38.「ありえない」












「現場の写真が届きました」

捜査本部にいた室井と新城は、本庁刑事の声に振り返る。

「ご苦労様」

一言声をかけて、室井は刑事から封筒を受け取る。

すぐに開けて、写真をテーブルの上に広げた。

「コーヒー、お持ちしました」

また刑事に声を掛けられて振り返ると、そこには見慣れた所轄刑事が。

「・・・ありがとう」

室井が表情を緩めないように注意しながら返事をする横で、新城が鼻で笑った。

「珍しいな。青島がお茶汲みか?室井さんがいるからか」

「人がいないんですよ。所轄も何かと忙しいものでね」

新城の嫌味なんかではへこたれない青島は、新城に向かってベッと舌を出して言った。

室井は眉間に皺を寄せる。

「ほら、新城。写真を見ろ」

止めても無駄だと分かっているので、さっさと話を先に進める。

「分かってますよ」

仕事を促されれば、新城だっていつまでも無駄話はしていない。

写真を広げて見始める。

が、すぐに手を止めた。

「ひっ」

「・・・?どうかしたか、新城」

今更被害者の写真で悲鳴を上げたりしないだろう、と思いながら怪訝そうに新城を見やる。

多少顔色が悪い。

室井と青島は顔を見合わせた。

「どうしたんすか?」

「・・・なんでこんなに、は、爬虫類の写真があるんだ」

独り言のように呟いた新城に、室井は首を捻る。

「被害者は爬虫類愛好家だと聞いていただろう」

何を今更、と室井が思っていると、新城が何やら慌ててつけたす。

「そ、それは聞いていましたけど。だけど、こんな・・・」

何故だか動揺している新城に首を傾げながら、室井と青島も写真を覗きこんだ。

確かに、被害者の写真のほかに爬虫類やら昆虫の写真が多い。

青島は首を竦める。

「仕方ないんじゃないっすか?この様子じゃ部屋中、水槽だらけっすよ?きっと。」

部屋の様子を写そうとしたら、たぶんこうなってしまったのだろう。

部屋のあちこちを写したらしい写真には、水槽に入った無数の爬虫類やら昆虫が写っていた。

まさか、と思いながらも青島はにやりと笑った。

「新城さん、もしかして」

苦手なんですか?と聞くより先に、新城はバサバサと写真を引っ掻き回した。

「それより被害者の写真は」

「あ、ああ。これがそうみたいだな」

そう言って室井が差し出した写真を手に取って、見て。

たっぷり10秒硬直する新城。

「し、新城さん?」

青島が声をかけると、新城はそのまま後ろに倒れていった。

白目を剥いて。

「新城!?」

「新城さん!?」

室井と青島が再び目を合わせる。

青島は足元に落ちたその写真を手に取った。

そして、見る。

「・・・なんだ」

「・・・やっぱり苦手だったんだな」

室井が呆れ果てたように呟いた。

写真に写っていたのは、被害者。

と、その上に乗っかった巨大な蜘蛛。




「ありえない」

「誰にでも苦手なものはあるってことだな」

「こんな弱点知ってもなぁ」

「青島・・・」

「あ、でも、すみれさんには言わない方が良いですね。新城さん、湾岸署に来れなくなるかも」

「・・・そうだな」

「爬虫類やら昆虫類やらでいっぱいになってるかも」

「・・・・・・・・・そうなったら、俺だって来たくない」

「あははは。俺も嫌です」


























END
(2004.6.3)


新城さんをあまり書いてないなぁと思って書き出したのですけど、酷い扱いですねぇ。
意外性のある人間の方が魅力的よね?っていう、話です(大違)

意外なものが怖かったりすると可愛いと思うのですがどうでしょうか。
新城さんは現実的な人だと思うので、存在がはっきりしないものは怖がらないような気もします。

ああ、それにしても、青島君と室井さんがただの添え物に・・・(笑)