34.「+α」












「夕飯の支度しておきました」

「風呂も沸いてますよ。背中流しますか?」

「マッサージでもしましょうか!」




「眠くなったら、そのまま寝ちゃっていいですからね」

うつ伏せになった室井の背中をマッサージしていた青島が、そう声を掛けてくれる。

確かに気持ちが良いからこのまま寝ろと言われれば寝れそうではあったが、室井は素直に頷けない。

「ちょっと、いいか」

青島に断って、室井は身体を起こす。

「室井さん?」

眉間に皺を寄せた室井に青島が不思議そうに小首を傾げている。

久しぶりにあった恋人が至れり尽くせりで有り難いと思わなくもない。

ないのだが、引っかかる点がある。

「青島」

「はい?」

「俺はそこまで歳じゃない」

「・・・は?」

憮然としていった室井に、青島はますます不思議顔だ。

室井の言った言葉の意味が分からなかったらしい。

「・・・今日が敬老の日だからじゃないのか?やけにサービスがいいのは」

室井がぼそりと言うと、青島は目を丸くした。

それから、声を立てて笑い出す。

「あはははは。きょ、今日が敬老の日だなんて、言われるまですっかり忘れてましたよ!」

笑顔で否定された室井は首を捻った。

「違ったのか・・・」

「違いますって」

「じゃあ、何で今日は良くしてくれるんだ?」

普段の青島が何もしてくれないわけではない。

室井が料理をしたら後片付けは青島がしてくれるし、お互いマッサージしあったりすることはある。

だけど、こんなに一方的に奉仕をされることはない。

しかもこんな日に限って「敬老の日」なのである。

室井が疑っても無理はなかった。

青島は苦笑した。

「それは、単に室井さんが疲れた顔してたからですよ」

また笑ったまま返事が返ってくる。

言われてみれば、確かにここのところ特に忙しかったので、それが顔に出ていたかもしれない。

「少しでも疲れを取ってあげられたらなーと思っただけです。誰も、お年寄り扱いなんかしてませ

んて」

どうやら室井の被害妄想だったらしい。

それが可笑しかったのか、笑い続ける青島に室井も苦笑する。

「笑いすぎだ」

「だって、室井さん・・・。もしかして、気にしてる?」

「うん?」

「もうじき40歳になるって」

そういう青島の目がからかうように笑っているから、室井は思わずむっとする。

「悪いか」

「誰がそんなこと言ってるんですか」

膨れっ面の室井に、青島が苦笑して手を伸ばしてくる。

頬を包まれて、眉間に口付けされる。

「いくつの室井さんでも好きですけどね。今は39歳のアンタが一番好きだよ」

微笑まれて、室井はほとんど無意識に青島にキスをした。

「来年は?」

「もちろん、40歳の室井さんが一番」

「なら、良かった」

もう一度キスをすると、青島からもキスをくれる。

それに気を良くした室井が青島を押し倒すと、青島が小さく声を漏らして笑った。

「やっぱり若いよ、室井さん」

室井の行動を指して言ったのだろう。

それに苦笑して、室井は青島の服に手を掛けた。





「それを、ちゃんと証明しよう」

「充分知ってますよ」

「知らないこともあるだろう」

「まだあるんですか?随分知ったつもりだったんですけど」

「人は常に変わるもんだ」

「なるほど。プラマイがあるってことですね」

「+αの部分、知りたくないか?」

「興味はありますけど・・・・・・減った部分があるとは思えないんですけどね」






















END
(2004.9.20)


敬老の日記念ということで(どんな記念だ)

ラスト部分の会話は無くても良かったんですけど。
ほぼ無理やりお題話にしてしまいました(^^;
会話の中で「+α」ってあまり出てこないですよね・・・。
お題ラストの「光在れ」もどうしようか悩んでおります・・・。