■ 光在れ


side A


「捜査を立て直す」
会議室に響いた室井の声に、青島は心が震えた。
それは青島だけじゃなかっただろう。
その場にいた全員の胸に響いたはず。
どうあっても無くならない本庁と所轄の溝を、ほんの一瞬だけでも埋めてくれるのは、いつだって室井だった。
叩かれ降格されても室井は本庁で頑張ってくれている。
その姿を見せ付けられるたびに、青島に限らず所轄の刑事は皆、夢を見るのだ。
―信じていれば、いつかきっと。
「捜査員に拘わらず、役職や階級も忘れてくれ」
室井が刑事たちを促す。
誰も一声がでない。
室井が垣根を取っ払ってくれるのなら、まず最初に飛び込んでいくのは青島の役目だった。
「室井さんは現場知ってる俺たちとやろうって言ってるんだ」
刑事たちの表情が動く。
本庁も所轄も、そこには存在しなかった。
沈黙を破った婦警に続いて、続々と声があがる。
皆が自分で考えて、思い当たる現場に向かって行った。
青島と室井が目指した捜査方法が確かにそこにあった。
婦警から聞き出した現場に青島も向かう。
「青島」
ドアに向かった青島に声が掛かった。
足を止めて振り返る。
真剣な表情の室井と目が合った。
「犯人を見つけ次第確保だ」
副総監誘拐事件と同じ過ちは繰り返さない。
室井の強い眼差しに、青島は少しだけ口角を上げた。
ドアを閉めた青島の耳に、室井の声が響く。
『現場の君達を信じる』


青島にとって、室井は唯一の光だ。
深い憤りに悩まされる時も、全てを投げ出したくなる時もあるが、室井がいるから頑張れる。
頑張っている室井がいるから、前に進めるのだ。
だからこそ、室井の期待に応えなければならない。
全ての責任を負う覚悟で、現場を信頼してくれた室井に。


―俺たちも、アンタを信じてるよ。


side M


「痺れるような命令をありがとうございました」
「良くやってくれた」
答えながら、室井は誇らしげに青島を見つめた。
礼を言わなければならないのはこちらのほうである。
いつだって青島の一言が、室井を正しい方へ導いてくれる。
何が正しいのかは分かっている。
室井自身やりたいこともはっきりしているのだ。
だけど、縦割りの警察機構の中では、室井一人では立ちいかない。
身動きが取れなくなってしまっている室井の背中を、青島はいつだって力強く押してくれる。
和久の後姿を見送った後、青島が少しだけ心配そうに言った。
「室井さん、…大丈夫ですか?」
青島はいつも大胆に行動するくせに、室井に迷惑がかかることを気にしている。
覚悟は出来ていた。
青島たち現場の刑事は身体を張るのが仕事なら、室井たち官僚は責任を負うのが仕事である。
室井は自分の判断が正しかったと自信を持って言えるが、警察組織がそれを認めないかもしれない。
その時は室井が責任を取って、処罰を受ければ良いだけのことだ。
室井は微笑を浮かべた。
「事件が解決して、良かったな」
一瞬の間の後、青島が鮮やかに笑った。
「はいっ」


室井にとって、青島は唯一の光だ。
暗闇の中でも、青島だけは室井に光を翳してくれる。
だからこそ、腐った上層部に身を置きながら、自分を見失わずにいられるのだ。
自分の信念は自分だけのものだが、青島との約束は二人のもの。


―きっと、叶えてみせる。君と一緒なら。










END

2005.3.6

あとがき


お客様から素敵な案を頂きまして、何とか書けました。
素敵な案は生かしきれてないし、台詞も言わせてませんが(苦笑)
「光」という言葉に纏わる話にはしたつもりなのですが…どうでしょうかね。

映画の中の台詞は微妙に違うと思います(汗)
どうもすみません…。
どちらも好きなシーンなのに、私の手に掛かるとこんなもんです(失笑)
お互いがお互いにとって支えである関係。
恋人でも友人でも家族でも、素敵な関係だと思います。

恋人である必要性は全く無いお話になってしまいましたが、
この二人が恋人だといいなぁ。



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