■ ヴァンプ小話(5)


室井が先日拾ってきた捨て犬は、相変わらず室井の家にいた。
室井の家が気に入ったのか、野良に戻って食いっぱぐれるのが怖いのか。
どちらにせよ、面倒な狩りに出掛けなくても食料が手に入ることは、室井にとっても悪いことでは無かった。
しかも、青島の血はかなり良質だ。
勿論不健康な人間よりも健康な人間の血の方が美味いに決まっているが、それ以外にも本人の資質や相性というものもある。
青島の資質は申し分ないし、室井との相性も良かった。
室井が青島の血を美味いと感じるのが、その証拠だ。
室井は思わぬ拾いものをしたと思っていた。
ふと青島を見ると、部屋の隅で膝を抱えて座り、煙草を吹かしていた。
別に拗ねているわけでも、いじけているわけでもない。
青島の癖らしい。
座る時も寝る時も、たいてい大きな身体を丸めるようにしている。
窮屈そうに見えたが、本人の好きにさせていた。
ソファーに座り何となく青島を眺めていると、視線に気が付いた青島が室井を見て首を傾げた。
目で何か用?と聞いてくるから、室井は思い立って手で「おいでおいで」をする。
それを見て、やっぱり首を傾げた青島が煙草を消して素直にやって来た。
「室井さん?」
傍に来た青島の腕を掴んで引き寄せる。
青島が小さな悲鳴あげるのを聞きながら、その首筋に牙を立てた。
「…っ!」
痛みはそれほどないはずだが、まだ慣れないらしくキツク目を閉じてその衝撃をやり過ごしている。
「……ぅあ……」
―これは結構……艶かしいな。
意外な発見をしたような気がしながら、青島の血を味った。
―やはり、美味い。
噛み痕を軽く吸ってから唇を離すと、青島が腕の中に落ちてくる。
「っと……吸いすぎたか?」
「だ、いじょうぶ……ですけど」
室井に支えられながら何とか体勢を整えた青島が、赤い顔をして睨んでくる。
「いきなり、噛まないで、くださいよ」
少し呼吸が乱れている。
室井は意地悪げに微笑した。
「飼い主がペットにお伺いを立てるのか?」
からかうように言うと、青島はムッとしたように膨れっ面になった。
しかし、室井の言うことに対して反論があるわけでもなかったらしく、
「せめて『いただきます』くらい言ってください」
と、言うから、室井は小さく吹き出した。


―変なヤツだ。
そう思ったが、青島がいる今の状況は想像以上に悪くなかった。











室井さんがまだまだ俺様…
化けの皮が剥がれる前ですね(笑)






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