31.「夢を見たんだ」












青島は夜中に目を覚ました。

寝汗を掻いていて、ひどく気持ちが悪い。

それ以上に、気分が悪かった。

嫌な夢を見た。

内容は覚えていない。

ふと、隣を見ると、室井が穏やかな表情で眠っていた。

眉間の皺が消えている。

少しだけ幼くなった寝顔に微笑を浮かべる。

それから、ふと思い出す。

嫌な夢。

室井が出てきた。

夢の始まりは、眠る前の二人。

抱きしめあって。

いっぱいキスして。

じゃれあいながら触れ合って。

交わした甘い睦言。

終わりは一瞬にしてやってくる。

青島に背を向けた室井。

そのままどんどん離れていく。

振り返らない。





室井に置いて行かれる夢。

青島は思わず身震いをした。

「なんで・・・あんな夢」

室井とこうしていられるのに、どうしてあんな夢を見てしまったのだろう。

不安なら、いつもある。

いつまでこうしていられるかなんて分からない。

出来るだけ長く、と考えている自分が時々嫌にもなる。

だけど、一緒にいられるときまで不安になっていてどうするのだ。

「・・・青島?」

寝ていると思っていた室井が身動ぎをしたので、青島は慌てて隣を見た。

「どうした?眠れないのか?」

目を細めた室井が、手を伸ばして青島を抱き寄せてくれる。

抱き寄せられるまま室井に寄り添って、青島は一つ深呼吸をした。

「夢、見たんです」

「夢・・・?どんな?」

下から室井を見上げて、青島はちょっと笑った。

「室井さんが俺を置いてディズニーランドに行っちゃった夢」

青島がそう言うと、室井は目を丸くして青島を見た。

「俺のこと置いてけぼりにして」

酷いですよ、と意味もなく室井を責めてみる。

もちろん、嘘だ。

さっき見た夢の内容は、室井には話せない。

口にしたくもないというのもあるが、不安になっていることを知らせたくはなかった。

室井は青島のそんな想いに気付くことはなく、苦笑を浮かべた。

そして、青島の頭を抱え込む。

「バカだな」

「あ、ひどい。俺だって好きでそんな夢を見たわけじゃ・・・」

半ば本気で思いながら答える。

すると、室井が笑っているのを接触した肌から感じられる。

「違う。そうじゃなくて」

「え?」

「もう少し続きを見てれば良かったんだ」

青島は一瞬ドキッとする。

室井は青島が本当に見た夢の内容を知らない。

なのに、「去っていく室井の背中」を見ていれば良かったのだと言われたようで、悲しくなる。

青島が室井の腕の中で複雑な表情を浮かべた。

「もう少し見ていれば、俺は君を誘っただろうに」

そういわれて、青島は目を丸くした。

頭を抱えられたまま、上目使いで室井を盗み見る。

瞳を閉じた室井は微笑していた。

「俺が君を誘わないわけないだろう」

青島は呆然と室井の顔を見つめた。

それに気付かずに室井は、しばらくして寝息を立て始める。

どうやら、再び眠ってしまったらしい。

青島を抱きこんだまま。




―君を誘わないわけがないだろう。




青島は室井にぎゅっと抱きついた。

もう少し。

後もう少しだけ、あのまま夢を見ていたら。

振り返ってくれたかもしれない。

あれ以上遠ざからないで。

足を止めて。

振り返って。

待っていてくれたかもしれない。

青島を。




「大好きですよ、室井さん」

かすかに震える声で、青島は告げた。




不安はきっとこの先も消えない。

別れるその瞬間まで、きっと消えない。

それでも、室井が立ち止まってくれることを。

振り返ってくれることを。

信じたい。

その瞬間が来るまで。

その瞬間が来たとしても。

最後まで。
























END
(2004.7.19)


珍しく切ない感じのお話が続いてますね。
でも、結局はラブラブですけど(笑)

不安は常にあるだろうなーと思いますが、
一緒にいるときにまで不安になっていたら身が持ちません。
青島君のポジティブシンキングに期待したいです(ナニ)