一緒に












青島はそっと揺り起こされ、目を覚ました。

「青島、もう昼過ぎたぞ。そろそろ起きろ」

重い瞼を持ち上げると、すでに普段着に着替えた室井が上から見下ろしていた。

「・・・おはようございます」

「おはよう。・・・という、挨拶も空しい時間だがな」

苦笑されて漸く身体を起す。

「シャワー浴びて来い。昼食の用意しておくから」

「それは・・・・・・どうも、お疲れ様です・・・・・・」

青島は寝ぼけているらしく、妙な受け答えをした。

小さく吹き出した室井に髪をくしゃくしゃとかき回される。

「起きてるか?」

「・・・・・・今、起きました」

自分で寝ぼけていた事が分かったらしく、照れ笑いを浮かべる。

どうやら、今度はちゃんと起きたらしい。

室井がポンと軽く青島の頭を叩いてから寝室を出て行くと、青島もベッドから出てデスクの椅子

に引っ掛けてあったパジャマを羽織ってバスルームに消える。




シャワーを浴びて出てくると良い匂いがして、青島は腹が空いているのを自覚した。

軽く12時間は何も食べていないのだから、当然腹も空くだろう。

青島がキッチンに姿を現すと、室井は椅子に座るように促した。

「あれ?俺の家、うどんなんてありました?」

室井が用意してくれたうどんを眺めながら尋ねると、室井はちらりと青島を見やる。

「昨日、家から持ってきた。君の家に突然来てまともな食べ物があったことなんかないぞ」

「あ、あは。それも、そうっすね〜」

へらっと笑う青島に、室井は軽く溜息を吐いた。

何日も前に約束していれば、普段料理をしない青島だって買い物くらいはする。

夕べは突然室井の都合がついたため、急遽青島の家に泊まりに来る事になったのだ。

当然、冷蔵庫は空っぽに近い。

「君の家は、つまみくらいしかないだろう」

「・・・・・・カレーのルーくらいあると思いますよ」

カレーのルーだけでなにを作れというのか。

青島の返事に室井は頭が痛そうだったが、青島がうどんを食べて嘘でもなんでもなく「美味い」

と笑うと、室井も小さく笑った。

「いつもすいません。ご飯作ってもらっちゃって」

青島だって申し訳なく思うから、室井に教えてもらいながら作ったりはするのだが、どうしたっ

て室井の方が上手いし早い。

そうすると、大抵室井が作ってしまう事になる。

室井は軽く首を横に振る。

「こういうことは出来るほうがやればいいんだ」

そう言われて、青島は一瞬呆けた。

「・・・?なんだ?」

「・・・いや、何か、共働きの夫婦みたいなだな、と」

室井は短く固まってから、眉をぐっと寄せた。

「からかうな」

照れている室井に、青島は思わず笑った。




青島が後片付けをしてからコーヒーを容れてリビングに入ると、床に腰を下ろした室井がDVD

のケースを見ていた。

二人分のマグカップをテーブルの上に置いて、室井の手元を覗き込む。

青島が随分前に購入して、封も切らずに置いてあったDVDだ。

見たくて買ったのだが、中々見る機会が無かった。

「青島、これ見てもいいか?」

「いいっすよ。俺もまだだったし」

室井の手からそれを引き抜くと、封を切ってDVDをセットする。

「映画なんか見るの、久しぶりだな・・・」

室井が小さく呟く。

「俺もっす。映画館でなんて最後に見たのいつかな」

青島も室井の横に腰を下ろして、ソファーに寄りかかった。

映画が始まると二言三言だけ言葉を交わしただけで、後は沈黙。




「・・・おい、青島」

「・・・・・・あい」

「あまり鼻をかむな。鼻の皮が剥けるぞ」

「・・・室井さんこそ、目真っ赤ですよ」

「・・・・・・・・・」

お互いティッシュを鼻の下に当てたまま、ちらりと隣を見やる。

視線を合わせるとなんだか可笑しくて、青島は吹き出した。

つられるように室井も声に出さずに笑う。

「君がこんな映画を買うから」

