■ 一青パラレル(フリーライター一倉×大学生青島)06
一倉は煙草の煙を天井に向かって吐き出し、ちらりと視線を下に向ける。
膝の上に青島の頭があった。
ソファーに座っている一倉の膝に頭を乗っけて、青島は床にあぐらを掻いて座っていた。
一緒にテレビを見ていたはずだが、気付いたらこんな態勢になっていて、かれこれ30分くらいこうしている。
一倉は片手で青島の髪をそっと撫でた。
「しんどくないのかね…」
そんな態勢では腰が痛くなるのではと思ったのだが、
「…平気」
独り言に返事があって、一倉は目を丸くした。
「なんだ、起きてたのか」
すっかり寝ているものだと思い込んでいたのだ。
起こさないようになるべくじっとしていた時間が虚しい。
だからといって、時間を帰せと思うわけでもない。
なんとなく青島が甘えている気がしたからだ。
ここのところ仕事が忙しく家を開けることが多く、あまり青島と一緒にいられなかった。
夕べも一週間の海外出張から帰ったばかりである。
その反動でくっついてるのかなとは思ったが、珍しくもあった。
歳の差があることを意識するせいか、青島は露骨に一倉に甘えたりはしない。
対等でありたいという青島の気持ちは感じているし、ある程度汲んでやりたいとも思っていた。
―そんな青島が俺の下で頬を染めて、耐えたり乱れたりするから、また堪んないんだけどな。
などと夕べのベッドの中での様子なんぞを思いだし、少々脱線したことを考えていると、青島が少しみじろいだ。
「寝てませんよ、眠いけど」
誰かさんのせいでと一倉を責める眠そうな声を聞きながら、苦笑する。
「別に寝ても構わないぞ」
「んー…」
「退屈か?」
なんとなく青島の髪に触れて、弄ぶ。
「やっぱり、どこか行くか?」
寒いという理由で二人揃って引き込もっているが、休日だった。
「…ここにいる」
青島が一倉の膝の上で首を振った。
こことは、自宅という意味か、一倉の膝の上という意味か。
一倉はそんなことを考えながら、青島の頭の上に手を置いた。
―寂しかったか?
聞こうかなと思ったが照れるだろうし、からかえば膨れるだろう。
久しぶりに青島とのんびりできるのだ。
余計なケンカはしたくない。
一倉だって、青島とこうして過ごす穏やかな時間も大事だと思うのだ。
「一倉さん」
ふいに小さく青島が呼んだ。
一倉は煙草をくわえながら返事を返す。
「どうした?」
「思ったより一週間は長かった……です」
一倉は思わず目を剥いて青島を見た。
灰を落としそうになって、慌ててテーブルの上の灰皿に煙草を押し付ける。
一倉が動いたせいか、青島はようやく膝から顔を上げた。
少し眠そうな目で、だけどどこか照れ臭そうな顔をしていた。
「…お前は、時々びっくりするくらい素直だな」
「失礼な、俺はいつでも素直ですよ」
「そうか?じゃあ、そういうことにしとこうか」
言って、青島の頬を掴んだ。
身を屈めて唇を寄せると、青島もすぐに目を閉じる。
軽く触れ合わすと、目を合わせて微笑む。
「寂しかったか?」
青島は逡巡したが、素直だと言い張った手前か、堂々と言い放った。
「寂しかったですよ」
文句ありますかと睨まれて、一倉は破顔した。
「全然」
もう一度キスをすると、今度はすぐには解放しない。
舌を絡めて深く求めると、一倉の勢いに押されてか、青島の体が少し後ろに反れた。
それを更に追いながら、一倉もソファーから降りて、青島と正面から抱き合う。
「ん…ふ…っ」
小さく漏れるうめき声が色っぽい。
一倉が青島の唇を舐めると、抱き締めた体が少し震えた。
「夕べ、一週間分しましたよ?」
「そうだったかな?」
嘯いたら、青島は仕方ないなぁというふうに笑った。
満更でもないのは、赤く染まった目元で分かる。
青島の腕が一倉の背中に回った。
「でも、最後までは無理っすよ」
「じゃあ、いけるとこまで」
「お手柔らかに頼みます」
「努力しよう」
お前次第だけどな、と心の中で囁いて、再び青島の唇を塞いだ。
END
2008.1.29
template : A Moveable Feast