青島の第一声がそれで、室井はドアを開けたままの体勢で苦笑した。
「・・・とにかく、上がれ」
青島はニッコリ笑って、「お邪魔しまーす」と言った。
ドアを閉めた室井は、前日の青島とのメールのやり取りを思い出す。
『明日イタズラしに行ってもいいですか?』
『そういう場合は、「trick or terat」って聞くんじゃないのか?』
『あれ?なんだ、室井さん。ハロウィン覚えてたんですね』
『君のメールで思い出した。それにしても、「お菓子」って選択肢はないのか』
『お菓子は室井さん。それは、それ。美味しく頂きます』
『何か、自棄になってないか・・・?』
『めちゃめちゃ自棄になってますよ。どれくらい会ってないと思ってるんですか。
明日は意地でもイタズラしに行きますからね!』
確かにしばらく仕事が忙しくて、会えなかった。
痺れを切らした青島が、ハロウィンである今日に「イタズラをする」という名目で会いに来てくれる。
室井にとっては、これ以上嬉しいことはない。
青島が会いたくて堪らなかったように、室井だって青島に会いたかったのだ。
―「イタズラ」とは何をするつもりか知らないが、随分可愛いことを言ってくれる。
―尤も単なる会いにくる口実で、深い意味は無かったのかもしれないが。
室井はそんなふうに思っていた。
「ビールでいいか?」
台所から尋ねると、青島が「はい」と返事を寄こす。
二人分のビールの缶を持ってリビングに戻ると、室井は硬直した。
その手から、缶が滑り落ちる。
「ああっ、何してるんですか〜」
転がる缶ビールを青島が拾ってくれるのだが、室井はそれどころじゃない。
「―な、何、してるんだ」
「はい?あ、コレ?」
青島は笑いながら自分の頭の上を指差した。
そこには、黒猫の耳が。
「すみれさんに室井さん家でハロウィンするんだって言ったら、ハロウィンなら仮装した方が盛り
上がるって言われて〜」
そう言われて、それをすみれから借りてきたらしい。
青島は鞄をゴソゴソと漁って、何かを取り出す。
「これ、室井さんの分です」
差し出された犬の耳を前に、室井はまたも硬直した。
青島のソレと対らしい。
固まっている室井を見た青島が苦笑する。
「あ、やっぱり、可笑しいです?いい歳してこんな・・・」
すみれさんにはそう言ったんですけどねと照れくさそうに笑いながら、青島が自分の頭に手を伸ば
したから、室井は思わず青島の手を掴んだ。
青島はきょとんとした顔で室井を見る。
「室井さん?」
「・・・・・・おかしくない」
「・・・?そうですか?」
手を掴まれたまま、青島は首を傾げた。
―おかしくない。
―いや、ある意味すこぶるおかしい。
―何でこの男は36歳にもなるというのに、こんなものが似合うんだ?
―そして、何で俺の目にはこんなに可愛く見えるんだ?
室井は混乱している思考の中で、いよいよ末期的な自分に呆れた。
だが、どんなに自分に呆れたところで、現にそんな姿の青島が目の前にいるわけで。
「室井さん?」
反応のなくなった室井に、青島が不安そうに声をかけてくる。
室井は眩暈を起こしそうだった。
青島の呼びかけには答えず、掴んだままの青島の手を引く。
無言でソファーに導くと、そのまま押し倒した。
「む、むろいさん?」
「イタズラ、しに来たんだろ?」
「そう、ですけど・・・あの、この体勢だと」
イタズラされるの俺じゃあ、と呟いた青島の唇を室井は自分のそれで塞いだ。
押し倒されているのだから、青島の言っていることは間違いじゃない。
しかも、そのまま好き放題に室井に唇を吸われている。
舌を絡めて深く貪ると、青島が室井の背中を叩いた。
「・・・っ・・・・・・ん・・・ちょ、ちょっと・・・」
息継ぎの合間に非難の声が上がるが室井は気にしない。
もとい、気にしていられない。
「・・・イタズラ、したかったらしていいぞ」
青島のシャツのボタンを外しながら言うと、下から当然の如く睨まれる。
「・・・で、きるわけっ・・・」
「そうか?できないこともないだろ?」
しれっと言い返すと、ムッとしたのか青島に首筋を噛まれる。
「っ」
反射的に短い声をあげると、青島はニヤリと笑った。
「本当だ、出来ないことないっすね」
そう言って、ペロリと噛んだ後を舐められる。
そんなことを猫耳をつけたままの青島にされたのだから――。
火に油を注ぐとは、このことだ。
室井は青島の肩を掴んでひっくり返すと、背中から覆い被さった。
「ちょ、室井さんっ!これは卑怯っ・・・」
「なんでだ?」
「イタズラ、できな・・・っ」
シャツを剥いで、剥き出しになった背中に唇を落とすと、青島が息を飲んだ。
「・・・後で、いくらでもさせてやる」
耳元で熱っぽく囁くと、青島の背中が震えた。
肩越しに振り返った青島と視線を合わせると、堪らず唇を寄せた。
キスする直前に青島が零す。
「絶対ですよ・・・」
青島がイタズラできたのかどうかは、二人しか知らない。
END
(2004.10.31)
というわけで、「ハロウィン+猫耳」ネタです。
今しか出来ませんね(笑)
室青メールから派生した小話で、BBSや拍手で妄想を分けて頂きまして突発的に書きました。
言わなくても分かりますか?(笑)
本当にギリギリアップでしたね・・・。
数日間はさらしておこうと思います(^^)
しかし、すみれさんの存在は便利だなぁ・・・。
腐女子の願望を叶えてくれます(大笑)
2005.3.26
ふと思い出して、再アップです(笑)
TOPから飛べるようにしてあった小話だったので、下げてからすっかり忘れておりました。
季節外れに再アップしてすみません;