■ 相変わらず、かな


外回りから戻った青島は、刑事課の入り口で中を覗き込んでいる真下を見つけた。
何が目的かは良く分かっているが、ネゴシエーターの仕事は良いのかと突っ込みたくもなる。
青島は背後から近づいて、真下の首根っこを捕まえた。
「せ、せんぱぁい」
「せんぱぁい、じゃないよ。何やってのさ、こんなとこで」
「いやぁ、あはははは」
笑って誤魔化す真下に、青島は呆れ顔になる。
「雪乃さんに会いに来たけど、いなかったんだな?」
「あはははは…………、はい」
項垂れる真下に、溜息を吐く青島。
「相変わらずだなぁ…ちょっと、こっちに来いよ」
軽く説教モードに入った青島が、真下を引きずって喫煙所に移動する。
ソファーに真下を座らせると、青島もその横に座った。
「お前ね、仮にもネゴシエーターでしょ」
「失礼な、正真正銘ネゴシエーターですよ」
「なら、得意の交渉術でも使って、いい加減口説いてみなさいよ」
「いや、口説いてるつもりなんですけどね」
聞き流されているというか、先送りにされているというか。
情けないくぼやく真下に、青島も情けない表情になる。
「どどどどうしたら、良いでしょう。先輩」
どんなに出世しても青島の後輩でいる気らしい真下に泣きつかれる。
「どうしたらって…、お前は押しが弱すぎるんだよ」
呆れつつ、真下の手を握る。
ハッタリを得意とする青島が、実演してやることにしたのだ。
「手でも握って、目を見つめて、後は熱っぽく」
それはもう真剣にじっと見つめられて、真下は思わず動きを止めた。
「好きなんだ。俺と付き合ってくれ」
熱っぽい声。
真下がぽかんと口を開けて青島を見つめた。
薄っすら赤面さえしている。
真下の様子に首を捻る青島。
「おい、真下…?」
「あ、いや、あの」
「?」
青島に手を握られたまま動揺する真下に、ますますわけが分からない青島。


「みぃちゃったぁ」


「ヒッ」
「ひえっ」
突然割り込んだ声に、青島も真下も小さい悲鳴を上げる。
振り返ると出入り口にすみれが立っていた。
ニヤニヤ笑いながら。
「青島君が真下君口説いてる〜」
「は?」
青島は一瞬何を言われているのか分からなかったが、意味を理解すると慌てて真下から離れる。
「ちょっと、すみれさん!何言って…」
「うふふふ。室井さんにちくっちゃおう〜」
「!」
青島は一気に青くなる。
一体何をしに来たのか、すみれは笑いながら背を向ける。
その背後に黒い尻尾が見えるのは青島や真下の気のせいではないはず。
「ちょちょちょちょっと!すみれさぁん!」
青島がその後を慌てて追っていく。


一人残された真下。
「…相変わらずだなぁ」
そう呟きながら、思った。


―道を踏み外したら困るから早いところ雪乃さんを口説き落とそう。










END

2004.4.20

あとがき


真青ではありません(笑)
どうせ私の書くものですから、どこまで行っても室青。

真下君が道を踏み外したところで、
室井さんがいる限りどうにもならない気もします(笑)



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