■ GOOD DAY
小さく揺り起こされて、青島は目を覚ました。
目を開いても暗い視界は、まだ夜中であることを示していた。
「青島」
寝ぼけていて一瞬訳が分からなかったが、背後から名前を呼ばれて納得した。
振り返ると、ベッド脇に立った室井が青島を見下ろしていた。
正確に顔が見えたわけではないが、声を聞いてシルエットを見れば青島が間違うはずがない。
「起こしてすまない、少し詰めてもらえるか」
室井が寝るスペースを作ってくれと言われているのだと察し、青島は身体をずらした。
空いた隙間にひんやりとした冷気と共に室井が滑り込んでくる。
そのまま抱き寄せられるから、青島も室井の背中に腕を回した。
「誕生日おめでとう」
耳に室井の声が届き、青島はやんわりと笑った。
「ありがとうございます」
「結局間に合わなかったが」
青島がベッドに入った時には既に日が変わっていた。
今夜行けたら行くと室井から聞いていたので一応待ってはいたのだが、14日になっても室井から連絡がなかったから、もう来ないだろうと諦めていた。
仕事が忙しいと聞いていたから、あまり期待はしていなかった。
少しはガッカリしたが、誕生日にこだわる年齢でもない。
近いうちに会えたらいいなとは思っていたが、まさかこんな夜中に来てくれるとは思わなかった。
「仕事、終わったんですか?」
「ああ、遅くなってしまったが、片付いた」
「無理しなくても良かったのに」
「誕生日くらい会いに来たかったんだ」
「そりゃあ、俺も嬉しいけどね」
「…間に合わなかったけどな」
しつこく悔やむ室井に、青島は思わず声を漏らして笑ってしまった。
室井の顔にそっと指を這わせ、唇の位置を確かめて自身のそれを重ねる。
軽く触れて、悪戯っぽく笑った。
「大事なのは時間じゃないよ、室井さん。そうでしょ?」
大事なことは誕生日に会うことではなく、祝う気持ちそのもののはずだった。
「ああ、そうだな…」
室井の手が後頭部に回され、口付けが返ってくる。
「おめでとう、青島」
言葉と一緒にキスが深くなり、青島を抱き締める腕が強くなる。
キスも抱擁も、室井の想いをそのまま現してくれているようだった。
無理だろうと諦めてはいたし仕方がないと割り切ったつもりでいたが、こうして会いに来てもらえるとやっぱり会いたかったのだと実感した。
たかが誕生日だと思うが、されど誕生日だったようだ。
いくつになってもこの日は特別なものらしい。
青島は満たされる思いで、室井にしがみつき目を閉じた。
このまま眠ったら気持ちいいだろうなと思ったが、青島は閉じた瞼をすぐに開いた。
身体に感じる違和感に、笑いが浮かぶ。
「室井さん」
「言うな」
ぶっきら棒に答えた室井自身も気付いているらしい。
自分の身体のことだ、当たり前か。
「でも」
「生理現象だ」
「そうでしょうけど」
「そのうち落ち着く」
頑なな室井に青島は声もなく笑うと、室井のそこに手を滑らせた。
下着の上から触れると、室井がびくりと反応した。
「青島…」
咎めるだけで拒むほどの強さのない、困ったような声を漏らす唇に一つキスをして、青島は手を動かした。
「変なスイッチ入っちゃう時ありますよね」
キスしながら愛撫すると、室井は抵抗するのを止めた。
「すまない…こんな夜中に来ておいて」
渋い声音を聞く限り、自身に呆れているようだった。
それでも青島を拒まないのは、欲が勝ったからだろう。
青島の身体に反応する室井の身体を愛しく思う。
「気にしないでいいですよ」
俺もスイッチ入っちゃったしと青島が囁くと、室井の手も青島に伸びた。
パジャマの中に侵入してくる手に吐息を漏らしながら、青島は室井の下着をずらし直接触れた。
青島自身、室井につられたように高ぶり始めていた。
互いに手を動かしながら、時々唇を合わせる。
「ん、久しぶりですね、こういうの」
「ああ、そうだな」
「あんま、保たないかも」
「俺もだ…青島」
「ん?」
