笑顔の行方
青島は室井の部屋でとんでもないものを見つけた。
リビングの収納ラックの上に鎮座している写真立てだ。
いや、写真立ては、別に構わない。
何の問題も無い。
問題があるのは、飾られている写真の方だ。
青島はを思わずそれを手に取った。
「ちょ、室井さんっ、何考えてんですか!」
叫ぶと、何事かと慌てた室井が傍にやってくるが、青島の手の中を見て力を抜いた。
「それがどうかしたのか?」
平然と聞き返されて、青島は赤面しながらまた叫んだ。
「どうって、それはこっちの台詞ですよ!」
青島は室井に写真立てを付きつけた。
「お、おおお俺の写真なんて飾らないでくださいよっ」
写真立てに入っていたのは、もみじを手にした青島のアップの写真だった。
そんなものをリビングに堂々と飾っているのだ。
青島が怒鳴りたくなる気持ちも分かるだろう。
室井は青島の手から写真立てを取り上げながら、首を傾げた。
「良く撮れていたから飾っただけだが」
「だけって・・・リビングにそんなもん飾らないでくださいっ」
「心配しなくても、君以外の人がここに来ることはまずない」
「そういう問題じゃないですっ」
「・・・?じゃあ、どういう問題なんだ?」
聞き返されて、返事に詰まる。
もし万が一誰かに見られたらどうするんだとか、常識の範疇で突っ込みたいこ
れよりも何よりも、青島自身が照れ臭いのだ。
室井が自分の写真を写真立てに入れて飾っている。
つまり飾るくらいだから、たまには眺めたりするわけだ。
青島はそんな想像をして、耳まで染めた。
「い、いいから、やめてくださいっ」
写真立てを奪おうとすると、室井は眉間に皺を寄せて抵抗する。
「何故だ?いいじゃないか、君の写真だぞ」
確かに他の人の写真なんぞ大事に飾られたりしたら堪らないが、だからと言って、自分の写真な
らいいというわけでもない。
しかもかなりのアップで、かなり楽しそうである。
それも無理はなかった。
レンズを覗いていたのは、室井である。
楽しくなかったわけがない。
室井に向かって微笑んでいる写真と思えば、余計に恥ずかしかった。
だが、室井は一向に分かってくれない。
「良く撮れてる。問題ないだろう」
「だから、そういう問題じゃないんだってばっ」
「折角可愛く写っているのに」
「かわ・・・っ」
青島は真っ赤になって絶句した。
青島には何が可愛いのか全く分からないが、室井が可愛いと形容したのは室井に微笑んでいる青
島である。
真顔でそんなことを言われて、照れるなという方が無理がある。
真っ赤になっている青島を見て、室井は思わずといった感じで笑みを零した。
「笑わないっ」
眉を寄せて、思わず突っ込みを入れる。
「すまない。でも、この写真は飾っておくぞ」
何故か頑なな室井に、青島は奥歯を噛んだ。
室井が頑固なのは、青島も良く知っている。
青島も人のことは言えないが、室井も相当な頑固だ。
一度こうと決めたら、それがどんなことでもそう簡単に翻さない。
知っているだけに、説得の難しさを悟ると、苦肉の策で妥協案を考え出した。
「・・・じゃあ、せめて、リビングはやめてください。寝室に飾って」
青島の妥協案に、不服そうに眉を寄せながら考え込む室井。
反論の声を聞く前に、青島は付けたした。
「じゃないなら、それ、意地でも奪い取って、写真立てごと壊しますよ」
じっと室井を睨む。
青島も本気だ。
青島が有限実行することは、室井も良く知っている。
暫く思案していたが、室井は諦めたように頷いた。
「分かった。君も妥協してくれているのだから、俺も折れよう」
「俺が来ないときも、リビングに飾ったりしないでくださいよ」
「分かってる。約束は守る」
きっぱりと言ってくれたので、青島は漸く力を抜いた。
室井が約束してくれれば、とりあえず間違いは無い。
「・・・そんなに、照れることないだろう」
ちらりと青島を見て苦笑する室井に、青島は溜息を吐いた。
「よりによって、そんな写真選ぶんだもん」
「良く撮れてると思うが・・・」
「その話はもういいです」
あんな会話を堂々巡りするのはごめんである。
青島は矛先を変えた。
「・・・それより」
「うん?」
「どうせ飾るなら、なんで一緒に写った写真、飾ってくれないんですか」
ちょっと唇を尖らせて、可愛らしい文句を零した。
人目につくことがないと主張するのならば、どうせなら一緒の写真を飾ってくれれば良かったの
だ。
それなら青島だって、ここまで反対しない。
というか、むしろちょっと嬉しかったかもしれない。
だが、室井は「なんだそんなことか」と平然と言ってのけた。
「邪魔なものがあるより、君一人のアップの方がいいからに決まってるだろう」
聞かなきゃ良かったと青島が思ったのも当然だろう。
いつもキリっとしている室井だが、二人きりの時はたまにどうかしちゃったんじゃないかと思う。
愛されていることは、凄く嬉しいのだが―。
青島は肩を落として深い溜息を吐いた。
これ以上は何を言っても無駄と悟る。
だけど一言だけ、言ってやらねばならない。
「アンタにとっては邪魔でも、俺にとっては必要不可欠なんですよ」
END
室井さんが、イタイ・・・・・・(むしろ、お前だ)
リカさん、ごめんなさい・・・(^^;