■ 一青パラレル(フリーライター一倉×大学生青島)08


店を出た青島は、足早に自宅へ向かった。
飲み会の途中で受信したメールで、一倉の帰宅を知ったからだ。
一倉は二週間ほど海外に出張していて、顔を合わせるのは久しぶりだった。
予定より三日早まった帰宅を知らせるメールであり、早く帰って来いと言われたわけではないが、カラオケに流れるという友人たちに詫びて飲み会を一次会で抜けていた。
自宅に向かう足取りは、無意識に速度が上がっていた。

帰宅すると、一倉はソファに横になり、テレビを観ていた。
転寝していたのか、少し寝ぼけた眼差しで青島を見上げた。
「おう、おかえり…」
欠伸交じりに言われて、青島は苦笑した。
「一倉さんこそ、おかえりなさい」
「ああ、そうか、そういえばそうだな…」
「寝ぼけてる?」
吹き出した青島を見上げ、一倉は小さく笑って手招きをした。
素直に近付くと、起き上がった一倉が腰を抱き寄せてくる。
腹に顔を埋める一倉を見下ろし、青島は髪にそっと触れた。
「急がせたか?飲み会だったんだろ?」
「一次会だけで十分ですよ」
「つまらない飲み会だったのか?」
「そんなことはないけど…合コンだったしね」
一倉が少しだけ顔をあげ、上目遣いで見上げてくる。
その目が笑っていた。
「浮気してんじゃないだろうな」
からかうような一倉に、青島は呆れた顔をした。
「だから、一次会で抜けてきたって言ってんでしょ」
一倉は青島をあまり束縛しない。
バイトをするとかしないとかで若干揉めたこともあったが、青島が勝手にバイトを決めてくると肩を竦めただけで文句も言わず、今や何事も経験だと応援されている。
たまに友人と飲みに行くことも、付き合いで合コンに行くことも、咎めることはなかった。
もちろん、浮気まで容認されているとは思っていなかったし、青島もする気は無かった。
「ま、浮気してたら、馬鹿正直に合コン行ったなんて白状しねぇか」
「一倉さんこそ、海外でハメ外してないでしょうね」
本気で疑っているわけではないが、疑いの眼差しを向けると、一倉は青島を見上げて笑った。
「さて、どうだったかな」
「ちょっと」
青島が膨れっ面になると、一倉は身体を離した。
「教えてやろうか」
腕を引かれてソファに押し倒され、唇を塞がれる。
あまりに突然で、青島の口から不服を訴える音が漏れたが、一倉が退かないと知ると、諦めてその背中を抱いた。
諦めがいいわけではなく、青島だってしたくなかったわけではないだけである。
急すぎることには文句があったが、愛撫する唇や手に誘われるように、青島はあっさりとその気になった。


「ちょ、ちょっと、一倉さん、も、無理…っ」
青島が泣き言を漏らすと、一倉は宥めるように青島の背中に唇を這わせた。
「だらしないな、お前の方が若いんだからもっと頑張れよ」
クスクス笑う音が耳に届き、青島は枕にしがみついたまま渋面になった。
「あ、アンタが三回もいかすからでしょ」
「もっとって言われた気もするが?」
「幻聴ですよ」
「そうか…じゃあ、本当に言わせてみようか」
一倉が腰を深くいれてくるから、青島は声にならない声をあげた。
止めさせたいのかすがりつきたいのか分からない手を後ろに伸ばすと、一倉が握ってくれた。
そのまま揺すぶられれば、疲れた身体が勝手に快感を追い始める。
慣れた身体が腹立たしいが、慣らした男も腹立たしい。
明日動けなかったらどうしようと思いながらも、快感に流されて抵抗もできない。
青島は微かに喘ぎながらも悪態をついた。
「一倉さんの、ばか、鬼…っ」
「お前な、こんな時くらいもうちょっと色っぽいこと言えよ」
苦笑した一倉が、青島の背中に覆いかぶさって首筋にキスをした。
優しく吸われてゾクゾクし、無意識に中にいる一倉を締め付ける。
それに応えるように、一倉の律動が早くなった。
「前言撤回、言葉はどうでもいいぞ」
「な、に…」
「お前、十分色っぽいよ」
「このエロ親父…っ」
「知らなかったのか?」
青島が思わず知ってたけど!と叫ぶと、一倉が笑いながら腰をひいた。
青島を仰向けにし足を開かせて、再び伸し掛かってくる。
散々文句を言ったくせに素直に背中に腕を回してしがみつくと、一倉はらしくもなく屈託なく笑って、青島にキスをした。
「浮気してないって、分かったか?」
青島は半笑いになった。
「逆に不安になりましたよ」
「なに?」
「こんなに元気な人が2週間もせずに浮気しないでいられるものなのかなと」
「ばか」
一倉が頭突きをしてくるから、青島はぎゅっと目を閉じた。
額に軽い衝撃の後、唇が塞がれる。
目を開けたら、目の前で一倉がニヤリと笑った。
「こんなに欲しいヤツがいるのに、余所になんか構ってられるか」
一倉にとって何が一番かを、身を持って青島に教えてくれたらしい。
青島は薄らと赤面したが、わざとに呆れた口調で言った。
「物は言いようですね」
「まだ信じられないか?それなら…」
「わあ!もう信じた、信じましたから!」
青島がこれ以上の熱烈な愛情表現は勘弁してくれと訴えると、一倉は笑って優しいキスをくれた。
「もういらないか?」
そう聞かれると、青島も返事に困る。
一倉からの愛情をいらないと思ったことなど一度もない。
身体は疲れているしいい加減眠たいけれど、そう聞かれてしまうといらないとはどうしても言えなかった。
青島は悩んだが、結局は一倉の首に腕を回し、引き寄せた肩に顔を埋めた。
「お手柔らかに、お願いします…」
耳元で一倉が了解と笑った。










END

2012.11.27





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