寝汗を掻いていて、ひどく気持ちが悪い。
それ以上に、気分が悪かった。
嫌な夢を見た。
内容は覚えていない。
ふと、隣を見ると、室井が穏やかな表情で眠っていた。
眉間の皺が消えている。
少しだけ幼くなった寝顔に微笑を浮かべる。
それから、ふと思い出す。
嫌な夢。
室井が出てきた。
夢の始まりは、眠る前の二人。
抱きしめあって。
いっぱいキスして。
じゃれあいながら触れ合って。
交わした甘い睦言。
終わりは一瞬にしてやってくる。
青島に背を向けた室井。
そのままどんどん離れていく。
振り返らない。
室井に置いて行かれる夢。
青島は思わず身震いをした。
「なんで・・・あんな夢」
室井とこうしていられるのに、どうしてあんな夢を見てしまったのだろう。
不安なら、いつもある。
いつまでこうしていられるかなんて分からない。
出来るだけ長く、と考えている自分が時々嫌にもなる。
だけど、一緒にいられるときまで不安になっていてどうするのだ。
「・・・青島?」
寝ていると思っていた室井が身動ぎをしたので、青島は慌てて隣を見た。
「どうした?眠れないのか?」
目を細めた室井が、手を伸ばして青島を抱き寄せてくれる。
抱き寄せられるまま室井に寄り添って、青島は一つ深呼吸をした。
「夢、見たんです」
「夢・・・?どんな?」
下から室井を見上げて、青島はちょっと笑った。
「室井さんが俺を置いてディズニーランドに行っちゃった夢」
青島がそう言うと、室井は目を丸くして青島を見た。
「俺のこと置いてけぼりにして」
酷いですよ、と意味もなく室井を責めてみる。
もちろん、嘘だ。
さっき見た夢の内容は、室井には話せない。
口にしたくもないというのもあるが、不安になっていることを知らせたくはなかった。
室井は青島のそんな想いに気付くことはなく、苦笑を浮かべた。
そして、青島の頭を抱え込む。
「バカだな」
「あ、ひどい。俺だって好きでそんな夢を見たわけじゃ・・・」
半ば本気で思いながら答える。
すると、室井が笑っているのを接触した肌から感じられる。
「違う。そうじゃなくて」
「え?」
「もう少し続きを見てれば良かったんだ」
青島は一瞬ドキッとする。
室井は青島が本当に見た夢の内容を知らない。
なのに、「去っていく室井の背中」を見ていれば良かったのだと言われたようで、悲しくなる。
青島が室井の腕の中で複雑な表情を浮かべた。
「もう少し見ていれば、俺は君を誘っただろうに」
そういわれて、青島は目を丸くした。
頭を抱えられたまま、上目使いで室井を盗み見る。
瞳を閉じた室井は微笑していた。
「俺が君を誘わないわけないだろう」
青島は呆然と室井の顔を見つめた。
それに気付かずに室井は、しばらくして寝息を立て始める。
どうやら、再び眠ってしまったらしい。
青島を抱きこんだまま。
―君を誘わないわけがないだろう。
青島は室井にぎゅっと抱きついた。
もう少し。
後もう少しだけ、あのまま夢を見ていたら。
振り返ってくれたかもしれない。
あれ以上遠ざからないで。
足を止めて。
振り返って。
待っていてくれたかもしれない。
青島を。
「大好きですよ、室井さん」
かすかに震える声で、青島は告げた。
不安はきっとこの先も消えない。
別れるその瞬間まで、きっと消えない。
それでも、室井が立ち止まってくれることを。
振り返ってくれることを。
信じたい。
その瞬間が来るまで。
その瞬間が来たとしても。
最後まで。
END
(2004.7.19)
珍しく切ない感じのお話が続いてますね。
でも、結局はラブラブですけど(笑)
不安は常にあるだろうなーと思いますが、
一緒にいるときにまで不安になっていたら身が持ちません。
青島君のポジティブシンキングに期待したいです(ナニ)