■ ヴァンプ小話(8)
室井は時々、青島が本当に動物なんじゃないかと思う。
最近めっきり人のベッドに侵入して寝る癖がついてしまった青島が、ベッドの端で丸くなって眠っている。
その姿を見て、また思う。
青島の寝姿は、外敵から身を守っているように見えるのだ。
大きなベッドだから青島が隅で丸くなって寝ていたところで、邪魔にはならない。
だから、気にせず室井はベッドに横になる。
しばらくの間、青島に背を向けて寝ようとしていたが、どうにも眠れない。
身体の向きを変えると、肘をついて青島を見る。
ベッドの端っこでブランケットを被り丸くなっている姿は、猫のように見えた。
「……なんだって、いつも丸まってるんだろうな」
窮屈じゃないのだろうか。
室井に遠慮しているのなら、ベッドに上がってはこないだろう。
大体ソファーで寝てたって、いつも小さく丸くなって寝ている。
単なる癖なのかもしれないが、どう考えたって窮屈だ。
ブランケットの隙間から見える無防備な寝顔を見つめる。
室井はしばらく考えてから、身体を起こした。
小さくなって眠っている青島の姿を見ると、室井のほうが落ち着かなくなってくる。
「俺の部屋で寝ていて、何から身を守る必要があるというんだ」
寝ている青島の腕を引っ張って引き寄せると、自分の腕の中に収めてしまった。
そんなふうされても起きないのだから、別に緊張しながら寝ているわけではないだろう。
室井は腕の中のやけに暖かい身体に、妙な満足感を感じた。
室井が青島を抱きしめているわけだから、必然的に青島の身体が縮こまることはない。
少しだけ青島が身じろいだ。
起きたかと思ったがそうではなく。
室井の胸に擦り寄って、穏やかな表情を浮かべている。
どうやら寝やすい位置が定まったらしい。
本当に動物のようだ。
室井は苦笑すると、青島の後頭部に手を回し、そっと撫ぜた。
青島が丸くなって眠っていようと、それが窮屈であろうと、室井には関係がない。
室井が窮屈になるわけではないから、勝手にすればいいと思う。
そう思っているくせに、小さくなって眠る青島の姿を見ていると、落ち着かなくなる。
―保護欲なんてものが、俺にもあるんだろうか…。
急激に襲ってきた眠気に抵抗することなく瞼を閉じながら、室井は思った。
ヴァンプ室井、父性の目覚め…(違う)
template : A Moveable Feast