■ だって
ゲホッ。ゴホッ。
青島宅に遊びに来ていた室井は、呆れ顔になる。
「青島」
「あい?」
鼻声の返事が返ってくる。
どうやら風邪をひいてしまったらしい。
が、咳き込んでいる理由は風邪のせいだけではない。
そんな時でも煙草を吸うのを止めないせいだ。
咳き込みながら煙草を吹かしている青島を、室井は呆れたように見つめた。
「風邪の時くらい、煙草を吸うのを止められないのか」
「止められません」
即答である。
「…苦しいだけだろう、自分が」
「吸わない方が苦しいです」
ゲホッっと、また咳き込む。
それでも煙草を吸うのを止めない青島に、室井は溜息を吐いた。
黙って青島に近づくと、徐に青島の手から煙草を奪い取る。
そして、灰皿に押し付けてさっさと消してしまう。
「…横暴です」
恨めしそうな顔で睨まれて、室井も睨みかえす。
「少しくらい我慢しろ」
「出来ません」
「二三日だけだろう」
「無理です」
「無理じゃない」
「だって…」
「だってじゃない」
ぴしゃりと言われて、青島は膨れる。
そんな幼い表情で睨まれたって怖くもなんともない。
むしろ可愛い。
などと思ったことは内緒だ。
室井は青島の手元からアメスピの箱を奪い取る。
「酷い」
顰め面の青島に構わず、室井は空いた手で青島を抱き寄せた。
「!」
後頭部に手を当てて引き寄せる。
ナニをするつもりかは一目瞭然で。
青島は慌てて室井の口元に手を当てた。
「ちょっと、何考えてるんですか」
「…君が今考えてることと同じだと思うが?」
抵抗するくらいだから分かっているはず、と室井は言う。
一瞬きょとんとした青島に、再び睨まれる。
「口寂しいだろう、なんて言ったら殴り倒しますよ」
煙草を奪われた上での恋人の暴挙に怒っているのか、中々バイオレンスな発言をする青島。
室井は肩を竦めた。
「いや。ただ俺がしたかっただけだ」
さらっと言うと、青島は阿呆みたいに口をぽかんと開けた。
それから、傍で見て分かるほど赤面する。
「あんたって人はっ…」
眉間に皺を寄せた青島に構わず、室井はもう一度青島に顔を寄せる。
「だっ、から、ちょっ…」
慌てた青島に再び口をふさがれて、室井の眉間にも皺が寄る。
「そんなに嫌なのか?」
「な、や、そ…、そういうことじゃなくて。風邪、うつるでしょうが」
呆れつつ照れつつ、青島がぼやく。
「平気だ」
「…何を根拠に」
「うつすと早く治ると聞くが?」
「二人一緒に風邪引いたらどうするんですか」
看病できないでしょ。
そう言った青島に、室井は微笑する。
「一緒に寝てればいい」
開き直った室井ほどやっかいな男はいない。
近づいてくる室井の顔を見ながら青島は思った。
END
2004.4.15
あとがき
だってって言う青島君、可愛くないです?
だって、だって。
あまり可愛くなってませんけど(笑)
あの青島君がだってって言うのは凄く可愛いと思います。
室井さん、風邪ひくようなマネ、自分でしないかもしれませんね(^^;
仕事に差し支えがあると困るもの〜。
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