■ ヴァンプ小話(6)
室井が書斎に篭ると、しばらくは出て来ない。
昼夜の感覚に乏しいらしく丸一日でも平気で出て来なかったりする。
室井の身体を心配しないではないが、吸血鬼は普通の人間とは身体の作りが違うらしいので、青島には何も言えなかった。
「邪魔をするなよ」と言われているので、青島は大人しく寝室で一人眠っていた。
いつものようにソファーの上で丸くなって、毛布を被っている。
だが、中々睡魔は訪れない。
しばらくもぞもぞと動いていたが、やがて毛布から顔を出した。
「眠れない…」
室井と、もう二日は顔を合わせていない。
さすがに一度も書斎から出て来なかったわけではなくて、青島が寝ている間に風呂に入った形跡もあった。
眠れない原因が寂しいからだなんて認めたくはないが、眠れないこともまた事実である。
青島は諦めて寝室を出た。
足音を立てないように気をつけながら書斎の前まで行って立ち止まる。
用事はない。
だからノックは出来ない。
邪魔をするなと言われているのだ。
だけど立ち去れ無い。
どうしようか迷ってドアの前でうろうろしていると、不意にドアが開いた。
「何か用か」
不機嫌面の室井に睨まれる。
しまったと思ったが、もう遅い。
青島は慌てて謝った。
「すいません、足音うるさかったです?」
「何か用かと聞いてる」
取り付く島も無い室井に、青島はしゅんとしてしまう。
室井の邪魔をしておいて、まさかただ顔が見たかっただけとは言えない。
寂しかっただけとは口が裂けても言えなかった。
「すみませんでした…」
うなだれて立ち去ろうとすると、室井に腕を掴まれる。
驚いて振り返ると、不機嫌面のままの室井に引っ張っられて、書斎に招き入れられた。
「む、室井さん?」
「外でうろうろされても邪魔だから、ここにいろ」
言われて青島は目を丸くした。
室井は青島の返事は聞かずに、さっさとデスクに戻っていく。
デスクの上には原稿用紙のようなものが見えた。
書き物をしていたらしい。
それが室井の仕事なのだろうか。
そういえば室井が何で生計を立てているのかすら青島は知らない。
この家に置いてくれて室井がいてくれるのならば、室井が何であろうと何をしていようと青島には関係が無かった。
室井が人で無いことすら、どうでも良かった。
「ソファーでも床でも、好きなとこに座ってろ。出たくなったら勝手に出ていけばいい」
ぼうっと室井の背後に立っていると、そう言われる。
青島は声を立てずに微笑んだ。
素っ気ない室井の言葉だが、いつも青島の好きにさせてくれる。
青島はソファーに腰を下ろしてから、横になった。
「それって、室井さんの仕事?」
返事はないかも知れないと思いつつ声を掛けてみると、少しの間の後に返事があった。
「……ああ」
仰向けだと落ち着かなくて、また丸くなってみる。
やはりこの方が落ち着く。
あれほど遠ざかっていた眠気が猛スピードで戻ってきたような気がした。
「何を書いてるんですか?」
とろんとした目で青島が尋ねると、やはり少しの間を置いてから室井が振り返った。
そして青島の顔を見て苦笑する。
既に眠そうな顔をしている青島が可笑しかったのだろう。
「…また今度教えてやる」
「そうですか…」
「いびき掻くなよ」
「…ぁい…」
そう答えるのとほぼ同時に瞼が落ちた。
青島は起きたら忘れてしまうような、温かくて優しい夢を見た。
青島君が犬っぽい…今後どんどん図々しくなって参ります(笑)
余談ですが、まだ一度もお話の中に出てきませんが、
室井さんは物書きをして生計を立てている設定でした。
小説家かフリーライターか…その辺りは決めておりませんが、
どこからきたイメージかといえば、
「インタビューウィズヴァンパイア」だったのですが、
それは私の勘違いでした(おいおい)
あれはブラピがインタビューされてるだけで、
何か書いてたわけじゃないんですね。
うーん…意味の無い設定になってしまった…(笑)
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