「あまり強くしないでくれ…」
「先にいってもいいですよ」
「…ばか」
照れたように呟き深く口付けてくる室井が可愛くて愛しい。
早くいかせたいが、二人とも終わったら確実に速効で眠ってしまうだろうと思われた。
夜中だからそれで当然だが、それならもう少しこうしていたいという気持ちにもなる。
室井も同じ気持ちなのか、彼の愛撫も緩やかだった。
「やっぱり室井さんがいいなあ」
「何がだ?」
「自分の手よりいいな、と」
「…煽るな、寝かせてやれなくなる」
室井の唇が青島の首筋や耳元に軽く吸いついてくるから、くすぐったさに青島は笑った。
「はは…っ、途中で寝ちゃうかも…」
触れる手も掛る吐息も気持ちいい。
気持ちいいが、少し物足りなくなって、ついつい腰が揺れる。
室井が空いた手で青島の頭を撫ぜ、キスをくれた。
「足りないみたいだな」
「いや、そんなことは…ん、ちょっと、待って…」
「もっとか?」
「うあ…っ」
強くなった愛撫に上ずった声が漏れる。
青島は小さく呻きながらも、お返しとばかりに手を激しく動かした。
室井が息を詰め、微かな声を漏らすのが堪らない。
こうなれば、ゆっくりといちゃいちゃする余裕などあるわけがなかった。
解放を目指すのみだ。
青島は室井と唇を合わせたまま、室井を追い上げた。
室井からも同じだけ返ってくる。
キスの合間に室井が囁いた。
「やっぱり会いに来て良かった」
吐息を乱しながら青島は笑った。
「室井さんのスケベ」
別に気持ちがいいという理由だけで室井がそう言ったとは思っていない。
ただからかっただけだったが、室井からの返事はなかった。
それでも、青島には室井の眉間のシワが見えた気がした。
不機嫌そうな顔で青島をいかせようと愛撫している室井を想像したら勝手に笑みが浮かんだが、笑っている余裕ももうなかった。
室井の指が、青島のいいところを強く擦る。
堪えるように息を止めた青島の耳に、室井の声が聞こえた。
「好きだ」
青島が我慢できたのはほんの一瞬で、すぐに腰を震わせ室井の手を濡らした。
ほとんど無意識に手を動かし、室井も導く。
低く呻く室井の声と、掌に熱い滑りを感じると、青島は身体の力を抜いた。
動くのも億劫で弛緩したままぼんやりしている唇に、室井の唇が重なる。
触れるだけの優しいキスは欲を煽ることもなく、青島を落ち着かせた。
快感の波がゆっくりと去り、吐息が落ち着いてくると、遠ざかっていたはずの眠気が急速に戻ってくる。
予想通り過ぎて笑えるが、笑う間も無かった。
「室井さん…」
怪しい呂律で名前を呼ぶと、室井の笑う声がした。
「このまま寝ていいぞ」
室井の手が頭を撫ぜてくれるから、青島は逆らわずに目を閉じた。
室井が後始末をしてくれている気配を感じるが、もう目が開かない。
されるがままというのも気恥かしいが、この際だから甘えておこうと身を任せた。
後始末を終えたらしい室井が横になり、青島を再び抱き寄せてくれる。
「室井さん…」
名前を呼ぶと、唇に温もりが返ってきた。
「ありがとう…会いに来てくれて…」
なんとかそれだけ伝えると、青島は意識を手放した。
とっくにその日は過ぎていたが、今年は良い誕生日だったなと思いながら。
その後、少しの間、室井が青島を抱えたまま眠らずにいたことを、青島は知らない。
END
2012.12.10
あとがき
少々早いですが、当日更新できるか分からないので、余裕のあるうちに!
青島君、お誕生日おめでとうー!!!
というわけで、珍しく微エロです(笑)
注意書きするまでもない程度ですけどね。
お誕生日のお祝いに、何故かそんな感じのお話ができあがりました。
煩悩まみれで、青島君に申し訳ない…
何はともあれ!心からおめでとうです!
44歳の青島君に会えてとても嬉しかったです。
青島君愛してる!(祝ってない)
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