■ 拍手ログ12


休日の昼下がり。
文庫本に目を落とす室井の膝の上には青島の頭があった。
夜勤明けだという青島が室井の部屋にやってきたのは、つい30分ほど前だった。
昼飯を食わせてやった後は、ずっと室井の足に頭を預けてゴロゴロしている。
夜勤明けだから、当然眠たいのだ。
「ベッドで寝て来ていいんだぞ」
文庫本に目を向けたまま声をかけると、青島から短い返事がかえってきた。
「いいです」
何がいいのか。
室井の膝枕でいいと言っているのか。
柔らかなベッドよりも。
室井がその顔に視線を落とすが、青島は目をつぶっていた。
「首痛くないのか?」
「平気です」
答えてから、ゆっくりと瞼が開き、眠そうな目が室井を見上げてくる。
「重たい?」
「平気だ」
室井が答えると安心したようにまた目を閉じる。
どうあっても退ける気はないらしい青島に苦笑し、室井は文庫本に視線を戻した。

少し経ってから、青島が何かを呟いた。
小説に集中していた室井には聞き取れなかった。
「何だって?」
聞き返し見下ろしたら、青島は目を閉じたまま眉をひそめていた。
「それ、止めてください…」
「それ?」
「手…頭撫ぜるの…」
言われて、はたと手を止める。
文庫本を持たない右手が、青島の頭を撫ぜていたらしい。
「すまない」
自身の無意識の行動に内心で苦笑し、睡眠の邪魔だったかと素直に手を離そうとしたが、
「頭撫ぜられると…余計に眠くなる…」
青島が眠そうにそうぼやくから、室井は手を離すことを止めにした。
余計に眠くなるのは、気持ちがいいからなのだろう。
だったら、室井が止める必要もない。
青島の身体は休息を要求しているし、室井の手もきっと不必要ではない。
「寝てしまえ」
優しく頭を撫ぜながら囁くと、青島が小さく呟く。
「やだ…」
ほとんど寝ていると言ってもいいのに、無駄に頑張る青島に室井は思わず笑ってしまった。
夜勤明けに無理して室井に会いに来たのは、室井に会いたかったからだ。
青島が眠りたがらないのも、同じ理由だ。
室井は同じペースで青島の頭を撫ぜながら、穏やかに微笑んだ。
「ここにいるから」
青島の口角が上がった。
ややしばらくすると、寝息が聞こえてくる。
室井はしばらく青島の寝顔を見下ろしていたが、再び文庫本に目を落とした。
青島の頭を撫で続けながら。










END

2013.1.8




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