だし」
「家から行けばいい」
「帰りますよ、今日は」
「何かあったらどうする」
「大丈夫ですよ、子供じゃあるまいし」
と答えつつ、強風吹き荒ぶ外を見ながら、若干不安顔になる。
誰でもこんな天気の日には、外には出たくない。
「雨、降る前に帰った方が良さそうだなぁ…」
幸い強風だけで、まだ雨は降ってきていない。
でも、それほど待たずに降り出すだろう。
帰るなら、今だ。
青島がそう思っていると、背後から室井に抱きしめられる。
「帰るな」
珍しく室井が駄々を捏ねている。
嬉しく思いながらも、青島は苦笑した。
「室井さん、子供みたいっすよ」
「事故にあったら、困る」
青島の言葉を無視して、室井がなおも引き止める。
「それは、俺も困るけど」
「怖くないのか?」
「台風がですか?俺をいくつだと思ってるんですか」
「俺は怖い」
思わず室井を振り返る。
「俺が怖いから、帰らないでくれ」
青島は馬鹿みたいに口をポカンと開けて室井を見た。
見つめると、室井の眉間に皺が寄る。
青島は吹き出した。
「くくくっ、あはははは、室井さん…」
声を上げて笑う青島に、むっつりとする室井。
「もうちょっとましな嘘は無いんですか?」
室井の嘘はすぐ分かる。
それは常日頃青島が言っていることで、室井も騙せるとは思っていなかったのだろう。
開き直ったように、平然としている。
「嘘かどうか、分からないだろう」
「分かりますって。分かり易すぎ」
「君が帰った後に、一人泣いていたらどうする?」
青島は目を丸くしてから、微笑んだ。
「それはちょっと見たいかも」
「…性格が悪いぞ、青島」
膨れる室井に、軽く唇を奪われる。
唇を離すと室井が真顔で言った。
「見せてやるから、帰るな」
青島は苦笑して、室井にキスをした。





END

2004.8.4

あとがき

珍しく駄々を捏ねる室井さん…(笑)
本当に泣いてくれたのでしょうかね?
逆に鳴かされてそうですけど、青島君…。

台風も嵐も雷も怖いです。本当。



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