■ 拍手ログ07(06の続き)
二人分の重みでベッドが軋んだ。
「青島…」
青島を見下ろす室井が小さく囁きながら、唇を合わせてくる。
触れる唇に心臓がうるさくなった。
差し入れられた舌に応じながらも、青島は少々困っていた。
背中を抱こうかどうしようか迷った手が宙に浮き、結局室井の腕を縋るように掴んだ。
その後は、もうどうしたらいいものだか分からない。
前回はどうしたっけなと思うが、前回のことを思い出せば赤面したくなるだけだった。
「…どうかしたのか?青島」
唇を離した室井が、不思議そうに青島を見下ろす。
何か変だっただろうかと、青島は内心で焦りつつ問い返した。
「どうって?」
「いや、なんか…」
「はい?」
「その…大人しくないか?前の時と違って」
気まずそうに問われて、青島は顔に血が上るのを感じた。
落ち着かない自分をなんとかごまかそうと思ったが、やっぱり不自然だったらしい。
今の状態を大人しいと言われてしまうと、前回の時はどれほどどうだったのかと、益々赤面する思いだった。
「いや、だって、あの時は」
青島は思わず言い訳した。
「背水の陣というか、火事場のクソ力というか、やけくそというか」
そのろくでもない言い訳に、室井が呆れた顔をした。
「やけくそ呼ばわりはないだろ…」
背水の陣も火事場のくそ力も変な例えではあったがそれよりも、仮にも初めての夜を「やけくそ」と言われてしまえば室井が突っ込みたくなっても当然だった。
いや、青島もやけくそで室井に抱かれたわけではない。
だが、玉砕覚悟で室井に告白し押し倒していた。
一度だけでいいからだなんて、やけくそにでもならなければ室井に迫れない。
室井を失うだろうという絶望的な覚悟で挑んだ行為は、最初で最後と心に決めた青島を酷く大胆にした。
押し倒したのは青島だったが、最終的には逆に押し倒されて室井が望むまま身体を開いた。
だが、今回はあの夜と勝手が違う。
室井は青島の恋人だった。
恋人になってから遠慮するというのも甚だおかしな話だが、初めての時には捨て身でかかっていけた行為がうまく出来ない。
自分がどんなふうに室井を求めるか分かっているだけに、気恥ずかしいのだ。
青島自身、二度目のセックスで背中を抱くことすら躊躇するはめになるとは思っていなかった。
室井に押し倒されて、身の置き場に困っていた。
視線を泳がせる青島をしばらく呆れたように見ていたが、室井は青島の目を覗き込むようにして視線を合わせた。
「嫌なわけじゃないんだな?」
「そりゃあ…もちろん」
一度寝れば満足だからと思い誘ったわけではなく、一度でもいいから室井を自分のものにしたかったから誘ったのだ。
許されるなら、一度どころか何度だって自分のものにしたいに決まっている。
「この間は君が頑張ってくれたからな」
室井は青島のシャツのボタンを外しながら、キスをした。
「な、に…ん…」
「今日は君は何もしなくていい」
横になってろと微笑まれ、青島の顔がまた熱くなる。
前回は自分で脱いだ服を室井に脱がされ、素肌に触れる室井の唇や舌を感じればじっとしていられない。
「ん…あ、む、室井さん…っ」
うわずった声をあげ室井の腕を強く掴む青島に、室井は小さく笑った。
「積極的な君もそうでない君も、可愛いぞ」
真っ赤になって呻いた青島の前髪をすき、室井は少し表情を引き締めた。
「好きだ」
言葉もない青島にもう一度口付け、室井は青島の首筋に顔を埋めた。
初めての時のやり直しのつもりか、室井は躊躇うこともなく告げてくれた。
あの夜は、青島は両思いと知らずに室井に抱かれた。
室井に触れられる喜びと、もう二度と触れられないだろうという悲しさ。
幸せだったけど、寂しい夜だった。
今回は違う。
愛する人と、愛し合える喜びを確かに感じた。
言葉通り、室井はどんな青島でも愛してくれるのだろう。
できることならこの夜が生涯続けばいいと願いながら、青島はもう躊躇うことなく室井の背中を抱いた。
END
2012.11.21
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