床に座りパソコンのディスプレイを覗いていた室井の背後で、青島は横になり雑誌を読んでいた。
青島の手元にはアメスピの代わりに、飴の袋。
なんと禁煙中なのだ。
無駄な努力を・・・と思ったのは室井だけじゃなく、やってる青島だって思っているはず。
「青島」
「はい?」
「イラつくのは分かるが、飴を噛むな。また虫歯になるぞ」
「分かってはいるんですけどね。つい」
雑誌から顔を上げた青島がぼやく。
噛み砕いた飴をさらに細かく砕きながらの返事では、説得力の欠片も無い。
「・・・そんなに辛いなら止めたらどうだ?禁煙」
室井だって青島が煙草を止められるなら止めてもらいたいが、あれだけヘビースモーカーな青島
がいきなり煙草を止めるのは至難の業だ。
青島に根性がないとは室井も思っていないが、こと禁煙に関しては信頼が薄い。
ムキになる性格が功を奏して、というか災いしてというか。
それだけで今回の禁煙が3日ももっていると言える。
禁煙すると宣言し、すみれに3日ともたないと宣告されて、意地だけでこの3日間続けたのだから。
案の定、今だって。
「室井さん」
「ん?」
「俺が禁煙できないと思ってるでしょ」
上目遣いに睨まれて、室井は視線を逸らした。
「そんなことはない」
「こっち見て、言ってくださいよ」
「・・・・・・・・・ない」
首を機械的に動かして、青島を見下ろす。
嘘のつけない室井の分かりやすい答えに、青島は憮然とした。
「見ててくださいよ!絶対続けてみせますから」
一週間は!
志が高いのか低いのか分からない宣言に室井は苦笑した。
・・・いや、低いのだろう。
文句を言った青島自身、それほど続けられるとは思っていないのだ。
今すぐ止めてしまいたいのを、根性で一日でも長く続けたいと思っているだけだ。
室井は再びパソコンに向かう。
室井としては、どっちみち続けるつもりのない禁煙なら今すぐ止めてもらいたかった。
青島の機嫌が悪いからだ。
八つ当たりされているとまでは思わないが、覇気のない青島は青島らしくなくて落ち着かない。
それに折角一緒にいるのだから、少しでも楽しく過ごしたいと思うのは室井の我侭ではないはずだ。
無駄に一週間も禁煙するより減煙する努力でもしたらどうだと言ってやりたいが、そんなことを言
えば膨れられることは間違いない。
一日に二箱は吸うのだから、それの半分にするだけでかなり違うはず。
それなら是非ともやってもらいたいが、ムキになってしまっている今説得しても言うことは聞いて
はくれまい。
どうしたものかな・・・と思っていると、後ろから再びガリガリという音が聞こえてくる。
室井が溜息を吐いて、ちらりと青島を見る。
すると、それを待っていたのか、室井を見上げている青島と目が合って室井は驚いた。
目が合うと寝返りを打って、うつ伏せだった体を仰向けに変える。
「どうかしたか?」
じっと室井を見上げていた青島が、何も言わずに手だけでおいでおいでをする。
室井は首を傾げつつも、大人しく青島の方に顔を寄せた。
やっぱり無言で手を伸ばしてくる青島。
その手は室井の後頭部にかかり、そのまま引き寄せられる。
体勢を崩した室井は、慌てて片肘を青島の顔の脇について体を支える。
室井を引き寄せながら、青島も首を持ち上げて唇を重ねてきた。
触れ合うだけのそれではなくて、深く求められる。
室井はちょっと驚きつつも、逆らわない。
青島の好きにさせる。
求められるままにそれに応えた。
しばらくして満足したのか、青島が唇を離す。
赤くなった目元と濡れた唇が妙に色っぽくて、室井は名残惜しげに少しだけ体を離した。
「どうかしたのか?」
もう一度尋ねると、青島が苦笑した。
「口寂しかった、とか言ったらベタですか?」
室井が目を丸くする。
それから、苦笑した。
「ベタかもしれないな・・・けど、俺は大歓迎だが?」
「それは、良かった」
青島が微笑して、室井の首に回した腕に力を込めた。
もう一度仕掛けてこようとしているのに気付いて、今度は室井が先手を打つ。
首を伸ばし、青島の唇を塞ぐ。
先程よりも深いキス。
室井の手が青島のシャツに掛かったのに気付いて、青島は慌ててその手を掴んだ。
「む、むろいさん」
「悪いが止められないぞ」
「寂しかったのは口だけなんてすけどー、・・・なんて今更聞いてくれないっすよね?」
青島も本気で抵抗するつもりはないのだろう。
諦めたように苦笑して、室井の背中を抱き締めてくる。
同意に安心した室井が、青島の唇を軽く吸う。
そして、室井も苦笑した。
「それにしても、煙草の味がしないというのも新鮮だな」
「あ、そっか。・・・甘かったです?」
「ああ」
「どっちの方が好みですか?」
甘い方が良かったら、キスする前には飴を舐めることにします。
冗談を言いながらクスクス笑う青島。
室井は微笑を浮かべた。
「どっちでも構わない。君ならな」
そう応えてやると、青島は室井の肩に顔を押し付けた。
「・・・・・・また、そういうことをさらっと言う」
照れているらしい。
室井は苦笑して、青島の耳元に口付けた。
本当は、煙草の匂いがないと少しさびしい。
それだけ青島とのキスに慣れてしまったということなのだろが、室井は口にはしなかった。
その後
END
(2004.7.7)
無駄にラブラブ(笑)
私の書く話はそんなのバッカリですけどね。
こんなお話ばかりお目にかけてしまって、
そのうち皆様を糖尿病にしてしまうのではないかと不安な今日この頃・・・。
この時点でいつまでと決まっているわけではないでしょうが、
確実に後、数日しかもたない禁煙。
そんなわけで、あんなタイトルにしてみました。