「あ、室井さんが見るって言ったんですよ」

責任を押し付けあいながら、二人で鼻をすする。

それが可笑しくて、再び吹き出した。




青島はソファーの上でごろごろしていた。

リモコンでチャンネルを替えながらテレビを見ている。

「何か、変わったことありました?」

もうじき夕刊が届きそうな時間だが、今更朝刊を読んでいる室井に声をかけた。

室井は相変わらず床の上である。

「・・・・・・頭の痛くなる事件ばかりだな」

休日だからといって、事件のことを完全に忘れることなど出来ないのだろう。

青島だってそうだ。

溜息を吐く室井の頬を、青島は後ろから掴んで上を向かせる。

ソファーに室井の後頭部が着き、逆さまに青島が見えているはず。

目を丸くしている室井の眉間に、青島は唇を落とした。

「少しはよくなりました?」

にこりと笑われて、室井は苦笑する。

「・・・・・・ああ、ありがとう」

「どういたしまして」

「まだ痛いんだけどな、青島」

目を細める室井に、青島が苦笑する番だ。

「了解」

青島は更に身を乗り出した。




「室井さん、夕飯どうします?」

選択肢は、出前か外食か、買い物に出かけるか。

作ろうにも材料が無いのだ。

「・・・・・・出前でも取るか」

ぼうっとした一日を過ごしたせいか、室井ももう料理をする気にならないらしい。

珍しく出前を取って食べることにする。

「何食べたい?」

「うーん・・・。ラーメン食いたいな」

「昼、うどんだったが?」

「あ、そか。うーん」

「君がいいなら、俺はラーメンで良いが」

「じゃあ、ラーメンで」

「・・・君は、ラーメンが好きだな」

日頃からよくカップラーメンを食べていることを思い出したのだろう。

室井の眉間に皺が寄る。

カップラーメンはもちろん、生ラーメンだって塩分過多で身体に良くない。

そんなことが室井の脳裏を掠めたのだろう。

「やめた」

「はい?」

「何か作ろう。買い物に行ってくる」

「え??あ、ちょっと、だったら俺も行きますよ」

一人で家を出て行こうとする室井の後を慌てて追った。

「室井さん??」

「普段の食生活は、俺にはどうにも出来ないが。一緒にいるときくらい身体に良いもの食わせて

やる」








軽く飲んでご飯を食べて、10時前には室井は腰を上げた。

玄関に見送りに出た青島は、何だか名残惜しくてついそれを声に出していた。

「駅まで送ります」

「いい。君も明日は出番だろ、ゆっくり休め」

「でも・・・」

室井が苦笑する。

「・・・・・・別れがたいのは、ここでも駅でも一緒だ」

言う通りなので、青島も頷いて苦笑した。

室井が同じ気持ちだと言ってくれるだけで、充分だ。

それじゃあ・・・、と出て行きかけて室井が立ち止まる。

振り返って眉間に皺を寄せると、黙って青島を見上げた。

「・・・・・・?室井さん?」

「いつか、一緒に暮らしたいな」

ぼそっと呟いた。

一瞬聞き間違いかと思い、青島は固まる。

それから、意味を理解すると首の後ろを撫ぜて照れ笑いを浮かべた。

「・・・今度は、プロポーズに聞こえますよ」

照れくさいのでちゃかそうとしたのだが、失敗に終わる。

「そのつもりだ」

室井が真顔で返事を寄こすから。





「まいったな・・・」

しゃがみこんだ青島は、室井が出て行ったドアを見つめて呟いた。

困った事に、すごく嬉しい。

実際そんな日が訪れるとは思えない。

それでも。

いつか。

いつか、一緒に暮らせたら。

青島は膝に顔を埋めて、もう一度呟いた。

「まいったな」

































END
(2004.3.20)

特に何もしてない青島君と室井さんが書きたくて書きました。
何もしてませんが、いちゃいちゃしてます。一日中(笑)
二人がこーんな休日を過ごしていたら幸せだなぁと。私が。

二人一緒にだらだらのびのび〜(何)