「いつも首元、寒そうにしてたから」
「そういや、室井さん。それで俺の姿勢が悪くなるの、気にしてましたもんね」
「首竦めてると背中曲がるからな・・・マフラーで治るか分からないが」
「あはは・・・気をつけます。ん?これは・・・」
「携帯灰皿だ。この前、そろそろ新しいの買わないとって言ってたろ」
「あ、覚えててくれたんすね」
「・・・気にいるか分からないが」
「や、イイっす。嬉しいっす」
「これもセットだ」
「あ?禁煙補助剤?・・・・・・なんの嫌味ですか」
「い、いや、そんなつもりではなかったのだが」
「ま、そうでしょうね。室井さんなら、はっきり言うもんね」
「携帯灰皿を買ったら、何となく喫煙を進めてるみたいで嫌な気分になったから・・・つい」
「なるほど、ね。うん、まあ、努力は、してみますよ?」
「・・・・・・本当だな?」
「う・・・多分、ね?・・・・・・あ?サンタのブーツ?」
「季節柄なんだろうが、コンビニに寄ったら売ってたんだ」
「コンビニまで寄ったんですか?」
「寒かったから缶コーヒーを買いに」
「はぁ・・・」
「さすがにいらなかったか?」
「いや、そんなことは・・・なんか懐かしいなぁ〜」
「そっか」
「あれ?手袋?」
「あちこち回ってるうちに、思い出したんだ。マフラーを買うなら手袋もあった方がいいんじゃ
ないかと・・・」
「はぁ〜」
「別々に買ったからブランドも一緒じゃないと思うんだが」
「あ、もう、そんなことは全然」
「君に似合うんじゃないかとは思ったんだが」
「・・・・・・・・・どうっすか?」
「・・・良かった、似合う」
「ははっ・・・んー・・・あ、お酒」
「それは・・・」
青島が嬉しそうに袋から取り出した酒瓶を見て、室井は何故か少し気まずそうな顔をした。
それに気付かない青島ではない。
「越乃寒梅♪」
「あ、ああ・・・日本酒好きだろ・・・」
「はい〜大好きっす」
「・・・・・・洋酒は、どれが美味いのか良く分からなかったし」
「室井さん」
「うん?」
「新城さんと張り合ったでしょ」
室井の眉間に皺が寄った。
図星だと分かりやすく白状してくれる。
口数の多くない室井だが、変わりに眉間が色々教えてくれるのだ。
慣れてそれが読み取れるようになると、結構楽しい。
もちろん室井には言えないが。
「・・・・・・すまない」
渋い顔で謝るから、青島は苦笑した。
「いや、謝って貰う必要はないっすけどね〜」
むしろ室井の嫉妬は嬉しかった。
青島からしてみれば無意味な嫉妬でバカだなぁとは思うが、そこが愛しくもあった。
そんなことをしてくれなくても室井の愛情は感じているが、日頃理性的な分だけ新城に対して剥
き出しにした嫉妬心は単純に嬉しい。
やっぱり室井には言えないが。
「プレゼントで張り合うなんて、馬鹿げてたな」
室井が自嘲気味に呟いた。
確かにその通だ。
人の気持ちは物や金で動かせない―もちろん例外もあるが。
だけど、室井の行動はそれとは違う気がした。
そもそも、青島の気持ちは最初から室井に向いているのだ。
今更モノで釣る必要は無い。
青島はまだ空けていない包みを眺める。
「室井さん、俺を喜ばせたかったんでしょ?」
「それは・・・・・・もちろん」
「なら、馬鹿げてるってことはないでしょ」
俺物凄い喜んでるし、と呟きながらまた一つプレゼントの包みを開ける。
リボンの形をしたシールが貼ってある小さな袋に入っていたのは、爪切りだった。
青島は思わず、笑みを零した。
何も言わずに笑ったまま視線を向けると、室井はなん
「君、良く爪切り無くすだろ」
室井が遊びに来ている時に、何度も「爪切りがない」と言っていたらしい。
良く覚えてるものだと思う。
青島は手の中の爪切りをぼんやりと見つめた。
「実はどれかの袋には、耳かきも入ってる」
自分をやっぱり馬鹿だと思っているのか。
重苦しい口調でそんなことを言うから、青島は顔を上げる。
室井は難しい顔で、未開封のプレゼントの山を漁っていた。
耳かきが入っているのだと思われる袋を差し出してくる室井を見て、堪らず吹き出した。
「あはっ・・・も〜、本当に・・・」
「プレゼント・・・・・・とは言えないな」
自分でも可笑しかったのか、室井も苦笑を浮かべた。
「他にも似たようなプレゼントが・・・」
「あ、待って」
青島は慌てて室井の言葉を遮った。
「開けるの楽しいから、それ以上は言わないでください」
青島は室井の手から、差し出された袋を受け取る。
開けるとやっぱり耳かきが入っていた。
これの理由は間違いなく、爪切りをくれた理由と一緒だ。
「そんなに楽しみにされたら、がっかりさせるかもしれない」
室井は少し困った顔で呟いた。
爪切りやら耳かきやらをプレゼントとして贈ってしまった自分を恥じているのかもしれない。
