落葉
サクサクサク。
少し先を歩く青島の、妙に軽い足音を聞きながら歩く。
サクサク。
カサカサ。
わざとに狙って踏み付けているのは、落ち葉だ。
道路の両脇に並ぶ銀杏並木からの落とし物。
カラカラに乾いた落ち葉は、踏むと軽い音を立てて簡単にバラバラになる。
どうやら、それが楽しいらしい。
―子供みたいだな。
そう思いながら、そんなところすら微笑ましく感じる。
室井はひっそりと笑った。
「すっかり、秋ですね〜」
振り返らずに、青島が言った。
「そうだな」
「なんか、物悲しいですね〜」
すっかり寂しくなってしまった銀杏の木を見上げながら零す。
「そうか?」
「寒々しいっていうか、いや、実際寒いんですけど」
「俺はそうでもないが」
肩越しに振り返った青島が、ちょっと笑ってみせた。
「秋田の人ですもんね。寒さには強いですよね」
「そうだが・・・それだけじゃなくて」
「え?」
ちょっと立ち止まって、室井が追い付くのを待っている青島。
その隣に並ぶと、室井は真顔で言った。
「君がいるから寂しくないし、寒くもない」
一瞬の間の後、青島の頬が朱に染まる。
それを見ながら紅葉みたいだと思って、室井は微笑した。
青島は室井から視線を逸らすと、また歩き出す。
「そんなの、俺だってねぇ・・・」
ぶつぶつ言いながら歩く。
サクサク、カサカサ、サクサク。
先ほどよりも早いペースに、室井は苦笑した。
どうやら照れさせてしまったらしい。
早歩きの青島の後ろを、室井はのんびりついて行く。
相変わらず、青島は俯きがちに、落ち葉を踏んで歩いている。
少し離れた背中が不意に立ち止まった。
くるりと振り返った青島が手招きして寄越す。
「遅いですよ、室井さん。置いてきますよ〜」
苦笑しながら、室井も早歩きで追い付く。
また隣に並ぶと、青島は今度はゆっくり歩き出した。
「ちょっと、遠回りして帰りません?」
「え?」
「俺も寒くないから・・・もう少し一緒に歩きましょ」
言外に、室井と同じ気持ちだと教えてくれる。
少し目を見張った室井に、青島は照れ臭そうにはにかんでみせた。
その顔がまた可愛かったから、室井は自然と微笑んだ。
「そうだな・・・たまには遠回りするのもいいかもしれない」
青島と二人なら、寂しい道のりも、寒空の中遠回りすることも、苦ではない。
それすらもきっと、幸せな日々。
ほんの少しだけ、今すぐ家に連れ帰りたいと思ってしまったのは、室井だけの秘密だ。
END
(2005.11.7)
幸せなのは、私の頭かしら・・・(笑)