■ ヴァンプ小話(16)
暗い寝室で目を覚ました。
外は明るいだろうが、室井にしてみればまだ真夜中の時間帯。
何故目が覚めたのか、考えるまでも無かった。
肩で息をしている青島が、室井の隣で半身を起こしていた。
室井から見えるのはその背中だけで、表情は見えなかった。
青島は極希にだが、睡眠中に魘される。
今日みたいに跳び起きることもあれば、散々魘されてそのまま死んだように眠ることもある。
どんな夢を見ているのかは知らないし、興味も無い。
過去の幻影を夢に見ているにしろ、現実の恐れを夢に見ているにしろ。
青島にとっては苦痛でしかないことだ。
室井が知ったところで、救ってやれない。
他人を救うなど、他人に出来ることじゃないのだ。
青島の揺れる背中を見つめながら、思った。
―俺にしてやれることなど、何もない。
救ってやれないのなら、手を伸ばすことに何の意味もない。
室井は目を閉じた。
「はっ…はぁ…」
何とか落ち着こうとしているのか、荒い呼吸が耳に付く。
身震いでもしているのか、背中に小さな振動を感じた。
それから、ぎゅっとシーツを掴む音。
「…くそっ…」
いつまでも整わない呼吸に奥歯をキツク噛んだ。
目を瞑っていても、痛みを耐える青島の顔など容易く浮かぶ。
―それならば、目を開けていても一緒だろう。
室井は遠慮なく身体を起こして青島の腕を掴んだ。
ぎょっとして振り返った青島の顔は、青白かった。
「むっ、室井さん?起きて…っ」
酷く狼狽している青島に構わず、そのまま自分の方に引っ張った。
ろくに青島の顔も見ずに腕に抱きこむと、再び横になる。
「…・室井、さん?」
困惑している青島の頭を抱え込み、室井は言った。
「寝ろ」
やや暫くして、腕の中の青島が震えた。
「…アンタって…ふふっ…」
何が楽しいのか笑っているらしかった。
―笑いたければ、勝手に笑っとけ。
室井は気にもせず、そのまま目を閉じた。
ふと青島の腕が室井の寝巻きを掴んだ。
相変わらず青島は、室井の腕の中で揺れている。
「…っ…うっ…」
小さな嗚咽に、いつまでも笑っていたわけじゃないことに気が付いたが、室井は目を開けなかった。
他人が他人を助けるなんて、出来ないんだ。
ましてや。
人じゃない俺が、人である青島を救うなど。
人を糧に生きている俺が。
吸血鬼が。
人間を。
救えるわけがない。
奪うだけで、何一つ与えられないのだから。
室井はキツク青島を抱きしめた。
無理なのは分かっているんだ。
だけど、叶うなら。
青島だけは。
この手で救いたいと思ったんだ。
えー…物凄くフィーリングで書いております(おい)
青島君の過去に何があったんだろう…(おいおい)
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