■ ヴァンプ小話(1)


カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中。
ソファーにゆったりと座った室井は、新聞を読んでいた。
普通の人であれば小さな活字を読むのは困難である暗さだが、室井には苦にならない。
微かに目が金色を帯びている。
「…こんな真っ暗な中で、字なんか読めるんですか?」
ドアが開き、寝室から青島が顔を出した。
室井は顔も上げずに、「ああ」とだけ返事を返す。
「カーテン、開けないの?」
そう聞かれて、初めて室井は青島に視線を向けた。
「俺を殺す気か?」
「……アンタ、本当に吸血鬼なのか?」
疑わしげな視線を室井に寄こす。
「そんな嘘を吐いて、俺になんのメリットがある」
室井は無表情に青島を見つめた。
「そりゃ…そうだけど…」
「もう、忘れたのか?」
「え?」
室井は立ち上がって、青島の傍に歩み寄る。
そして、少し怯えた表情を見せる青島の腕を掴んだ。
「な、何」
そのまま引き寄せると首筋に唇を寄せた。
そこには3日前に室井が付けた痕。
室井の八重歯の痕がくっきりと残っていた。
それを舌でなぞってやる。
「ただ噛んだだけじゃ、無かっただろ…?」
痕を軽く吸ってから耳元で囁くと、青島が背中を震わせた。
身体はちゃんと覚えていたのだろう。
チクリとした痛みと、身体から力が抜けていく感覚を。
「……っ」
息を飲んで、身体を硬直させる。
室井が至近距離でちらりとその表情を覗き見ると、耳まで赤面していた。
ふっと、興味を失ったように室井は青島の身体を離した。
そのまま青島はヘタリと床に座り込んだ。
それに構わず、室井はソファーに戻る。
「飯が食いたかったら、自分で用意しろ」
冷たく言うと、再び新聞を開く。
「…この、サド。鬼畜。鬼。悪魔」
ぶつぶつと聞こえてくる青島の文句に、室井は眉を吊り上げる。
振り返って青島を見ると、ヘタリこんだ体勢のまま室井を睨んでいた。
ある意味根性があると言える。
「……吸血鬼だと言ってる」
やっぱり無表情に言うと、青島がべーっと舌を出した。


出会いは3日前。











室井さんがセクハラオヤジ…(笑)






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