室井は暗い夜道を青島の自宅に向かって歩いていた。
仕事帰りに寄る約束だったから約束を破っているわけではないが、もう10時に近い。
本当ならもっと早くに行けるはずだったのだが、残業で遅くなってしまったのだ。
一応遅くなる旨は伝えてあるが、それでもできる限り早足で青島の自宅に向かう。
申し訳ないという思いが半分と、会いたいという思いが半分。
人通りの少ない道に入ると、前方に人影が見えた。
室井は軽く目を見張る。
はっきりとは見えないが、佇んでいる男が室井には青島に見えた。
空を見上げている横顔はやはり暗くてはっきりと見えないが、シルエットは青島に良く似ている。
近付くにつれて青島だと判断すると、室井は小走りで駆け寄った。
「青島?迎えに来てくれたのか?」
声をかけると、少し遅れて青島の視線が空から室井に移る。
「・・・え?」
戸惑った視線に、室井も戸惑う。
―青島じゃない。
近付いてちゃんと顔を見たら、はっきりと分かった。
良く似ているが、別人だ。
室井は慌てて、小さく頭を下げた。
「す、すまない。知人に良く似ていたから」
反応が返ってこないからちらりと顔を上げると、男はぼんやりとした視線を室井に向けていた。
やがて、
「あ〜〜〜」
と空気の抜けたような声を出して、ふにゃあと微笑んだ。
「良くありますよねぇ、そういうことって」
そうそうあることだろうかと思いつつも、室井は頷いてもう一度謝罪した。
「あ・・・ああ、すまない」
「気にしないでください〜」
またふにゃあと微笑まれて、思わず力が抜ける。
こうして見ると、青島とは全然違う。
容貌はやはり似ているが、雰囲気が全く違った。
青島より柔らかいが、青島より覇気がない。
テンポが丸っきり違うと言えた。
―何か・・・変わった男だな・・・。
青島に似た青年が全く気にした様子を見せないので、室井は一礼するとその横を通り過ぎた。
室井が通り過ぎる瞬間に慌てたように礼を返してくれる。
そのまま行きかけて、室井は足を止めた。
振り返ると、男はまた空を見上げていた。
「・・・・・・・・・どうかしたのか?」
余計なお世話と知りつつ、思わず声をかけてしまう。
青島と似ているせいか、何となく気になる雰囲気の男だからか。
男はまたちょっと遅れて、室井を振り返った。
「あ〜〜〜」
また気の抜けた声を出した。
癖なのかもしれないが、相手をしているこちらまで気が抜けそうだと室井は思った。
「ん」
男が空を指差す。
「・・・?」
訝しげにしながら、室井も空を見上げた。
珍しく、キレイに星が見えた。
「星、見てたのか?」
「ええ、キレイでしょ」
「そうだな」
素直に頷くと、男は嬉しそうに笑った。
何がそんなに嬉しいのか室井には分からなかったが、つられて少しだけ相好を崩す。
「・・・車に轢かれるなよ」
何となく忠告すると、目を丸くした青年が苦笑しながら手を振ってきた。
それに軽く手を挙げて挨拶をすると、室井は今度こそその場を立ち去った。
―世界には似た人間が三人いるって言うしな。
青島と似た人間の一人に会ったのだろうかと、室井は思った。
「そんなに似てたんですか?」
青島の部屋で一緒に酒を飲みながら、室井はさっき会った青年の話をした。
「ああ・・・良く見ると雰囲気は全然違うんだが、パッと見た感じは良く似ていたな」
「え〜〜〜、俺も会って見たかったなぁ」
羨ましそうに言いながら缶ビールを煽る青島を、何となく眺める。
こう見ると、やっぱり印象が随分違う。
視線に気が付いたのか、青島が室井を見つめ返してくる。
「な、何ですか」
眼差しが全然違う。
青島ほどの視線の強さは、あの男に無かった。
その分柔らかい印象は強かったが―。
―俺には、やっぱり。
ふっと室井が微笑むと、青島は落ち着かないようで視線を泳がせた。
「・・・室井さん?」
手を伸ばして抱き寄せると、青島は慌ててビールの缶を高く持ち上げた。
「あ、危ないですって・・・」
「今度は本物の青島だな」
言って、軽く頬に唇を押し付けると、青島は吹き出した。
「当たり前でしょ・・・・・・あ」
クスクス笑っていた青島は、悪戯っぽい視線を室井に向けた。
「もしかして、俺と間違ってこんなことしたんじゃないでしょうね」
本気じゃないのは、笑った目が教えてくれる。
室井は青島の手から缶ビールを奪って床に置くと、遠慮せずに抱きしめた。
今度は慌てず、青島も室井に身体を預けてくれる。
「いくら俺でも、こんなに近づかなくたって、君じゃないことくらい分かる」
「ならいいっすけどね〜」
青島が耳元で笑うから、吐息が掛かった。
それだけで室井の身体が熱くなる。
片手で頬を撫ぜながら軽く唇を合わせると、青島の両手が室井の首に回る。
そのまま床に押し倒した。
額に、瞼に、頬に唇を押し付けると、青島は擽ったそうに身を捩った。
「ン・・・ね、室井さん」
「・・・ん?」
「どこが・・・俺と、似てたんですか・・・?」
言われて、顔だけ持ち上げるとちょっと考える。
容貌だけで言えば、どこと言わず全体的に似ていた。
あの男の方が青島よりちょっとふっくらしていただろうか。
髪も少し長かった。
視線を落とすと、じっと見つめる青島と目が合う。
―やっぱり、一番違うのは目だな。
目の形が違うとかではなく、力強さが全然違う。
不思議そうに見上げてくる青島の大きな瞳を見て思う。
「やっぱりあんまり似てないかもしれないな」
そう呟くと、青島は苦笑した。
「何ですか、それは」
「俺にとって、君は、君だけだってことだ」
我ながらクサイ台詞だった。
言った後から、背中がムズムズしてくる気がする。
目を剥いた青島が何かを言う前に、その唇を塞いでしまった。
END
(2005.7.11)
早速書いてしまった・・・(笑)
名前すら出てきませんでしたが、ロケットボーイの小林君です(^^;
次の話では名前もちゃんと出る予定です。
・・・ちょっとはそれっぽく見えていると良いのですが。
暴走した萌えだけで書いております。
ええ、もう、いつもの通り!(力いっぱい言うことか)
室井さんはどんなに青島君と似てても、青島君本人が一番いいらしいです(笑)
どれぐらいの長さになるかさっぱりです;
4話で終われたらいいなぁと思うのですが、どうだろう・・・。
少々お付き合い頂けると嬉しいです!
※追記(2005.7.15)
連載にしようと思って書いていたのですが、ここまでの短編ということにしました。
続きを楽しみにしてくださっている方がいらっしゃいましたら、大変申し訳ありませんでした!
早くも小林君萌えが消えたわけではありません(笑)
私は青島君至上主義なんですが、小林君もオダさんなわけで・・・・・・
何というか、書いてるうちにどっちつかずなお話になりそうな気がしたもので(^^;
中途半端なことをしてしまい、申し訳ありませんでした。
書き出したら最後までと心がけていたのですが、どうしてもこれ以上書けないと思ったので
丁度良くお話が切れているここで終わりということにしたいと思います。
小林君は本当に出てきただけで終わってしまいましたが・・・(笑)
小林君が書きたくなったら、小林受けを書くことにしたいと思います(・・・)