■ 一青パラレル(フリーライター一倉×大学生青島)05


大学が休みの暇な休日。
青島は床に寝そべって、一人テレビを見ていた。
一倉も今日は休暇だったのだが、夕べ遅くに帰って来たからまだ寝ている。
一人で退屈ではあったが、だからといって気持ち良さそうに寝ているものを起こすのも忍びない。
腹でも減れば起きるだろうと思って放っておいた。

「…おはよう」
面白くもないワイドショーを眺めていると、一倉が寝室から出てきた。
シャツの裾から手を入れ、腹を掻いている。
オヤジ臭い仕草に笑って、青島は挨拶を返した。
「もう、こんにちはっすよ」
「そうか、良く寝たな」
一倉が隣に腰を下ろすから、青島も半身を起こしあぐらを掻いた。
一倉の前に煙草と灰皿を置いてやる。
「コーヒーでも飲みますか?」
まだ眠そうな一倉に尋ねると、一倉がぼんやりとした視線を寄越す。
「お前、」
「なに?」
「可愛いなぁ…」
「……はぁ?」
寝惚けた一倉には青島のちょっとした親切が甲斐甲斐しく見えたのかもしれないし、ただ単純に青島が可愛いと思いなおしただけかもしれない。
どちらにせよ、青島には唐突過ぎて意味が分からなかった。
いきなり伸びてきた手で、少し乱暴に頭をなぜられて、目を白黒させる。
「な、なに、一体…」
「よし、イイコな青島には、良いものをあげよう」
訳が分からないが、とりあえず青島はムッとした。
「子供扱いしないでよ」
確かに一倉に比べるとかなり子供だと思うが、同じ男としては面白くない。
一倉は苦笑すると首を振った。
「してないしてない」
「繰り返されると嘘くさい」
「いいから、ちょっと目をつぶれ」
どこから何を出す気か知らないが、随分勿体ぶってくれる。
アンタの方が子供じゃないかと思ったが、そう言い返すのも大人げないと思い、青島は素直に目を閉じた。
一瞬の間の後、唇に柔らかい感触。
それが何か分からないほど、一倉とは浅い付き合いではない。
青島がパチリと目を開けると、目の前で一倉が笑っていた。
「素直というか、純粋というか」
「え……えっ?なに?」
「目なんか閉じたら、キスすんに決まってるだろ、俺が」
そう言ってもう一度と触れてくる。
青島は呆然としたまま、ちょっと頬を染めた。
「一体なんなのさ、もう」
「まぁ、気にすんな。コーヒー欲しいな、青島」
「…はいはい」
キス一つで今更どうということもないが、不意打ちはやはり照れる。
熱い顔を隠すようにしながら台所に行こうとして、一倉に手首を掴まれ止められる。
何事かと振り返ったら、一倉は数秒前と打って変わって何故か難しい顔をしていた。
「一倉さん?どうかし…」
「青島」
「え?」
「ちょっと無防備過ぎじゃないか?」
「……はぁ???」
またも唐突に言われて、青島の目が点になる。
「ちょっと……いいから、ちょっと座れ」
腕を引っ張られて、再び一倉の前に座らされる。
青島には、意味がさっぱり分からない。
困惑してる青島に、一倉は語り出した。
「誰の前でもそんなに簡単に目をつぶるんじゃないだろうな?」
「は?」
「お前な、少しは疑ってかからないとダメだぞ」
「はぁ…」
「こんな簡単にキスさせたらダメだからな……いや、簡単じゃなくても他のヤツとするなよ」
「……」
この男はまだ寝てるんだろうか。
青島は心底そう思った。
目をつぶれと言ったのは一倉自身で、その通りにしたら一倉がキスをしてきたのだ。
それで何故、青島がお説教されなければならないのか。
大体、青島にこんなマネをするのは一倉くらいのものである。
警戒心を持てだの、注意深く生きろだの、ハテは男は皆獣だの、お前が言うなと言いたくなる言葉が一倉の口から発せられる。
青島はうんざりして、一倉の胸ぐらを掴んだ。
そのまま力一杯引き寄せて、唇をぶつけるように奪った。
「キスしたいと思えば、目なんかつぶらなくてもするもんでしょ」
珍しく目を剥いた一倉に、そんな忠告意味あるのかと言わんばかり言い捨てて、青島は台所に向った。










END

2008.1.29





template : A Moveable Feast