■ ヴァンプ小話(7)


「おい」
「はい?」
「邪魔だ」
「すいません」
「重い」
「すいません」
「どけ」
「嫌です」
「……」
ソファーに座って映画を見ていた室井は、眉間に皺を寄せる。
青島は室井の膝の上にいた。
室井の膝を跨いで腰を下ろし、両腕を首に回し、その肩に顔を埋めていた。
子供が親に抱っこされているような格好だ。
何故こんな格好になったのか、室井にはいまいち分からない。
室井が映画を見始めた時、青島は床の上で寝そべって煙草を吹かしていた。
それが、気が付けば人の膝の上に乗り上げて、室井にべったり。
「…青島」
「すいません」
謝るが、一向に退けようとはしない。
―主人に乗り上げるペットがいるか?……いるな、ここに。
半ば呆れ気味に室井は溜息を吐いた。
邪魔くさいし、重たいし、鬱陶しい。
室井が本気で怒れば、青島は項垂れて離れて行くだろう。
そうしても良いのだが、室井はもうどうでも良くなってきた。
重いのは間違いないが、吸血鬼の室井にとってはそれほど苦になるものでもない。
―人恋しくでもなったか。
諦めた室井が青島の背中に手を添えると、弾かれたように青島が顔を上げた。
訝しげな室井を見つめて、嬉しそうに微笑んだ。
そして、軽く室井の唇を奪う。
室井が目を見開いて青島を見つめると、やんわりと微笑んだまままた肩に顔を埋めてきた。
ゴロゴロと懐かれて、室井は青島を抱えたまま身体の向きを変えた。
そのまま青島をソファーに押し倒す。
「わっ……む、室井さん?」
「暇なのか?」
目を丸くしている青島を見下ろしながら尋ねると、青島は返答にちょっと詰まる。
「ええと…」
「遊んでやろうか」
それには、青島は即答した。
「遠慮します」
「何で。暇なんだろう?」
「だって、室井さん」
「ん?」
「ヤラシイ顔してる」
室井は微笑した。
「当たり前だ」
青島の耳元に唇を寄せる。
「ヤラシイことするつもりなんだから」
耳元まで赤くなった青島の顔を満足げに見つめて、触れるだけのキスをする。
男相手にその気になる性癖は持ち合わせていなかったはずだが、どういうわけかその気になった。
―映画はさして面白くないし、こっちの方が面白そうだし。
『こっち』とは青島のことだ。
あんな軽いキスでその気になるほど室井は飢えているわけではない。
となると、その気になった原因は青島自身にあるのだろう。
真っ赤な顔をした青島が何か言いたげに口をパクパクさせていたが、やがて口を閉ざした。
そして、室井の首に腕を回してくる。
素直なその態度に室井はちょっと眉を吊り上げた。
「おい、別にヤらなくても、追い出したりしないぞ」
「わ、分かってますよ!」
「…?じゃあ、何でそんなに素直なんだ」
「……イヤじゃないからに決まってんでしょ、そんなの」
そりゃあ、そうだ。
目からウロコが落ちるとはこのことである。
思ったよりも分かりやすい返事で室井は驚いたが、やがて笑い出す。
「そうか、それなら遠慮なく」
「遠慮する気なんて、あったわけ?」
「どうだかな」
何か言いたげに開いた青島の唇を、室井は自分の唇で塞いだ。


お互いにまだまだ知らない一面があることを知った日だった。











室井さんが強気だ!


まだまだ青島君を「ペット」っぽく書こうとしていた努力の痕が見えます(笑)






template : A Moveable Feast