青島は首を傾げて、またプレゼントに手を伸ばした。
「なんでです?」
「なんでもなにも・・・」
「室井さんのプレゼント、開けるの楽しいですよ?」
リボンを解いて箱を開けると、中にはパスケースが入っていた。
「しかし・・・・・・それは、君が定期券を剥き出しのまま持ち歩いていたのが、何となく気になった
から」
やっぱり良く見てくれてるなぁと思いながら、青島は微笑んだ。
「モノ自体嬉しいですが、選んでくれたことに理由があるから、それを考えるのも楽しいです」
「・・・・・・何も考えずに買ったものもあるぞ」
そう言って室井が差し出してきた袋を受け取る。
ビニールの袋の中に、更に紙袋が入っている。
包装はえらく簡易で紙袋に貼ってあったテープを剥がすと、すぐに中身が見えた。
青島はちょっと目を見張る。
「これって・・・・・・サボテン?」
室井を見ると、小さく頷いてみせる。
「プレゼントなら花もありだろうと思って花屋も覗いたんだ」
「それでサボテン?」
「枯れにくいと聞いた」
言外に含まれる「それなら君でも枯らさないだろう」という声が聞こえた気がした。
青島は喜ぼうかいじけようかちょっと迷いながら、袋から鉢植えを取り出す。
高さ20センチくらいの鉢植えだった。
サボテンに小さな蕾がついていて、青島は少し驚いた。
「あれ?これって花咲くんですか?」
「みたいだ。土が乾いたら、霧吹きで水をやって育てるんだそうだ」
「へぇ・・・・・・あ、うちに霧吹きなんて」
「それも買ってきたから心配ない」
爪切りを買ってくる男だから、そんなことに気がつかないわけもなかった。
さすがと思いつつ、笑みが零れる。
「ありがとうございます。どんな花が咲くのかなぁ」
「どんなだろうな・・・」
「楽しみです」
それは素直に伝えたら、室井は小さく笑った。
その笑顔に、ひっそりと思う。
―花は一倉さんのせいかな・・・。
室井自身気付いていないようだが、室井が花屋に寄ったのは、一倉のバラが頭にあったからでは
ないだろうか。
新城に対する嫉妬心で気まずい思いをしている室井に、追い打ちをかけるつもりはないので、あ
えて突っ込もうとは思わなかった。
だけど、自分の中で増した愛しさだけは、伝えておきたかった。
青島は自分と室井との間にあったプレゼントやら包装紙やらを、手で掻き分ける。
四つん這いになると、膝をすったまま室井に近付いた。
急に接近してきた青島にきょとんとしている室井の唇を奪う。
ちゅっと軽くキスをして一度離れると、まだきょとんとしている室井に笑みを零して、もう一度
近付いた。
また触れる。
ただ触れるだけのキスを繰り返す。
室井も動かずに、黙って青島の好きにさせてくれた。
5・6回繰り返して、漸く離れる。
「・・・青島?」
少し熱の宿った室井の眼差しに、やんわりと微笑む。
「ありがとう、室井さん」
「いや・・・・・・気に入ったもの、あっただろうか」
「そりゃあ、もう」
どれもこれも、と思う。
言葉にすると嘘臭いが、どれもこれも青島への色んな想いがいっぱい詰まったプレゼントだ。
気に入らないわけがない。
嬉しくないわけがない。
やっぱりこんなに散財させてしまったことは申し訳なく思うけど、室井が望んでしてくれたこと
だというこ
青島は素直に喜んでおけばいいのだ。
また目の前の唇に触れて、悪戯っぽく笑う。
「無駄遣いじゃ、なかったっすね」
先の室井の言葉を引用してやると、室井はちょっと目を瞠って、それから小さく笑みを零した。
「そっか」
室井が両手を伸ばしてくるから、素直にその腕に納まる。
ぎゅっと抱きしめられて、額に唇を押し付けられた。
室井の背中を抱き返しながら、もしかしたら・・・と思う。
もしかしたらと思いつつも、いくらなんでも単純すぎないか俺、
思いながら、室井の肩に顔を埋めた。
「・・・ありがと、室井さん」
「こちらこそ、ありがとう」
「何が?」
ちらりと室井を見たら、室井が幸せそうな顔で笑った。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
青島は確信した。
―きっと、今が幸せの絶頂だ。
幸せそうな青島を見て、室井が幸せそうに笑う。
その室井を見て、青島は心底幸せだと思うのだ。
だとしたら。
二人でいることが幸せに繋がっているのだとしたら。
きっと、絶頂は何度でもやってくる。
この先、きっと。
数え切れないほど。
それを思うだけで、青島は幸せだった。
END
(2005.12.28)
リカさんのお話に、まんま乗っかってみました・・・が、こんなデキで申し訳ないです!
えーん・・・萌えネタが生かせてないです・・・ごみんなさい。リカさん(涙)
青島君が幸せなら嬉しいね♪というお話でした・・・(笑)