■ cumbersome


「わ、びっくりした…」
大きな雷の音に、青島は思わず声を漏らした。
眠っていたため声は掠れていて小さかったが、隣で眠っていた室井も目を覚ましたようだった。
「凄い音だな…」
「ええ、雨も酷いみたいですよ」
「台風だろうか」
「さあ、ニュースでそうとは聞かなかったけどなあ」
小声で言葉を交わす間にも、強く屋根を叩く雨音と雷の音が響いていた。
「珍しいな」
室井が欠伸混じりに呟き抱き寄せてくるから、青島はされるがままになって寄り添った。
「何がっすか?」
「一度寝たら、朝まで起きないだろ」
「いや、さすがにこんなにうるさかったら起きますって」
「…そういうことに、しておこう」
起こしても起きない時もあるくせにとでも思っているのか納得はしていないようだったか、眠気が勝るのか室井は反論しなかった。
抱き寄せられたままだから、吐息が首筋にかかってくすぐったいが、室井はそのまま眠るつもりなのか動かない。
暖かいし落ち着くから、青島もそれで構わなかった。
嵐の夜には漠然とした不安を覚えることもあるから、室井と一緒で良かったかもしれないと思いながら青島は目を閉じた。
黙って目を閉じ眠気に身を任せてみるが、任せきれない。
うるさいからだ。
雨脚は強さを増している気がするし、雷鳴はいつまで経っても遠ざかって行かない。
青島はしばらくは黙ってじっとしていたが、やがて我慢しきれずにぼやいた。
「うるさいなあ…」
室井が僅かに身じろいだ。
「仕方ないだろう、こればかりは」
反応の鈍さから眠いのだろうと思われたが、ぼそぼそとだが言葉にして相手をしてくれる。
「分かってますけど、これじゃあ寝られないですよ」
普段なら多少うるさくても気にならないし、二度寝三度寝も平気な男だが、この日は珍しいことに一度耳についた音が頭から離れず、どうしたことか眠れない。
眠たいだけに、厄介である。
「眠れません、室井さん」
そうでもなさそうな室井の睡眠を邪魔するように訴えた。
「…目をつぶってろ、そのうち眠れる」
適当でも返事をくれるから律儀な人だなあと感心するが、だからといって室井の言う通りにしたところで寝られる気が全くしない。
だって、本当にうるさい。
普段なら青島よりも遥かに耳聡い室井が今にも寝てしまいそうなことが、青島には不思議だった。
そして、羨ましいなと思う。
青島も眠気はあるというのに、困ったことに眠れそうにない。
「…室井さん」
「寝ろ」
構って欲しがっている青島に気付いているのかいないのか、室井が宥めるように青島の背中を軽く叩いた。
その仕草はまるで子供を寝かし付ける親のようである。
大人げなく睡眠の邪魔をしているのだからそうされても仕方がないが、子供をあやすような態度が少し気に入らない。
むっつりした青島は、室井に抱き付くと首筋に唇を押しつけた。
「室井さん、眠れない」
「…そのうち眠れる」
「眠れません。眠れないからから、いちゃいちゃしません?」
強く吸いついてみる。
「………いいから、寝ろ」
軽く頭を叩かれたが、青島は笑ってしまった。
「今、少し考えたでしょ」
返事に間があったからには、僅かでも考えてみたということだ。
「うるさい」
強く抱き返されて、青島は笑ったまま目を閉じた。
青島だって眠たいのだ、本心から誘ったわけではない。
それでも、僅かでも考えてくれた室井が愛しかった。
「ごめんごめん、ちゃんと寝ますから」
今度は青島が室井の背中を叩いて怒らないでと宥めれば、室井の腕から力が抜けた。
「寝ないと、明日の朝辛いのは君だぞ」
「ですよね」
「君がどうしてもしたいなら、してもいいが」
からかわれたことに対する意趣返しか、恨みがましい室井の言い草が可笑しくて、青島は笑みを浮かべたまま謝罪した。
「いや、ごめんてば。寝ます、寝かせて」
小さな溜め息が耳に届き、室井の手が頭に触れた。
髪を梳くような手つきは優しく、現金なことに今なら眠れそうだなと思った。
「寝られるか?」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
少しの間の後、明日は晴れるといいなと、室井が呟いた。
そうですねと返事をしたつもりだが、不明瞭になった言葉に室井が小さく笑ったことには気付かなかった。










END

2014.9.13


眠れないから構って!な青島君の方が結局先に寝るっていう…
睡眠を邪魔された室井さんは怒ってもいいと思うんですけどね(笑)
でも、青島君だしね。
青島君だから仕方ないですよね(室井さんを黙らす魔法の言葉)

それにしても、良くベッドで寝てる(エロにあらず)二人を書いてる気がするなあ…


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