青島はようやっと室井に告げた。
「好きです」
青島が何とか口にした一言で、室井の眉間に深い皺が刻まれる。
覚悟はしていたが、青島はやはりショックを受けた。
心臓をぎゅっと掴まれた様な気がしたが、それでも真っ直ぐ室井を見詰める。
室井と向き合えるのは、これが最後かもしれない。
室井が今まで通りの関係を望んでくれればそうなれるように努力をするし、顔も見たくないと言
われればそれでも仕方がない。
ふられても室井の重荷にはなりたくない。
そう思ったからだ。
室井は眉間に皺を寄せたまま、青島を睨んだ。
「・・・・・・からかうな」
言われて、青島の眉間にも皺が寄る。
「どういう、意味ですか」
「どうもこうもないだろう」
視線を逸らされて、吐き出すように言われる。
青島は唇を噛んだ。
気持ちは受け止めてもらえないかもしれないが、室井なら自分の話をちゃんと聞いてくれると青
島は思っていた。
聞いた上で、答えを出してくれると思った。
聞き流したり、誤魔化したり、ましてや信じてすらくれないなんて、想像もしていなかった。
「俺のこと、信じてはくれないんですか」
今にも泣き出しそうな声。
ふられても絶対に泣いたりしないつもりだったが、それすら守れそうに無い。
青島の声に、室井は視線を青島に戻した。
不機嫌そうだったさっきまでとは違って、困惑した瞳と視線がぶつかる。
「青島・・・」
「ふられるのは、いいです。仕方ないです」
泣くまい、と力を入れたせいで呼吸が震える。
「それだけはどうしようもないです。でも、」
声が震えるを押さえられなかった。
それでも、どうしても、室井に分かってもらいたかった。
これが最後なら。
「俺の気持ちを、無かったことにはしないでください。ちゃんと聞いて」
室井が息を呑む音が聞こえる。
「あお・・・」
「室井さんが聞きたくもないって言うなら、もう二度と言いません。覚えていて欲しいとも言い
ません。」
今だけでいいから、俺を信じて―。
それ以上は、もう声に出せなかった。
出せは泣くと思ったから、その先は飲み込んだ。
青島は室井に頭を下げると踵を返す。
「あ、青島!」
呼び止められても青島は振り返らない。振り返れない。
すぐに腕を引っ張られて、室井の腕の中に引き寄せられる。
青島は硬直した。
どういうつもりだと聞きたかったが、声にならない。
「・・・すまない」
室井の謝罪に、青島は自分の願いがきっと聞き届けられたのだろうと思った。
室井が青島の言葉を信じてくれた。
そして、その答えが室井の謝罪だ。
これが最後だと、青島は悟る。
「いえ・・・。ありがとうございました」
青島がそっと囁いた礼に、室井は首を振る。
「違う、青島。そうじゃなくて」
「・・・・・・?」
「そうじゃなくて・・・」
元から口下手な室井だから、言いたいことがするっと出てこないのだろう。
青島もそれは良く知っているから、大人しく室井が次の言葉を吐きだすのを待つ。
本当は、一時も早くこの腕から逃れたいのに。
この腕は自分の物にはならないのに。
「・・・君が、俺なんかを好きになる理由がないと思っていた」
室井がやっと言ったセリフに、青島は首を傾げる。
「室井さん、言ってることが良く・・・?」
分からない、と呟く青島を室井は少し強く抱きしめた。
「君みたいに人付き合いが上手なわけじゃないし、上手い言葉も吐けない」
「・・・むろいさん?」
「一緒にいたって、君を楽しませられるわけじゃない。おまけに」
「君との約束を、俺は何一つ果たしてない」
重苦しく吐き出された声に、青島は驚いた。
それと同時に憤る。
「何だよ、それ」
「青島」
「確かに、俺はアンタのそういう真っ直ぐなとこを尊敬してるし、そこに惚れてもいるけど」
約束があるからアンタに惚れたわけじゃない。
ましてや、願いを叶えてもらうために一緒にいたいと思ったわけじゃない。
室井さんが約束を果たしていないというのなら、俺も一緒だろう?
一緒に頑張ろうって約束したんじゃないか。
怒ったようにそれだけ言うと、青島はやっと力を抜いた。
少しだけ苦笑する。
「それが理由で俺の言葉を信じて貰えないなんて、心外です」
「青島・・・」
「ちゃんと、ふってください」
「!」
室井には嫌なことを押し付けているようで申し訳ないが、ちゃんとふってもらわないと終われな
いし進めない。
「からかってなんかないから。・・・アンタが好きです」
息を呑んだ室井に、青島は微笑んだ。
室井の両手が青島の頬にかかる。
驚いてる暇も無く、室井の顔が近づいてくる。
唇に柔らかい感触を感じて、青島は目を見開いた。
「・・・む、ろいさん?」
呆然と尋ねると、室井は眉間に深い皺を刻む。
「・・・すまない。言葉にするより、分かってもらえると思った」
青島は中々返事を返せない。
呆けたままの青島に、室井は小さく微笑んだ。
その優しい笑みに、青島の頭が漸く働き出す。
「・・・・・・・・・・・・物凄く、都合よく理解したくなるんですけど」
「間違ってない」
そう言って、室井はもう一度顔を近づけて来る。
青島も今度は反射的に目を閉じた。
先程より、深くて長いキス。
強く抱きしめられて、青島はやっと気付いた。
気持ちが通じたことに。
室井の背中に腕を回して強く抱きしめ返して、室井の肩に顔を埋める。
「・・・ずるいよ、室井さん」
「・・・・・・?」
「ちゃんと、言葉で聞きたい」
耳元で室井が小さく笑う。
「好きだ」
青島はどちらにしろ、泣きそうになるのを堪えなければならなかった。
END
(2004.4.13)
このサイトにはアップしておりませんが、以前室井さんからの告白話は書いたことがあります。
じゃあ、今度は青島君で。と思って、このお話を書きました。
また支離滅裂になってます?(笑)
たまに真面目なお話を書こうとするとこれだから・・・(苦)
修行不足で申し訳ないです。
告白している青島君より、告白されている室井さんの方がヘタレているのが、
当サイトの特徴です(笑)
もう開き直って、この路線で行きます!
・・・・・・・・・・・・誰か、カッコイイ室井さんの書き方教えてください(悩)
追記(4.14)
web拍手にて、室井さんからの告白話を読みたいという有難いお言葉をいただきました。
室井さんの告白話は、このサイトを開く前に他サイト様に投稿させていただいたお話です。
もし興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら、相互リンクさせていただいてるサイト様なので
リンクページより飛んで行って見てくださると嬉しいです。
・・・気が向かれましたら(笑)
※桜石様の「Virtual Brain」様です。